すでに日本にいる外国人エンジニアを採る──在留資格の引き継ぎ、就労資格証明書、転職手続きの実務【2026年版】
制度・法律
半導体の設計チームを1名増やすことになり、海外採用の検討が始まる。現地の人材会社に依頼し、候補者を集め、オンライン面接を回し、内定を出す。ここから在留資格認定証明書の交付申請、査証申請、渡航、住居手配と続く。着任は早くて4ヶ月後、条件が悪ければ半年後になる。プロジェクトの立ち上げには間に合わない。
その一方で、日本国内には「技術・人文知識・国際業務」の在留資格を持つ外国人が47万人以上いる。出入国在留管理庁の統計では、令和7年末現在の在留外国人数は412万5,395人で、前年末から35万6,418人(9.5%)増え、初めて400万人を超えた。在留資格別では技術・人文知識・国際業務が475,790人(前年末比57,084人増)で、永住者に次ぐ規模になっている。
この母集団は、海外から呼び寄せる母集団とは手続きの重さがまったく違う。在留資格をそのまま引き継げる場合、企業側の手続きは届出だけで済み、着任までのリードタイムは月単位で短縮される。この記事では、すでに日本にいる外国人エンジニアを採る場合に、どの在留資格なら手続きが軽いのか、何を確認し、何を届け出るのかを整理します。
この記事の要点
令和7年末の在留外国人は412万5,395人。うち技術・人文知識・国際業務は475,790人で、母集団は国内に存在する。
技人国は、転職先の業務が同じ在留資格の範囲に収まるなら、在留資格を変更せずに移れる。企業側の手続きは届出が中心になる。
所属機関等に関する届出は、本人が14日以内に行う。企業側が代わりに行うものではない。
就労資格証明書は任意の制度で、提示しないことを理由に不利益な取扱いをすることは入管法第19条の2第2項で禁じられている。
高度専門職1号は指定書で勤務先が特定されるため、転職には在留資格変更許可申請が必要になる。ここだけ扱いが違う。
母集団は海外ではなく、すでに日本国内にある
海外エンジニアの採用は、国内在住者から検討するほうが速く、安い。着任までのリードタイムと手続きコストが、新規の呼び寄せとは一桁違うためである。
出入国在留管理庁が公表した令和7年末現在の統計から、規模感を確認しておく。
区分 | 人数 | 前年末比 |
|---|---|---|
在留外国人総数 | 412万5,395人 | +35万6,418人(9.5%増) |
永住者 | 947,125人 | +29,009人 |
技術・人文知識・国際業務 | 475,790人 | +57,084人 |
留学 | 464,784人 | +62,650人 |
技能実習 | 456,618人 | +23人 |
特定技能 | 390,296人 | +105,830人 |
国籍・地域別では、中国930,428人、ベトナム681,100人、韓国407,341人、フィリピン356,579人、ネパール300,992人、インドネシア266,069人と続く。技術系の職種を担える層がどの国籍にどれだけいるかは統計から直接は読めないが、母集団そのものは十分に大きい。
在留資格の全体像は外国人エンジニア雇用に関するビザ・法律の基礎知識で扱っている。本記事はその中でも、すでに在留している人を採る場合に絞る。
最初に分けるのは「転職できる在留資格」かどうか
在留資格は、就労の可否と、転職の自由度で3つに分かれる。ここを混同すると、採れない人に内定を出すことになる。
区分 | 該当する在留資格 | 転職の自由度 |
|---|---|---|
身分・地位に基づくもの | 永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者 | 職種の制限がなく、届出も不要 |
就労資格(活動に基づくもの) | 技術・人文知識・国際業務、技能、企業内転勤など | 同じ在留資格の範囲内なら移れる |
勤務先が特定されるもの | 高度専門職1号、特定技能、育成就労(2027年4月〜) | 転職に許可申請等が必要 |
エンジニア採用でもっとも多いのは真ん中の層である。技人国を持っている人が、別の会社の技術職に移る場合、在留資格そのものは変わらない。
いちばん自由度が高いのは、いちばん上の身分系の在留資格である。永住者や定住者は、就労内容にも勤務先にも制限がなく、日本人と同じ条件で採用できる。求人票に「在留資格不問」と書けない場合でも、この層は選考の入口を広げられる。
技人国の転職は、業務が同じ範囲なら在留資格の変更が要らない
技人国の在留資格を持つ人が転職する場合、転職先の業務が同じ在留資格で認められる範囲に収まっていれば、在留資格の変更許可を受ける必要はない。半導体の回路設計から別の会社の回路設計へ、あるいは設計から装置エンジニアリングへ移るような場合は、いずれも自然科学の分野に属する技術を要する業務であり、範囲内に収まる。
企業側と本人が行う手続きは次のとおりである。
誰が | 何を | いつまでに |
|---|---|---|
本人 | 所属機関等に関する届出(前職の離職・新しい勤務先) | 事由が生じてから14日以内 |
企業 | 外国人雇用状況の届出(ハローワーク) | 雇入れ時・離職時 |
企業 | 在留カードによる就労可否の確認 | 内定前 |
本人(任意) | 就労資格証明書の交付申請 | 入社後でも可 |
ここで押さえておくべきなのは、所属機関等に関する届出は本人が行うものだという点である。企業が代行するものではないため、入社手続きの案内に含めて、期限を伝える運用にしておく。届出を怠ると、本人の次回の更新審査で不利に働く可能性がある。
なお、在留期間の残りは前職から引き継がれる。残り3ヶ月の状態で入社すれば、入社直後に更新申請が来る。内定を出す前に、在留カードの有効期限を確認しておく。
就労資格証明書は任意だが、取っておく意味がある
就労資格証明書は、その外国人が行うことができる就労活動を出入国在留管理庁長官が証明する文書である。転職後の業務が現在の在留資格の範囲に収まっているかを、企業と本人の双方が事前に確認できる。
制度の要点は次のとおりである。
論点 | 内容 |
|---|---|
根拠 | 入管法第19条の2 |
申請 | 本人の希望による任意の申請 |
手数料 | 窓口2,000円、オンライン1,600円 |
標準処理期間 | 当日(勤務先を変えた場合などは1か月〜3か月) |
企業側の利点 | 雇用しようとする外国人がどのような就労活動を行えるか容易に確認できる |
重要なのは、入管法第19条の2第2項が「何人も、外国人を雇用する等に際し、当該外国人が前項の文書を提示し又は提出しないことを理由として、不利益な取扱いをしてはならない」と定めている点である。つまり、就労資格証明書の提出を内定の条件にすることはできない。
実務では、内定・入社を先に進め、入社後に本人が申請するのが一般的である。勤務先を変えた場合の標準処理期間は1か月から3か月とされているため、入社前に取得を待つ設計にすると、着任が遅れる。
高度専門職1号は例外──転職には変更許可が要る
高度専門職1号は、指定書に勤務先の企業名が明記される在留資格であり、転職する場合は在留資格変更許可申請が必要になる。技人国のように届出だけでは完了しない。
論点 | 技術・人文知識・国際業務 | 高度専門職1号ロ |
|---|---|---|
勤務先の特定 | 特定されない | 指定書で特定される |
転職時の手続き | 所属機関等に関する届出 | 在留資格変更許可申請 |
着任までの見込み | 届出のみで入社可能 | 許可が下りるまで待つ設計が必要 |
転職後の要件 | なし | 引き続き70点以上の維持 |
高度専門職の人材を中途で採る場合は、変更許可申請の期間を入社日の設計に織り込む。ポイント計算と優遇措置の全体像は高度専門職ビザは半導体エンジニア採用にどう効くかで扱っている。
なお、転職後も70点以上を維持する必要がある。提示する年収や職務内容によっては点数が下がり、在留資格の見直しが必要になることがある。オファーを組む段階で確認しておくべき論点である。
在留カードで何を確認するか
在留カードの確認は、内定前に行う。入社直前に確認して条件が合わないと分かると、採用そのものがやり直しになる。
確認項目 | 見るところ | 判断 |
|---|---|---|
在留資格 | おもて面 | 就労可能な資格か、身分系か |
在留期間(満了日) | おもて面 | 残りが短ければ更新の時期を織り込む |
就労制限の有無 | おもて面 | 「就労制限なし」「在留資格に基づく就労活動のみ可」等 |
資格外活動許可 | うら面 | 留学生等の場合に確認 |
変更・更新の申請中の記載 | うら面 | 審査中かどうか |
留学からの新卒採用の場合は、在留資格を「留学」から技人国へ変更する許可申請が必要になる。この場合は届出では済まず、審査を経ることになるため、卒業と入社の間にスケジュールを取る。
2026年10月、在留許可手数料が改定される
在留資格の変更許可と在留期間の更新許可の手数料が、2026年10月1日から許可される在留期間の区分に応じた額に改定される。出入国在留管理庁が公表しているリーフレット(2026年9月発行)によると、内容は次のとおりである。
許可期間 | 窓口 | オンライン |
|---|---|---|
3月以下 | 10,000円 | 10,000円 |
3月超6月以下 | 18,000円 | 15,000円 |
6月超1年未満 | 25,000円 | 21,000円 |
1年 | 33,000円 | 27,000円 |
1年超3年未満 | 48,000円 | 42,000円 |
3年以上5年未満 | 64,000円 | 56,000円 |
5年以上 | 75,000円 | 65,000円 |
改定前は在留資格変更許可・在留期間更新許可がいずれも窓口6,000円、オンライン5,500円だった。永住許可は窓口10,000円から200,000円になる。
実務上とくに重要なのは適用の基準である。2026年9月30日までに受付した申請については、許可が10月1日以降になっても改定前の手数料が適用される。更新時期が近い在籍者がいる場合は、受付日を9月中に寄せられるかどうかを確認しておく価値がある。
また、オンライン申請のほうが窓口より安い設計になっている。在留申請オンラインシステムを使えるようにしておくこと自体が、継続的なコスト差になる。
国内在住者を採ると、何がどれだけ速くなるか
国内在住者の採用は、在留資格の手続きが届出で済む場合、内定から着任までを大きく短縮できる。差が出るのは手続きだけではない。
論点 | 海外からの呼び寄せ | 国内在住者 |
|---|---|---|
在留資格 | 在留資格認定証明書の交付申請、査証申請 | 届出(技人国で範囲内の場合) |
着任まで | 数ヶ月単位 | 現職の退職手続きに従う |
渡航・初期費用 | 航空券、初期の住居費など | 原則として発生しない |
日本語 | 来日前の学習状況に依存する | 日本での就労・生活の実績がある |
選考 | オンライン中心 | 対面での面接が可能 |
費用の全体像は半導体エンジニアの採用コストはいくらかで手法別に比較している。国内在住者は初期費用が乗らないぶん、総額が読みやすい。
一方で、国内在住者は他社との競合が起きやすい。すでに日本で働いている以上、比較対象は「いまの職場」であり、条件が明確に上回らなければ動かない。海外採用のように「日本で働けること」自体が訴求にならない点は、条件提示の設計で織り込む必要がある。
選考と条件提示で注意する点
国内在住者の選考では、日本語の水準を実測できる。オンラインの海外面接と違い、対面で業務に近い会話ができるため、求人票の要件が過剰かどうかもここで検証できる。
日本語要件をどう設定するかは外国人エンジニアに日本語はどこまで必要かで職種別に整理している。国内在住者の場合、日本での就労経験があるぶん、同じJLPTの級でも実務での通用度が高いことが多い。級だけで足切りすると、母集団を不必要に削ることになる。
条件提示では、次の3点を確認しておく。
第一に、在留期間の残り。残りが短ければ、更新のタイミングと2026年10月の手数料改定が入社直後に重なる。第二に、現在の在留資格が高度専門職1号かどうか。この場合は変更許可申請の期間を入社日に織り込む。第三に、家族の在留状況。配偶者や子が家族滞在で在留している場合、本人の在留資格が変わると家族側の手続きも連動する。
受け入れ後の定着設計はインド人エンジニアの受け入れ準備、何から始める?で扱っている。国内在住者は生活基盤の立ち上げが不要なぶん、業務と人間関係の設計に時間を使える。
よくある質問
Q. 技人国の人を採る場合、企業側は入管に何か申請しますか
在留資格の範囲内の転職であれば、企業側から入管へ行う申請はありません。本人が所属機関等に関する届出を14日以内に行います。企業側はハローワークへの外国人雇用状況の届出を行い、内定前に在留カードで就労の可否と在留期間を確認します。なお、業務内容が現在の在留資格の範囲を超える場合は、本人が在留資格変更許可申請を行う必要があるため、職務内容の確認を先に済ませてください。
Q. 就労資格証明書は入社前に取ってもらうべきですか
入社の条件にすることはできません。入管法第19条の2第2項は、就労資格証明書を提示または提出しないことを理由として不利益な取扱いをしてはならないと定めています。実務では、内定と入社を先に進め、入社後に本人が申請する流れが一般的です。勤務先を変えた場合の標準処理期間は1か月から3か月とされているため、取得を待って入社日を決めると着任が遅れます。
Q. 在留期間の残りが短い候補者は避けるべきですか
避ける必要はありませんが、入社直後に更新申請が来ることを前提に段取りを組んでください。更新の審査では、直近の勤務実態と納税・社会保険の状況が見られます。入社直後の更新であれば、雇用契約書と会社の資料で疎明することになります。加えて2026年10月1日から更新の手数料が許可される在留期間の区分に応じた額に改定されるため、9月30日までに受付できるかどうかで金額が変わります。
Q. 永住者や定住者の候補者は、技人国の人と何が違いますか
就労内容と勤務先に制限がない点が違います。身分・地位に基づく在留資格であるため、職種の制約を受けず、所属機関等に関する届出も必要ありません。採用手続きは日本人とほぼ同じになります。求人の要件に在留資格を書く場合は、この層を排除しない書き方にしておくと母集団が広がります。
Q. 留学生を新卒で採る場合はどうなりますか
在留資格を「留学」から技術・人文知識・国際業務などへ変更する許可申請が必要です。届出では済まず、審査を経ることになります。卒業と入社の間に手続きの期間を取る必要があるため、内定の段階で申請時期を決めておいてください。なお、この変更許可の手数料も2026年10月1日から在留期間の区分に応じた額へ改定されます。
Q. 高度専門職の人を採るときは何が変わりますか
在留資格変更許可申請が必要になります。高度専門職1号は指定書に勤務先が明記されるため、届出だけでは転職が完了しません。許可が下りるまでの期間を入社日の設計に織り込んでください。加えて、転職後も引き続き70点以上を維持する必要があるため、提示する年収と職務内容によっては点数が不足し、他の在留資格への変更が必要になることがあります。
Q. 国内在住者は日本語ができると考えてよいですか
在留期間の長さと日本語の水準は一致しません。英語で回る職場に長くいた人は、生活の日本語はできても業務の日本語が伸びていない場合があります。逆にJLPTを受けていないだけで、実務では十分に通じる人もいます。対面で面接できる利点を使い、実際の業務に近い会話で確認してください。資格の級だけで足切りすると、母集団を不必要に削ることになります。
Q. すでに日本にいる人を探すルートは何がありますか
自社の求人媒体、リファラル、人材紹介、派遣の4つが基本です。国内在住の外国人エンジニアは日本語の求人媒体を見ていないことがあるため、媒体だけに頼ると母集団に届きません。すでに日本で働いている層は在職中の転職になるため、選考の日程を平日夜や休日に組めるかどうかも、実務上は歩留まりに影響します。
まとめ
令和7年末の在留外国人は412万5,395人で初めて400万人を超えた。技術・人文知識・国際業務だけで475,790人おり、母集団は国内にある。
在留資格は、身分系・就労資格・勤務先が特定されるものの3つに分けて考える。転職の自由度がまったく違う。
技人国は、転職先の業務が同じ在留資格の範囲に収まるなら変更許可が要らない。本人が14日以内に所属機関等に関する届出を行う。
就労資格証明書は任意の制度で、提示しないことを理由とする不利益な取扱いは入管法第19条の2第2項で禁じられている。入社の条件にはできない。
高度専門職1号だけは扱いが違う。指定書で勤務先が特定されるため、転職には在留資格変更許可申請が必要で、転職後も70点の維持が求められる。
在留資格変更・更新の手数料は2026年10月1日から在留期間の区分に応じた額に改定される。9月30日までに受付した申請は改定前の額が適用される。
淡路グローバルゲートウェイ(AGG)では、すでに日本国内にいる外国人エンジニアのご紹介と派遣を行っています。在留資格の確認から、届出・変更申請のスケジュール設計、受け入れ後の定着支援までを一貫してご支援していますので、無料相談フォームからお気軽にお問い合わせください。
監修者
Naoya Mitani /淡路グローバルゲートウェイ(AGG) 事業統括責任者
インドITエンジニアの可能性に着目し、AGGのIT人財部を設立しました。事業統括責任者として、エンジニア派遣事業の戦略立案と実行を担っています。


