「建設業に派遣は使えない」は本当か──派遣禁止の範囲と、施工管理・設計・BIMを派遣で受け入れる線引き【2026年版】
制度・法律
「建設業は派遣が禁止されている」。この一文は業界でほぼ常識として通っていますが、そのまま受け取ると採用の選択肢をひとつ丸ごと失うことになります。
労働者派遣法が禁止しているのは「建設業」ではなく「建設業務」です。主語が業種ではなく業務であるところが、この規定の要点です。同じ会社の同じ現場に関わる仕事でも、業務の中身によって派遣で受け入れられるものと受け入れられないものが分かれます。そして施工管理は、厚生労働省の業務取扱要領のうえで、派遣の対象になる側に明記されています。
人手が足りないのは現場だけではありません。施工管理、設計、CAD・BIM、積算といった技術職の不足は、工事を受注できるかどうかに直結します。この記事では、派遣が禁止される業務の範囲を条文と行政の解釈から確定させ、職種ごとの可否を整理し、現場作業を外部から確保する合法な代替手段までを、受け入れる企業側の順序で説明します。
この記事の要点
労働者派遣法第4条が禁止しているのは「建設業務」であり、建設会社が派遣を一切使えないという意味ではない
工程管理・品質管理・安全管理を行う施工管理業務は、業務取扱要領で「建設業務に該当せず労働者派遣の対象となる」と明記されている
ただし工事現場ごとに置く専任の主任技術者・監理技術者は、直接的かつ恒常的な雇用関係が求められるため派遣では配置できない
設計・CAD/BIM・積算・現場事務は事務所内の技術業務として派遣で受け入れられる
現場作業そのものを外部から確保するなら、請負、建設業務労働者就業機会確保事業、特定技能・育成就労のいずれかを選ぶことになる
禁止されているのは「建設業」ではなく「建設業務」
条文が対象にしているのは業種ではなく作業の中身です。ここを取り違えると、使える手段まで自分で塞いでしまいます。
労働者派遣法第4条第1項は、次のように定めています。
何人も、次の各号のいずれかに該当する業務について、労働者派遣事業を行つてはならない。(中略)二 建設業務(土木、建築その他工作物の建設、改造、保存、修理、変更、破壊若しくは解体の作業又はこれらの作業の準備の作業に係る業務をいう。)
括弧の中がすべてです。「建設、改造、保存、修理、変更、破壊若しくは解体の作業」と、その準備の作業。つまり体を動かして構造物に手を加える行為が禁止の対象であり、建設業許可を持つ会社が行うすべての業務ではありません。
この点は、建設業を営む会社であっても総務・経理・営業を派遣で受け入れられることを考えれば直感的に理解できます。問題は、その境界が現場に近づくほど曖昧に見えることです。
施工管理は派遣の対象になる
工程管理・品質管理・安全管理を行う施工管理業務は、行政の解釈上、建設業務に該当しません。
厚生労働省の労働者派遣事業関係業務取扱要領は、施工管理業務について次のように整理しています。
土木建築等の工事についての施工計画を作成し、それに基づいて、工事の工程管理(スケジュール、施工順序、施工手段等の管理)、品質管理(強度、材料、構造等が設計図書どおりとなっているかの管理)、安全管理(従業員の災害防止、公害防止等)等工事の施工の管理を行ういわゆる施工管理業務は、建設業務に該当せず労働者派遣の対象となるもの
「対象とならない」ではなく「対象となる」と書かれています。曖昧な記述ではありません。実際、施工管理に特化した人材派遣会社が多数存在し、事業として成立しているのはこの解釈に基づいています。
ただし注意点があります。派遣された施工管理者が、人手が足りないからと型枠を組んだり資材を運んだりすれば、その時間は建設業務への従事になります。契約書の業務内容が管理業務であっても、実態が作業であれば違法と評価されます。判断されるのは肩書ではなく実際の従事内容です。
施工管理でも派遣できない例外がある
専任の主任技術者・監理技術者は、派遣では配置できません。これは派遣法ではなく建設業法の側からくる制約です。
業務取扱要領は続けてこう述べています。
請負業者が工事現場ごとに設置しなければならない専任の主任技術者及び監理技術者については、適切な資格、技術力等を有する者(工事現場に常駐して専らその職務に従事する者で、請負業者と直接的かつ恒常的な雇用関係にあるものに限る。)を配置することとされていることから、労働者派遣の対象とはならないもの
鍵は「直接的かつ恒常的な雇用関係」です。派遣は雇用主と指揮命令者が分かれる働き方なので、この条件を構造的に満たせません。
したがって、同じ「施工管理をする人」でも次のように分かれます。
立場 | 派遣で受け入れられるか | 理由 |
|---|---|---|
工程・品質・安全の管理を担当する施工管理者 | 可 | 建設業務に該当しない |
現場代理人 | 実務上は避けるのが無難 | 発注者との契約上、請負者の代理人としての性格が強い |
専任が必要な工事の主任技術者 | 不可 | 直接的かつ恒常的な雇用関係が必要 |
専任が必要な工事の監理技術者 | 不可 | 同上 |
営業所の専任技術者 | 不可 | 営業所に常勤していることが許可要件 |
派遣で施工管理者を補充する場合は、その人を有資格者としての配置要件に充てないという前提で計画を立ててください。技術者の頭数を満たすための手段としては使えません。
職種別・派遣可否の早見表
図面と数字とマネジメントの仕事は派遣で受け入れられ、構造物に手を加える作業は受け入れられない。この一線で整理できます。
職種・業務 | 派遣 | 補足 |
|---|---|---|
施工管理(工程・品質・原価・安全) | 可 | 主任技術者等の配置には充てられない |
建築設計・構造設計・設備設計 | 可 | 事務所内の技術業務 |
CAD オペレーター・BIM モデリング | 可 | 需要が最も伸びている領域 |
積算・見積 | 可 | ー |
測量の計画立案・データ解析 | 可 | 現場での測量作業は準備作業に当たり得るため要確認 |
CGパース・可視化 | 可 | ー |
現場事務所の事務職 | 可 | 事務職であることをもって当然に対象外になるわけではなく、実態で判断 |
型枠・鉄筋・とび・内装・塗装等 | 不可 | 建設業務そのもの |
資材の荷揚げ、仮設材の設置・撤去 | 不可 | 準備の作業に該当 |
現場の片付け・清掃 | 不可 | 準備の作業に該当し得る |
現場事務職について、業務取扱要領は「建設現場の事務職員が行う業務は、これによって法律上当然に適用除外業務に該当するということにはならない」としています。裏返せば、事務職の名目でも実態が作業であれば禁止対象になるということです。
なぜ建設業務だけが禁止されているのか
重層下請構造のもとで雇用責任と安全責任が曖昧になることを避けるためです。
建設業では、労働者派遣法の制定以前から重層下請が一般化しており、誰が使用者として安全衛生や労働条件に責任を負うのかが不明確になりやすい構造がありました。そこに派遣という雇用主と指揮命令者が分離する形態を持ち込むと、責任の所在がさらに見えにくくなります。建設業務が港湾運送業務・警備業務・医療関係業務と並んで適用除外とされているのは、この安全確保の要請によるものです。
この趣旨を理解しておくと、境界の判断に迷ったときの基準が持てます。労働災害のリスクを直接負う立場に立つ業務かどうか。それが実質的な分かれ目です。
違反した場合に何が起きるか
派遣元と派遣先の双方が処罰の対象になります。名目上の契約形態では免れません。
禁止業務への労働者派遣を行った派遣元は、1年以下の懲役または100万円以下の罰金の対象になります。派遣先も、禁止業務であることを知りながら役務の提供を受けた場合は同様に罰則の対象です。さらに、労働局による是正指導や企業名の公表という行政上の措置もあります。
実務上さらに重いのは、いわゆる偽装請負と判断された場合です。請負契約の形をとりながら発注者が作業員に直接指揮命令していると、労働者派遣に当たると評価され、建設業務であれば禁止業務への派遣になります。契約書の表題ではなく、朝礼で誰が指示を出しているか、作業の順序を誰が決めているかといった運用実態で判断されます。
現場作業を外部から確保する合法な選択肢
現場作業そのものが必要なら、派遣以外の3つの経路で考えます。
1. 請負(施工体制に組み込む)
最も一般的な方法です。ただし、発注者側が作業員へ直接指示を出さないこと、資材・機材の調達や工程の決定を請負側が行うことが前提になります。ここが崩れると偽装請負になります。
2. 建設業務労働者就業機会確保事業
建設労働者の雇用の改善等に関する法律に基づく、建設業だけに認められた仕組みです。事業主団体を通じて厚生労働大臣の許可を受けた送出事業主が、常用雇用している建設労働者を他の構成事業主のもとで就業させることができます。仕事量の繁閑を業界内で融通する趣旨の制度で、送出人数は常用労働者の5割以下、送出期間は当該労働者の所定労働日数の5割以下という上限が設けられています。恒常的な人手不足を埋める手段としては設計されていない点に注意してください。
3. 特定技能・育成就労で直接雇用する
外国人材を現場作業に従事させる場合はこの経路になります。建設分野の特定技能は直接雇用が原則で、派遣は認められていません。手順と費用は特定技能「建設」の受け入れ、何から手をつけるかに、2027年4月に始まる育成就労との関係は育成就労で建設の受け入れはどう変わるかにまとめています。
外国人技術者を派遣で受け入れるときの追加チェック
日本人の派遣受け入れに加えて、在留資格の該当性を確認する必要があります。
施工管理・設計・BIMを担う外国人技術者は「技術・人文知識・国際業務」(技人国)で在留しているのが通常です。技人国は派遣という就労形態を否定していませんが、派遣先での実際の業務が在留資格の範囲に収まっていることが求められます。派遣先で現場作業に従事させれば、派遣法違反と資格外活動の両方に触れることになります。
確認すべきは次の3点です。
確認項目 | 内容 |
|---|---|
在留資格と業務の一致 | 派遣先での職務内容が技人国の範囲内か。派遣元・派遣先の双方で確認する |
就労資格証明書 | 転職を伴う場合、業務内容が在留資格に該当することを事前に確認できる |
報酬の水準 | 日本人が従事する場合と同等額以上であることが在留資格の要件 |
2026年4月15日の技人国の運用改正で加わった言語要件については、建設技術者を「技人国」で受け入れる実務で整理しています。
自社の職務を仕分ける手順
派遣を検討する前に、対象ポジションの業務を分解してください。
そのポジションが1日にやっていることを、時間の使い方で書き出す
構造物に直接手を加える作業、その準備作業が含まれているかを確認する
含まれている場合、その部分を切り離せるかを検討する。切り離せなければ派遣は使えない
主任技術者・監理技術者・営業所専任技術者としての配置を予定していないか確認する
残った業務で職務記述書を作り、派遣契約の業務内容欄に落とす
受け入れ後、実態が記述どおりかを定期的に確認する
3で切り離せない場合でも、諦める必要はありません。管理・設計側を派遣で補強して社内の人員を現場に回す、という組み替えが成立することが多いためです。
よくある質問
Q. 施工管理を派遣で受け入れるのは、グレーではないのですか?
グレーではありません。厚生労働省の労働者派遣事業関係業務取扱要領に、施工管理業務は建設業務に該当せず労働者派遣の対象となる旨が明記されています。グレーになるのは、契約上は施工管理としながら実態として現場作業に従事させている場合です。
Q. 派遣の施工管理者を主任技術者にできますか?
できません。専任の主任技術者・監理技術者は、請負業者と直接的かつ恒常的な雇用関係にある者に限って配置することとされているためです。派遣で人数を補いつつ、有資格者の配置は自社の直接雇用者で満たす設計にしてください。
Q. CADオペレーターやBIMモデラーは派遣で問題ありませんか?
問題ありません。事務所内で図面・モデルを作成する業務は建設業務に当たらないため、一般的な労働者派遣として受け入れられます。BIM人材の確保についてはBIM導入、今から始めても遅くない?もあわせてご覧ください。
Q. 測量はどう扱われますか?
計画の立案やデータの解析は技術業務として派遣の対象になりますが、現場での測量作業は工事の準備作業に該当し得ます。杭打ちや墨出しを伴う場合は特に慎重に判断し、迷う場合は所轄の労働局に確認してください。
Q. 常用型(無期雇用)の派遣なら建設業務でも使えますか?
使えません。建設業務の適用除外は、派遣元での雇用形態に関係なく適用されます。無期雇用派遣であっても建設業務への派遣はできません。
Q. 出向であれば現場作業に従事させられますか?
在籍出向は労働者派遣に該当しないため建設業務の禁止は及びませんが、業として繰り返し行えば労働者供給事業と評価されるおそれがあります。出向が認められるのは、経営指導、技術指導、雇用機会の確保、企業グループ内の人事交流といった目的がある場合に限られます。人手不足を埋めるための反復的な出向は避けてください。
Q. 外国人技術者を派遣で受け入れる場合、派遣先に何か届出は必要ですか?
派遣先としての届出は特にありません。ただし、派遣先での業務内容が在留資格の範囲に収まっていることの確認責任は実質的に派遣先にもあります。職務記述書を派遣元と共有し、現場での指示内容が記述からずれないよう管理してください。
まとめ
労働者派遣法が禁止しているのは「建設業」ではなく「建設業務」であり、構造物に手を加える作業とその準備作業が対象になる
工程管理・品質管理・安全管理を行う施工管理業務は、業務取扱要領で明確に派遣の対象とされている
専任の主任技術者・監理技術者・営業所専任技術者は、直接的かつ恒常的な雇用関係が必要なため派遣では配置できない
設計・CAD/BIM・積算・CGパースは事務所内の技術業務として派遣で受け入れられる
現場作業そのものを外部から確保するなら、請負・建設業務労働者就業機会確保事業・特定技能/育成就労のいずれかを選ぶ
判断されるのは契約書の表題ではなく実際の従事内容。受け入れ後の運用まで含めて設計する
淡路グローバルゲートウェイ(AGG)では、インドの提携大学の土木・建築・電気系学科を母集団として、施工管理・設計・CAD/BIMの技術者を派遣・ご紹介しています。「この職種は派遣で受け入れられるのか」「在留資格の範囲に収まるのか」という切り分けからご相談いただけますので、無料相談フォームからお気軽にお問い合わせください。
監修者
Naoya Mitani /淡路グローバルゲートウェイ(AGG) 事業統括責任者
インドITエンジニアの可能性に着目し、AGGのIT人財部を設立しました。事業統括責任者として、エンジニア派遣事業の戦略立案と実行を担っています。


