特定技能「建設」の受け入れ、何から手をつけるか──3区分・JAC・受入計画認定の実務【2026年版】
制度・法律
「特定技能で外国人を採ろう」と決めてから、実際に現場へ入るまでに何ヶ月かかるか。建設業でこの質問に即答できる会社は多くありません。理由は単純で、建設分野の特定技能だけが、他の15分野には存在しない追加の関門を4つ持っているからです。
在留資格の申請の前に、国土交通省から「建設特定技能受入計画」の認定を取る必要があります。JACへの加入が必須です。企業も本人もCCUSに登録しなければなりません。そして賃金は月給制でなければ認められません。この4つを知らずに求人だけ先に出すと、内定は出したのに受け入れられない、という事態になります。
この記事では、特定技能「建設」の3つの業務区分と、建設分野だけに課される追加要件、受け入れまでの手順と期間、費用の全体像、そして2027年4月の育成就労制度で何が変わるかを、受け入れる企業側の意思決定に必要な順序で整理します。
この記事の要点
建設分野の業務区分は2022年に19区分から「土木」「建築」「ライフライン・設備」の3区分へ統合され、実質的に建設業のほぼ全工種が対象になった
建設分野だけに、受入計画の認定・JAC加入・CCUS登録・月給制という4つの追加要件がある
在留資格の申請より前に国土交通省の受入計画認定が必要で、ここが全体の律速段階になる
受け入れ人数は常勤職員数を超えられない。少人数の会社ほど先に上限を確認しておく
建設分野の特定技能は派遣では受け入れられない。直接雇用のみ
特定技能「建設」はどの制度に位置づくのか
特定技能は、人手不足が深刻な分野で即戦力の外国人材を受け入れるための在留資格で、建設はその対象分野の1つです。技能実習が「育成・技能移転」を建前とする制度だったのに対し、特定技能は最初から労働力の確保を目的として設計されています。
建設分野には1号と2号があります。
区分 | 在留期間 | 家族帯同 | 更新 | 位置づけ |
|---|---|---|---|---|
特定技能1号 | 通算5年が上限 | 不可 | 更新あり(通算5年まで) | 指導者の指示・監督の下で作業に従事 |
特定技能2号 | 上限なし | 配偶者・子は可 | 更新に回数制限なし | 班長・職長として複数人を指導し工程管理を行う |
2号に上限がないことの意味は大きく、実質的に長期の戦力として抱えられる唯一の道になります。ただし2号へ進むには、建設分野特定技能2号評価試験(またはこれに代わる技能検定1級・単一等級)の合格に加えて、班長・職長としての実務経験が必要です。必要な期間は職種により0.5〜3年と幅があります。
建設業の人手不足の構造そのものについては建設業の人手不足、いま打てる対策は?で整理しています。この記事はその一段下、「では特定技能で実際に受け入れるには何をするのか」を扱います。
3つの業務区分と、自社の工事がどこに入るか
建設分野の業務区分は、2022年の再編で従来の19区分から3区分に統合されました。この統合により、それまで対象外だった塗装や防水などの工種も含め、建設業のほぼ全域が受け入れ可能になっています。
業務区分 | 従事できる作業 | 該当する工種の例 |
|---|---|---|
土木 | 土木施設の新設・改築・維持・修繕に係る作業 | 型枠施工、コンクリート圧送、とび、建設機械施工、土工、鉄筋施工 など |
建築 | 建築物の新築・増築・改築・移転・修繕・模様替に係る作業 | 大工、左官、内装仕上げ、屋根ふき、建築板金、鉄筋施工、とび など |
ライフライン・設備 | 電気通信、ガス、水道、電気その他のライフライン・設備の整備・設置・変更・修理 | 電気工事、配管、空調・冷凍機器施工、電気通信 など |
再編の実務上の意味は2つあります。1つは、対象工種を理由に諦める必要がなくなったこと。もう1つは、区分が広がったぶん同じ区分の中であれば関連作業に幅広く従事させられるようになったことです。現場の実態に合わせやすくなりました。
試験も再編に合わせて、各専門工事業団体ごとの実施から、建設技能人材機構(JAC)が3区分ごとに実施する方式へ変わっています。
設備工事の会社であれば「ライフライン・設備」が該当します。空調・配管・電気を横断して手掛けている会社は、この1区分で足りるケースがほとんどです。
建設分野だけに課される4つの追加要件
ここが他分野と決定的に違う部分です。特定技能の共通要件に加えて、建設分野には次の4つが上乗せされます。
1. 建設特定技能受入計画の認定(国土交通省)
在留資格の申請より前に、国土交通省から受入計画の認定を受ける必要があります。この認定がないと在留資格の申請が通りません。全体スケジュールの律速段階はほぼ常にここです。
2. JAC(建設技能人材機構)への加入
受入企業はJACに加入しなければなりません。加入ルートは2つあります。JACの正会員である建設業者団体に入って間接的に加入するか、JACに賛助会員として直接加入するかです。直接加入の場合、年会費は24万円(入会金なし)とされています。
3. CCUS(建設キャリアアップシステム)への登録
受入企業と外国人本人の双方が、CCUSに登録している必要があります。就業履歴と保有資格を蓄積する仕組みで、建設業では2023年度以降、標準的な実務として定着しています。
4. 月給制での支払い
日給や時給での支払いは認められません。雨天で現場が動かない日があっても、月額の賃金を保証する必要があります。これは制度上の要件であると同時に、定着率に直結する部分でもあります。
加えて、報酬額は同等の技能を持つ日本人と同等以上であることが求められます。安く雇うための制度ではありません。
受け入れまでの手順と、どこで時間がかかるか
順序を間違えると手戻りが出ます。実務上の並びは次のとおりです。
順序 | やること | 主な担当 | つまずきやすい点 |
|---|---|---|---|
1 | 受け入れ体制の確認(常勤職員数・建設業許可・社会保険) | 企業 | 人数上限に先に当たることがある |
2 | JAC加入(団体経由か賛助会員か決める) | 企業 | どちらのルートが安いかは所属団体の有無で変わる |
3 | CCUS事業者登録 | 企業 | 未登録なら先に済ませる。技能者登録は本人分も必要 |
4 | 候補者の特定と雇用条件の確定 | 企業・支援機関 | 月給制での提示になっているか |
5 | 建設特定技能受入計画の申請・認定 | 企業 | ここが最も時間を要する。審査手数料がかかる |
6 | 在留資格認定証明書の交付申請(海外から呼ぶ場合) | 企業・行政書士 | 5の認定書が添付書類になる |
7 | 査証申請・入国・CCUS技能者登録・就業開始 | 企業・本人 | 入国後の手続きが残る |
在留資格の手続きそのものの考え方は外国人エンジニア雇用に関するビザ・法律の基礎知識と共通です。建設分野で違うのは、その前段に5の認定が挟まる点だけです。
国内にいる技能実習修了者から切り替える場合は6と7が短縮されます。海外から新規に呼ぶ場合は、候補者選定から就業開始まで半年前後を見ておくのが安全です。
費用の全体像をどう見積もるか
費用は「制度で決まっているもの」と「事業者によって変わるもの」に分けて見ると整理できます。
費目 | 性質 | 目安 |
|---|---|---|
JAC受入負担金 | 制度で決まっている | 1号特定技能外国人1人あたり月額12,500円(2024年7月分から一律) |
JAC賛助会員 年会費 | 制度で決まっている | 24万円(直接加入の場合。団体経由なら当該団体の会費) |
受入計画の審査手数料 | 制度で決まっている | 申請時に必要 |
CCUS登録料 | 制度で決まっている | 事業者登録・技能者登録それぞれに必要 |
支援業務の委託費 | 事業者によって変わる | 登録支援機関に委託する場合に発生 |
紹介・送出しに関する費用 | 事業者によって変わる | 国内転職か海外からの新規かで大きく変わる |
住居・渡航・生活立ち上げ | 事業者によって変わる | 海外から呼ぶ場合に発生 |
重要な注意点が1つあります。JACの受入負担金を、直接にも間接にも外国人本人に負担させることはできません。給与から差し引く、あるいは本人の実費負担にするといった処理は認められません。
受け入れ人数の上限と、派遣が使えないこと
建設分野には、他分野にない2つの制約があります。
受け入れ人数の上限
特定技能1号の受け入れ人数は、その企業の常勤職員数を超えられません。常勤10名の会社なら特定技能1号は10名までです。急拡大を前提とした計画は立てられないため、事業計画の側を先に調整する必要があります。
派遣では受け入れられない
特定技能で派遣形態が認められているのは農業と漁業だけです。建設は直接雇用に限られます。したがって「まず派遣で試して、良ければ直接雇用へ」という段階的な導入ができません。
この制約は実務上そこそこ効きます。技術者クラスを派遣で確保したい場合は、特定技能ではなく「技術・人文知識・国際業務」での受け入れが選択肢になります。施工管理やCAD・BIMのように学歴要件と業務内容が噛み合うポジションであれば、こちらのほうが早く動けるケースがあります。採用手法ごとの違いは外国人エンジニア採用の3つの方法とコスト・リスクを比較で整理しています。
人材の入口は3つある
どこから採るかで、期間もコストも難易度も変わります。
入口 | 期間の目安 | 特徴 |
|---|---|---|
技能実習からの移行 | 短い | 日本語も現場慣れも済んでいる。最も立ち上がりが早い |
国内在住者の転職 | 短い | 即戦力。ただし母集団が薄く、条件競争になりやすい |
海外からの新規受け入れ | 半年前後 | 母集団は最も大きい。試験合格と日本語能力の確認が必要 |
技能実習からの移行が最も現実的な入口です。技能実習2号を良好に修了していれば、同じ業務区分であれば技能評価試験と日本語試験が免除されます。自社で技能実習生を受け入れてきた会社は、まずここを棚卸しするのが早道です。
海外から新規に呼ぶ場合は、建設分野特定技能1号評価試験と日本語試験(JLPT N4以上または国際交流基金日本語基礎テスト)の合格が必要になります。
2027年4月の育成就労で何が変わるか
技能実習制度は廃止され、2027年4月1日から育成就労制度に置き換わります。建設業への影響は他業種より大きくなります。
論点 | 技能実習 | 育成就労 |
|---|---|---|
制度の目的 | 技能移転による国際貢献 | 人材の育成と確保 |
育成期間 | 最長5年(1号〜3号) | 原則3年で特定技能1号の水準まで育てる |
本人意向の転籍 | 原則不可 | 一定の要件のもとで可能 |
特定技能への接続 | 移行できる | 移行を前提とした制度設計 |
実務上、押さえておくべき点は3つです。
1つ目は、施行前に認定された技能実習計画は期間満了まで有効であること。既にいる実習生の在留資格が自動的に育成就労へ切り替わるわけではありません。
2つ目は、育成就労が最初から特定技能1号への接続を前提に設計されていること。つまり、育成就労で受け入れた人材を特定技能へつなぎ、さらに2号まで進めるという長期の道筋が、制度として明示されます。
3つ目は、本人意向の転籍が一定要件で認められること。受け入れ側から見れば、賃金・住環境・キャリアの見通しで選ばれなければ人が残らない構造になります。実質的に、国内の他社との競争が始まります。
よくある質問
Q. 建設業許可がないと特定技能で受け入れられませんか?
建設業許可を持っていることが受入計画認定の要件になります。500万円未満の軽微な工事のみを請け負う会社は許可が不要ですが、その場合は特定技能の受け入れができません。まず許可の有無を確認するのが最初の1歩です。
Q. 受け入れまでどのくらいの期間を見ておけばよいですか?
海外から新規に呼ぶ場合、候補者の特定から就業開始まで半年前後が目安です。国土交通省の受入計画認定と在留資格認定証明書の交付申請が直列で並ぶため、ここが期間を決めます。国内在住の技能実習修了者から切り替える場合は、これより大幅に短くなります。
Q. 特定技能の外国人を派遣で受け入れることはできますか?
建設分野ではできません。特定技能で派遣が認められているのは農業と漁業だけで、建設は直接雇用に限られます。派遣での確保を検討する場合は、施工管理やCAD・BIMなど「技術・人文知識・国際業務」に該当する職種で設計し直す必要があります。
Q. 何人まで受け入れられますか?
特定技能1号の人数は、受け入れ企業の常勤職員数を超えられません。常勤5名の会社なら5名が上限です。事業計画の段階でこの上限に当たっていないかを先に確認してください。
Q. 日給制のままではだめですか?
だめです。建設分野では月給制での支払いが要件になっており、日給・時給での支払いは認められません。天候により現場が止まった日を含めて、月額の賃金を保証する設計にする必要があります。この点は既存の日本人技能者の賃金体系との整合も含めて検討することになります。
Q. JACの受入負担金は本人の給与から引いてよいですか?
引けません。受入負担金を直接にも間接にも外国人本人に負担させることは認められていません。会社側の固定費として見積もっておく必要があります。
Q. 技能実習生を特定技能に切り替えるとき、試験は必要ですか?
技能実習2号を良好に修了していて、かつ業務区分が対応していれば、技能評価試験と日本語試験は免除されます。自社で受け入れてきた実習生がいる場合、ここが最も低コストで確実な入口になります。
Q. 2027年の育成就労が始まるまで待ったほうがよいですか?
待つ理由は乏しいと考えられます。施行前に認定された技能実習計画は期間満了まで有効であり、特定技能の受け入れそのものは制度改正後も続きます。むしろ、本人意向の転籍が認められることで国内の他社との人材競争が始まるため、受け入れの型を先に作っておいたほうが有利になります。
まとめ
特定技能「建設」は、制度そのものより「建設分野だけの上乗せ要件」を先に押さえるかどうかで、立ち上がりの速度が変わります。
業務区分は土木・建築・ライフライン・設備の3つ。建設業のほぼ全工種が対象になっている
追加要件は4つ。受入計画の認定・JAC加入・CCUS登録・月給制
在留資格の申請より前に国土交通省の受入計画認定が必要で、ここが全体の律速段階
受け入れ人数は常勤職員数が上限。派遣は不可で直接雇用のみ
最も早い入口は技能実習修了者からの移行。試験免除が効く
2027年4月の育成就労で転籍が認められ、国内での人材競争が始まる
制度が複雑に見えるのは、要件が多いからではなく、順序が決まっているからです。順序どおりに並べれば、必要な作業は数えられる数に収まります。
淡路グローバルゲートウェイ(AGG)では、登録支援機関として特定技能の受け入れ支援を行うほか、施工管理・CAD・BIMなど技術者ポジションについては「技術・人文知識・国際業務」での紹介・派遣もご支援しています。「自社の工種でそもそも受け入れられるのか」というご相談だけでも構いません。無料相談フォームからお気軽にお問い合わせください。
監修者
Naoya Mitani /淡路グローバルゲートウェイ(AGG) 事業統括責任者
インドITエンジニアの可能性に着目し、AGGのIT人財部を設立しました。事業統括責任者として、エンジニア派遣事業の戦略立案と実行を担っています。


