建設技術者を「技人国」で受け入れる実務──2026年4月改正の言語要件と、特定技能・育成就労との線引き【2026年版】
制度・法律
建設業で外国人技術者を採用するとき、最初に決めるのは在留資格です。施工管理、設計、CAD・BIM、積算といった職種で選ばれるのは、特定技能でも育成就労でもなく「技術・人文知識・国際業務」(以下、技人国)です。人数の上限も、分野別の協議会も、技能試験もありません。そのかわり、業務の中身と本人の学歴・職歴の関連性が厳しく見られます。
そして2026年4月15日、この在留資格の運用が変わりました。出入国在留管理庁のガイドライン「『技術・人文知識・国際業務』の在留資格の明確化等について」(平成20年3月策定、最終改定令和8年4月)が改定され、言語能力を用いる対人業務についてCEFR・B2相当の言語能力が前提であることが明示されました。カテゴリー3・4に該当する企業では、申請時にその資料の提出が求められます。
この改正について「技人国はJLPT N2が必須になった」という理解が広がっていますが、正確ではありません。適用されるのは業務の一部であり、B2相当と認められる方法もN2だけではありません。この記事では、改正の対象になるのはどの業務か、B2相当として何が認められるか、自社がどのカテゴリーに当たるか、そして特定技能・育成就労との使い分けまでを、受け入れる企業側の順序で整理します。
この記事の要点
技人国は施工管理・設計・CAD/BIM・積算など、学術上の素養を背景とする業務のための在留資格。人数枠も技能試験もない
2026年4月15日以降の申請では、主に言語能力を用いる対人業務に従事する場合、CEFR・B2相当の言語能力を有していることが前提とされる
資料の提出が申請時に必要なのはカテゴリー3・4。カテゴリー1・2でも審査の過程で求められる可能性がある
日本語のB2相当はJLPT N2以上のほか、BJT400点以上、日本の大学卒業など5通りの認められ方がある
現場作業が業務の中心になる設計は在留資格に該当しないと判断される。ここは改正前から変わっていない
技人国で受け入れられる建設の職種
図面・数字・管理の仕事は受け入れられ、体を使う作業は該当しません。この線引きは改正の前後で変わっていません。
ガイドラインは、技人国に該当する活動について「学術上の素養を背景とする一定水準以上の専門的能力を必要とする活動でなければならない」と明記しています。さらに、求人の際の採用基準に「未経験可、すぐに慣れます。」と記載のあるような業務内容や、学歴・実務経験の要件を満たしていない日本人従業員が一般的に従事している業務内容は対象にならない、とも書かれています。
職種 | 技人国での受け入れ | 補足 |
|---|---|---|
施工管理(工程・品質・原価・安全の管理) | 可 | 技術的な管理業務として組み立てる |
構造設計・設備設計 | 可 | 専攻科目との関連性が説明できること |
CAD・BIMモデリング | 可 | 設計・製図の技術業務として位置づける |
積算・見積 | 可 | ー |
測量の計画・解析 | 可 | ー |
海外案件の技術折衝・翻訳を伴う調整 | 可 | 「国際業務」として別の要件がかかる |
型枠・鉄筋・とび・内装等の現場作業 | 不可 | 特定技能・育成就労の領域 |
資材の運搬、清掃、片付け | 不可 | ー |
BIM人材をどう確保するかについてはBIM導入、今から始めても遅くない?で別途整理しています。
2026年4月15日の改正で何が変わったか
新しい要件が足されたというより、これまで審査の中で見られていた考え方が文書に明記された、というのが実態に近い改正です。
ガイドラインの改定にあわせて、別紙4「翻訳・通訳業務等の言語能力を用いる対人業務に従事する場合の在留資格の明確化について」が加わりました。要旨は次の2点です。
主に言語能力を用いる対人業務等に従事する場合は、申請人がCEFR・B2相当の言語能力を有していることを前提とし、当該言語能力を有していない場合は「一定水準以上の業務」に従事するものとは認められない
所属機関がカテゴリー3または4に該当する場合は、申請時に当該言語能力を有することを証する資料を提出する。カテゴリー1または2に該当する場合であっても、審査の過程で資料の提出を求められる可能性がある
あわせて、提出書類に「所属機関の代表者に関する申告書」が加わりました。様式は出入国在留管理庁の在留資格「技術・人文知識・国際業務」のページで公開されています。
分かれ目は「主に言語能力を用いる対人業務」かどうか
施工管理や設計そのものは、言語能力を用いる対人業務ではありません。したがって、その職種で採用する限り、B2相当の立証が当然に必要になるわけではありません。
問題になるのは、職務内容の建て付けのほうです。たとえば「日本語ができる外国人スタッフとして、同じ国から来た作業員と現場をつなぐ」という役割を主たる業務として説明した場合、それは通訳・調整、すなわち言語能力を用いる対人業務そのものです。この場合はB2相当の立証が必要になり、それがなければ在留資格に該当しないと判断されます。
もう一点、ガイドラインは「行おうとする活動が技人国に該当するか否かは、在留期間中の活動を全体として捉えて判断する」と明記しています。該当する活動がごく一部で、残りが特段の技術又は知識を要しない業務や反復訓練によって従事可能な業務であれば、該当しないと判断されます。
実務上の結論は2つです。
技術者として採るなら、職務内容を技術業務で書き切る。通訳や翻訳を「ついでに」書き足さないことです。書き足した瞬間に、言語能力の立証を求められる側に寄ります。
通訳・調整を本当に担わせるなら、国際業務の枠組みで用意する。この場合は翻訳・通訳等の業務に関連する3年以上の実務経験(大学を卒業した者が翻訳・通訳・語学の指導に従事する場合は不要)と、B2相当の立証をセットで準備します。
CEFR・B2相当と認められる資料
日本語の場合、認められ方は5通りあります。JLPT N2は、そのうちの1つにすぎません。
区分 | B2相当と評価されるもの |
|---|---|
日本語 | JLPT・N2以上を取得していること |
日本語 | BJTビジネス日本語能力テストで400点以上を取得していること |
日本語 | 中長期在留者として20年以上本邦に在留していること |
日本語 | 本邦の大学を卒業、または高等専門学校・専修学校の専門課程・専攻科を修了していること(専攻科目と業務内容に関連性が認められる場合に限る。文部科学大臣の認定を受けた専修学校の専門課程等の修了者は関連性を柔軟に判断) |
日本語 | 我が国の義務教育を修了し高等学校を卒業していること |
日本語以外 | 当該言語が申請人の母国語または公用語であること |
日本語以外 | 当該言語の試験でCEFR・B2以上が証明されていること(証明書上または試験の公式ホームページ上にCEFR表示があるものに限る) |
日本語以外 | 上記に該当しない場合、業務上必要な言語能力を有していることが明らかに評価できる合理的な理由が説明されていること |
見落とされやすいのは、日本語欄の下4つです。日本の大学・高専・専修学校を出た留学生は、N2を持っていなくても要件を満たし得ます。また、英語で業務を回す設計部門や海外案件であれば、日本語ではなく英語側でB2を立証する選択肢もあります。「業務上使用する言語」について問われる要件だからです。
自社はカテゴリー1〜4のどれか
改正の当事者になるかどうかは、自社のカテゴリーで決まります。まず経理に確認すべき数字は、前年分の給与所得の源泉徴収税額です。
カテゴリー | 該当する機関 | 言語能力の資料 |
|---|---|---|
1 | 日本の証券取引所に上場している企業など | 申請時の提出は不要(審査の過程で求められる可能性あり) |
2 | 前年分の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表中、給与所得の源泉徴収合計表の源泉徴収税額が1,000万円以上ある団体・個人 | 同上 |
3 | 前年分の法定調書合計表が提出された団体・個人(カテゴリー2を除く) | 申請時に提出 |
4 | 上記のいずれにも該当しない団体・個人 | 申請時に提出 |
中堅・中小の建設会社や専門工事会社の多くはカテゴリー3に入ります。判定は法人単位の源泉徴収税額で行われるため、給与総額が伸びてカテゴリー2に上がっていれば、申請時の提出義務そのものが外れます。自社がどちらなのかを把握しないまま準備を進めると、必要のない書類を集めることにも、逆に不足のまま申請することにもなります。
学歴・実務経験・報酬——変わっていない3つの要件
言語要件に注目が集まっていますが、許可・不許可を分けてきたのは従来からこの3つです。
要件 | 内容 |
|---|---|
学歴または実務経験(技術・人文知識) | 従事しようとする業務に必要な技術・知識に関連する科目を専攻して卒業していること、または10年以上の実務経験があること(実務経験の期間には大学等で関連科目を専攻した期間も含まれる) |
学歴または実務経験(国際業務) | 翻訳、通訳、語学の指導、広報、宣伝、海外取引業務、デザイン等に従事し、関連する業務について3年以上の実務経験があること(大学卒業者が翻訳・通訳・語学の指導に従事する場合は実務経験は不要) |
報酬 | 日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上であること。通勤手当・扶養手当・住宅手当等の実費弁償の性格を有するものは報酬に含まない |
専攻科目と業務の関連性について、ガイドラインは大学・高等専門学校では従来より柔軟に判断するとしています。海外の大学もこれに準じます。一方、専修学校については原則として相当程度の関連性が必要とされており、ここは判断が厳しくなります。土木工学や建築学を修めた海外大学卒業者を施工管理・設計で採用する形が、最も説明のつきやすい組み合わせです。
技人国・特定技能・育成就労の使い分け
「図面と管理は技人国、現場作業は特定技能・育成就労」が原則です。同じ会社で両方が必要なら、2つの枠組みを併走させることになります。
論点 | 技人国 | 特定技能1号(建設) | 育成就労(2027年4月〜) |
|---|---|---|---|
対象業務 | 技術・知識を要する業務(施工管理・設計・BIM等) | 現場作業(土木・建築・ライフライン設備の3区分) | 現場作業 |
入口の要件 | 学歴または実務経験 | 技能試験と日本語試験 | 入国時の試験は課されない |
在留期間 | 更新の上限なし | 通算5年 | 原則3年 |
業界側の手続き | なし | JAC加入・受入計画の認定 | 監理支援機関との契約 |
家族帯同 | 可 | 不可 | 不可 |
特定技能側の手続きは特定技能「建設」の受け入れ、何から手をつけるか、2027年4月に始まる制度は育成就労で建設の受け入れはどう変わるかで詳しく整理しています。採用手段そのものの比較は外国人エンジニア採用が急務に。3つの方法とコスト・リスクを比較をご覧ください。
派遣で受け入れる場合の制限
在留資格とは別に、労働者派遣法の制限がかかります。建設業務への労働者派遣は禁止されています。
ここでいう建設業務とは、土木、建築その他工作物の建設、改造、保存、修理、変更、破壊もしくは解体の作業、またはこれらの準備の作業に係る業務を指します。設計、CAD・BIM、積算といった事務所内の技術業務はこれに当たらないため、派遣での受け入れが可能です。
施工管理については、現場でどこまで作業に関与させるかによって評価が変わり得るため、直接雇用を基本に考えるほうが安全です。派遣で検討する場合は、契約書上の業務内容と実際の従事内容を一致させたうえで、個別に確認してください。
不許可になりやすい設計
申請が通らない理由の多くは、書類の不備ではなく、仕事の設計そのものにあります。
技術業務と現場作業が混ざっている:活動を全体として捉えて判断されるため、技術業務がごく一部だと該当しないと判断されます
学歴・職歴と業務の関連性が説明できない:専攻科目と職務内容の距離が遠いまま申請すると、関連性の説明で行き詰まります
報酬が日本人と同等でない:同等額以上であることが要件です
通訳・調整を主たる業務として書いてしまう:2026年4月以降は、ここでB2相当の立証が必要になります
なお、入社当初の研修として一時的に技人国に該当しない業務を含む場合は、それが今後の業務を行ううえで必ず必要であり、日本人についても入社当初は同様の研修に従事するといった場合には、技人国に該当するものとして取り扱われます。詳細はガイドライン別紙1に定められています。
受け入れまでの段取り
準備の順序を間違えなければ、技人国の受け入れは特定技能より手数が少なく済みます。
順序 | やること | 目的 |
|---|---|---|
1 | 自社のカテゴリー(前年分の源泉徴収税額)を経理に確認 | 申請時に言語能力の資料が要るかを確定させる |
2 | 職務内容を技術業務として書き切る | 「主に言語能力を用いる対人業務」に寄せない |
3 | 候補者の学位・専攻と職務内容の関連性を確認 | 上陸許可基準への適合を先に潰す |
4 | 報酬を日本人と同等額以上で設計 | 要件であり、定着の条件でもある |
5 | 必要に応じてB2相当の資料を収集 | N2以外の4通りも選択肢に入れる |
6 | 代表者に関する申告書を含む書類を準備し申請 | ー |
このうち2番と3番は、候補者を決めてからでは修正できません。求人票を書く段階で決めておく項目です。
よくある質問
Q. 技人国は2026年4月からJLPT N2が必須になったのですか?
いいえ。CEFR・B2相当の言語能力が前提とされるのは、主に言語能力を用いる対人業務等に従事する場合です。施工管理や設計など技術業務そのもので採用する場合に、一律でN2が求められるようになったわけではありません。またB2相当と評価される方法はN2以外にも複数あります。
Q. 施工管理者を採用する場合、B2相当の資料は必要ですか?
職務内容が技術的な管理業務であれば、それ自体は言語能力を用いる対人業務ではありません。ただし、通訳や作業員との橋渡しを主たる業務として説明した場合は必要になります。求人票と雇用契約書の業務内容の書き方が実質的な分岐点です。
Q. 日本の専門学校を卒業した人はB2相当と認められますか?
本邦の専修学校の専門課程または専攻科を修了していれば、B2相当と評価されます。ただし専攻科目と業務内容に関連性が認められる場合に限られます。文部科学大臣の認定を受けた専修学校の専門課程等の修了者については、この関連性が柔軟に判断されます。
Q. 英語だけで業務を行う設計者の場合、日本語能力は問われますか?
問われるのは業務上使用する言語です。英語で業務を行うのであれば、英語側でCEFR・B2以上を証明する試験の結果などで立証します。母国語または公用語である場合も、B2相当と評価されます。
Q. 自社がカテゴリー3かどうかはどこで分かりますか?
前年分の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表を提出しており、かつ源泉徴収税額が1,000万円未満であればカテゴリー3です。1,000万円以上であればカテゴリー2になります。経理担当者に法定調書合計表を確認してもらうのが確実です。
Q. 技人国の外国人を、少しだけ現場作業に従事させることはできますか?
活動を全体として捉えて判断されるため、技術業務が中心であることが必要です。入社当初の研修として日本人も同様に従事するものであれば認められる場合がありますが、恒常的に現場作業へ従事させる運用は在留資格の該当性を失わせます。
Q. 施工管理を派遣で受け入れられますか?
建設業務への労働者派遣は禁止されています。設計・CAD・BIM・積算といった事務所内の技術業務は建設業務に当たりませんが、施工管理は現場での関与の度合いによって評価が変わり得るため、直接雇用を基本に検討してください。
Q. 特定技能で働いている人を技人国に切り替えられますか?
在留資格変更の許可を受けられれば可能ですが、技人国の要件(関連する科目を専攻した学歴または10年以上の実務経験、日本人と同等額以上の報酬、技術業務であること)を満たす必要があります。現場作業から技術職への配置転換を伴うため、職務内容の再設計が前提になります。
まとめ
技人国での受け入れは、書類を揃える作業ではなく、仕事の中身を設計する作業です。
技人国は施工管理・設計・CAD/BIM・積算のための在留資格。人数枠も技能試験もなく、在留期間の更新に上限もない
2026年4月15日以降、主に言語能力を用いる対人業務に従事する場合はCEFR・B2相当の言語能力が前提とされる
資料の提出が申請時に必要なのはカテゴリー3・4。自社のカテゴリー確認が最初の一手になる
B2相当はJLPT N2以外に4通りの認められ方がある。日本の大学・専門学校の卒業者、英語で業務を行う技術者は別のルートで立証できる
学歴と業務の関連性、日本人と同等額以上の報酬という従来の要件は変わっていない
現場作業は特定技能・育成就労、技術業務は技人国。混ぜて設計すると、どちらの制度でも通らなくなる
淡路グローバルゲートウェイ(AGG)では、インドの提携大学の土木・建築・電気系学科を母集団として、施工管理・設計・CAD/BIMの技術者をご紹介・派遣しています。登録支援機関として特定技能の受け入れ支援も行っているため、「この職種はどちらの制度で採るべきか」という切り分けからご相談いただけます。無料相談フォームからお気軽にお問い合わせください。
監修者
Naoya Mitani /淡路グローバルゲートウェイ(AGG) 事業統括責任者
インドITエンジニアの可能性に着目し、AGGのIT人財部を設立しました。事業統括責任者として、エンジニア派遣事業の戦略立案と実行を担っています。


