外国人BIM技術者をどう確保するか──BIM図面審査で変わった要件と、職種の切り分け・派遣の使い方【2026年版】
建築DX
BIM担当を1名増やすことになった。求人票の必須要件に「Revitの実務経験2年以上」と書き、人材紹介会社に依頼する。数週間後、経験者が1名紹介されてくる。単価は想定より2割高い。それでも決めようとして、設計部長がひとこと言う。「この人、確認申請の図面まで出せるの?」——ここで答えられる会社は多くない。
BIMの求人がうまくいかない原因の大半は、母集団が薄いことではなく、募集要件が職務を表していないことにある。「BIMができる」の中身は、モデルを入力する仕事、モデルを整合させる仕事、モデルの使い方を決める仕事の3つに分かれていて、必要な経験年数も報酬水準も、それぞれ違う。3つを1本の求人票に混ぜると、応募が来ないか、来ても仕事が合わない。
そして2026年4月、建築確認の実務にBIM図面審査が入った。ここで要求されるのは、モデルを見た目どおりに作る力ではなく、決められた入出力基準に沿って属性を入力し、図面として出力できる力である。この記事では、BIM技術者を海外から確保する場合に、職務をどう切り分け、どの在留資格で通し、雇用と派遣をどう使い分けるかを、受け入れる企業側の順序で整理します。
この記事の要点
BIMの職務は、モデラー・コーディネーター・マネージャーの3層に分けてから募集する。混ぜると採用も定着も失敗する。
2026年4月から建築確認でBIM図面審査が始まり、入出力基準に沿ってモデルを作れることが実務要件になった。ソフトの操作経験だけでは足りない。
BIMの職種名は公的に標準化されていない。求人票では職種名ではなく、担当する成果物で書く。
BIMは在留資格「技術・人文知識・国際業務」(技人国)の対象になる。建設業務の派遣禁止にも当たらないため、派遣で受け入れられる。
成果物が明確でレビュー可能なため、BIMは外部人材との相性がよい業務である。オンサイトとリモートの切り分けもしやすい。
BIM人材の議論は「Revitが使える人」から始めると失敗する
BIM人材の要件定義は、ソフト名ではなく成果物から始めるべきである。ソフトが使えることは前提条件であって、選考基準にはならない。同じRevitの経験2年でも、意匠モデルの入力しかしたことがない人と、構造・設備との干渉チェックまで回してきた人では、任せられる範囲がまったく違う。
BIM導入そのものの費用や社内体制についてはBIM導入、今から始めても遅くない?コスト・課題・人材確保まで徹底解説で扱っている。本記事はその先、人をどう定義して外から採るかに絞る。
要件定義の起点になる問いは3つである。誰の指示でモデルを作るのか。作ったモデルは何に使われるのか。品質の合否は誰が判定するのか。この3つに答えられれば、必要な人材の層は自動的に決まる。答えられないまま募集を出すと、面接で聞くことがなくなり、結局はソフトの経験年数で決めることになる。
2026年4月、建築確認にBIM図面審査が入った
BIM図面審査は、建築確認の申請図書をBIMモデルから出力し、共通データ環境(CDE)上で審査を行う仕組みである。国土交通省は令和元年に建築BIM推進会議を設置し、建築確認において2026年4月からBIM図面審査を開始、2029年春にはBIMデータ審査の実現を目指すとしている。開始に合わせて建築基準法施行規則および建築確認等に関する指針(平成19年告示835号)が改正され、ガイドラインと申請・審査マニュアル(初版は令和8年3月24日版、建築BIM推進会議 審査TF)が公開されている。
制度が想定している効果は、建築BIM推進会議のガイドラインに次のように整理されている。
効果の区分 | 内容 |
|---|---|
共通 | BIMモデルから図面を作成することによる整合性の向上 |
共通 | 確認申請用CDEの活用による申請・指摘等のコミュニケーションの円滑化 |
共通 | 建築確認手続きにかかる期間の短縮 |
主に設計者 | 確認の申請にかかる図書作成の効率化 |
主に審査者 | 3Dモデルの閲覧による申請建築物等の形状理解の向上 |
主に審査者 | 確認の申請にかかる図書表現の統一による審査の効率化 |
主に審査者 | 整合性確認の省略による審査の効率化 |
採用の観点で重要なのは、申請者側に「入出力基準に基づくBIMモデルの作成」と「入出力基準適合誓約書」が求められる点である。つまりモデルは、見た目が正しいだけでは通らない。決められた入力ルールに従って属性が入っていて、決められた表現標準で図面として出力できる必要がある。この作業を担える人が社内に何人いるかが、確認申請の回し方を左右する。
ソフトの操作は独学でも身につくが、入出力基準に沿った入力は、基準を読んで手を動かした経験がないとできない。選考では「使えるソフト」ではなく「基準に沿ってモデルを直した経験」を聞くべきである。
BIMの職務は3層に分かれる
BIMの職務は、入力する層、整合させる層、決める層の3つに分けて考える。層が違えば、必要な建築知識も、日本語の水準も、報酬も変わる。
層 | 主な業務 | 求める経験 | 建築知識 | 日本語 |
|---|---|---|---|---|
モデラー(入力) | 図面・仕様に基づくモデル入力、ファミリ作成、数量拾い | ソフト実務1〜3年 | 図面が読めること | 指示の読解ができる水準 |
コーディネーター(整合) | 干渉チェック、モデル間の整合、入出力基準への適合、出力図面の確認 | 実務3年以上、複数分野の経験 | 意匠・構造・設備の関係が分かること | 設計者と協議できる水準 |
マネージャー(決定) | BIM実行計画の策定、社内標準・ワークフローの整備、品質判定 | 設計または施工の実務経験+BIM運用経験 | 設計プロセス全体 | 社内外の合意形成ができる水準 |
海外から確保しやすいのはモデラーとコーディネーターの層である。マネージャーの層は日本の設計プロセスと商習慣の理解が前提になるため、外から短期で埋めるより、コーディネーターとして入った人を数年かけて上げるほうが現実的である。
逆に言えば、モデラーとコーディネーターを外部で確保できれば、社内の設計者はマネージャーの仕事に時間を使える。BIM人材の不足を「BIMが分かる社員が足りない」と表現している会社の多くは、実際には社内の設計者が入力作業に時間を取られている状態にある。
職種名は標準化されていない、という前提で書く
BIMの職種名には公的な標準定義がない。建築BIM推進会議でも「BIMマネージャー」については、現時点で成果として取りまとめが難しい課題として、継続検討とされている。国が定義を置いていない以上、求人票に職種名だけを書いても、応募者と自社が同じ意味で読んでいる保証はない。
そこで求人票には、職種名ではなく成果物と判定者を書く。「BIMモデラー募集」ではなく、「意匠モデルの入力(LOD200〜300)、干渉チェックの一次確認、設計担当がレビューして合否を判定」と書く。この書き方をすると、応募数は減るが、面接に来る人の質は上がる。母集団を広く取ることより、誤解のない母集団を取ることのほうが、採用単価は下がる。
使用ソフトも、名前を挙げるだけでは足りない。Revit、Archicad、Civil 3Dのどれで、どのバージョンで、社内テンプレートやファミリライブラリが整備されているかどうかで、立ち上がりまでの期間が変わる。テンプレートが未整備なら、入社した人がまずテンプレートを作ることになる。それはモデラーの仕事ではない。
在留資格は技人国──BIM業務は「技術」に当たる
BIMの業務は、在留資格「技術・人文知識・国際業務」(技人国)で受け入れる。自然科学の分野に属する技術を要する業務に当たり、建築・土木系の学歴または相当する実務経験があれば、要件を満たす。特定技能や育成就労のような分野別の枠組みではなく、通常の就労資格である。
技人国の要件と2026年4月の改正については建設技術者を「技人国」で受け入れる実務で詳しく扱っている。BIM業務に固有の論点は次の2つである。
第一に、業務内容が「技術」であることを疎明資料で示す必要がある。雇用契約書や業務内容説明書に「CADオペレーション」とだけ書くと、単純な作図補助と読まれる余地が生じる。モデルの構築、干渉チェック、数量算出、図面出力といった具体的な業務を並べ、担当する成果物を明記するほうが安全である。
第二に、2026年4月の改正で追加された言語要件は、主に言語能力を用いる対人業務が対象である。BIMのモデリング業務はこれに当たらないため、日本語の水準そのものが在留資格の可否を分けるわけではない。ただし設計者との協議が業務の中心になるコーディネーター以上の層では、実務上の日本語が必要になる。制度上の要件と、業務が実際に要求する水準は別のものとして設計する。
建設業でも、BIMは派遣で受け入れられる
労働者派遣法が禁止しているのは「建設業務」であって、建設業を営む会社への派遣ではない。禁止の対象は、土木・建築等の工事の作業に直接従事する業務であり、設計・施工管理・BIMといった技術系の業務は対象外である。したがってBIM技術者は派遣で受け入れられる。
派遣禁止の範囲と職種別の可否は「建設業に派遣は使えない」は本当かで整理している。BIMを派遣で受け入れる実務上の意味は、次の3点にある。
論点 | 直接雇用 | 派遣 |
|---|---|---|
立ち上げの速さ | 募集から入社まで数ヶ月 | 稼働中の人材を月単位で受け入れ |
案件量の変動 | 固定費として残る | 契約更新で調整できる |
採用基準 | 自社の等級・給与テーブルに収める必要がある | 自社の採用基準を満たさない層でも受け入れられる |
育成 | 自社が負担 | 派遣元が負担する設計にできる |
BIM案件は物件単位で増減するため、常時フル稼働の需要になりにくい。ピークに合わせて直接雇用すると、閑散期に人が余る。逆に平常時に合わせると、ピークで外注に出すことになり、モデルの品質が社内に残らない。派遣で上下の幅を吸収し、コアの人材だけを直接雇用で持つ構成が、実務では扱いやすい。
費用の比べ方は外国人建設人材の受け入れ費用はいくらかで手法別に整理している。
オンサイトかリモートか──BIMは切り分けやすい
BIMは、成果物がデータであり、品質をレビューで判定できるため、遠隔での分業が成立しやすい業務である。図面の読み合わせや現場との調整が必要な工程だけを国内で行い、入力とチェックの工程を海外拠点で回す構成が取れる。
工程 | オンサイトが要る度合い | 理由 |
|---|---|---|
モデル入力・ファミリ作成 | 低い | 図面と仕様書があれば成立する |
干渉チェック・整合確認 | 低い | データ上で完結する |
入出力基準への適合・図面出力 | 中程度 | 確認申請の窓口対応と往復がある |
設計者・施工との協議 | 高い | 意思決定を伴う |
現場との照合・是正 | 高い | 現物を見る必要がある |
なお施工管理は、現場に常駐して人と工程を動かす業務であり、遠隔では成立しない。BIMと施工管理を同じ「建設DX人材」として一括りに募集すると、どちらの職務も設計できなくなる。施工管理を外国人で埋める場合の実務は外国人の施工管理者を採用する実務を参照してほしい。
受け入れまでの段取りと、時間の見積もり
BIM技術者の受け入れは、社内側の準備が終わっていないと、人が来た日から止まる。順序は次のとおりである。
順序 | やること | 目安 |
|---|---|---|
1 | 職務の切り分け(3層のどれを採るか)と成果物の定義 | 社内で1〜2週間 |
2 | 使用ソフト・テンプレート・ファミリライブラリの整備状況の確認 | 同上 |
3 | 求人票・業務内容説明書の作成(成果物と判定者を明記) | 1週間 |
4 | 母集団の選定と選考(技術課題を含める) | 3〜6週間 |
5 | 在留資格の手続き(国内在住者か、海外からの呼び寄せかで大きく変わる) | 国内在住者なら短い/海外からは数ヶ月 |
6 | 受け入れ・オンボーディング(テンプレート、命名規則、レビュー体制) | 最初の1ヶ月 |
もっとも時間を圧縮できるのは、すでに日本国内にいる技術者を採る場合である。在留資格が就労可能なものであれば、新規の呼び寄せに比べて着任までの期間は大きく短くなる。
選考では、必ず実データによる技術課題を入れる。所要2〜3時間程度の課題で、指定した図面からモデルを起こし、干渉チェックの結果を提出させる。職務経歴書とソフト名だけでは、入力の癖も、指示の読み方も分からない。
よくある質問
Q. Revitの経験しかない人でも大丈夫ですか
担当させる層によります。モデラー層であれば、社内で使っているソフトの実務経験があれば成立します。コーディネーター層では、意匠・構造・設備のモデルを突き合わせた経験が必要で、ソフト単体の操作経験だけでは足りません。なお2026年4月に始まったBIM図面審査では、入出力基準に沿った入力と、確認申請図書表現標準に沿った出力が求められます。基準を読んでモデルを直した経験があるかどうかを、選考で確認してください。
Q. BIM技術者は派遣で受け入れられますか
受け入れられます。労働者派遣法が禁止しているのは、土木・建築等の工事の作業に直接従事する「建設業務」であり、BIMのモデリングや設計補助はこれに当たりません。案件量が物件単位で増減するBIMは、派遣で上下の幅を吸収し、コアの人材を直接雇用で持つ構成が扱いやすい業務です。ただし派遣先としての期間制限(事業所単位・個人単位)は通常どおり適用されます。
Q. 日本語はどのレベルが必要ですか
層によって変わります。モデラー層は、指示書と図面が読めて、質問を文章でやり取りできれば業務は回ります。コーディネーター層以上は設計者との協議が中心になるため、会議で自分の見解を述べられる水準が要ります。なお2026年4月の技人国の改正で追加された言語要件は、主に言語能力を用いる対人業務が対象であり、モデリング業務そのものには適用されません。制度上の要件と、業務が要求する水準は分けて設計してください。
Q. 海外の拠点にBIM作業を出す場合、社内には何が残りますか
意思決定と品質判定が残ります。何をモデル化するか、どの粒度で作るか、出てきたモデルを合格とするかどうかは、社内で決める必要があります。この3つを外に出すと、モデルは出来上がっても社内に使い方の知見が残らず、次の物件でまた同じことを外注することになります。逆に入力とチェックの工程は、成果物がデータで判定可能なため、外に出しても品質を管理できます。
Q. 求人票にはどこまで書けばよいですか
職種名ではなく、担当する成果物と、合否を判定する人を書いてください。BIMの職種名には公的な標準定義がなく、建築BIM推進会議でも「BIMマネージャー」の定義は継続検討とされています。「BIMオペレーター募集」だけでは、応募者と自社が同じ意味で読んでいる保証がありません。使用ソフトはバージョンまで、社内テンプレートやファミリライブラリの整備状況も併記すると、入社後のミスマッチが減ります。
Q. テンプレートが未整備でも採用してよいですか
順序が逆になります。テンプレートや命名規則が未整備の状態でモデラーを採ると、その人はまず社内標準を作る作業から始めることになり、これはモデラーの職務ではありません。標準の整備はマネージャー層の仕事です。未整備であれば、先に整備を担える人材を短期で確保し、標準ができてから入力の層を増やすほうが、結果として早く回り始めます。
Q. BIM図面審査は自社にもすぐ影響しますか
建築確認を伴う設計業務を持っているかどうかで変わります。2026年4月に開始された制度であり、2029年春にはBIMデータ審査の実現が目指されています。当面の実務では、確認申請をBIM図面審査で出すかどうかは選択の余地がありますが、審査側の体制と表現標準が整うにつれて、BIMから図面を出せることが標準的な業務能力になっていきます。人材の要件は、いま整えておくほうが安く済みます。
Q. 採用と派遣、どちらから始めるべきですか
案件量の見通しで判断してください。BIM案件が年間を通じて安定して見込めるなら直接雇用が有利です。物件単位で増減する、あるいはBIMの内製化を始めたばかりで必要な層がまだ確定していない段階であれば、派遣で始めて、必要な職務が見えてから直接雇用に切り替えるほうが失敗が少なくなります。派遣であれば、自社の採用基準や給与テーブルに収まらない層でも受け入れられます。
まとめ
BIM人材は「Revitが使える人」ではなく、担当する成果物と判定者から定義する。ソフト名は前提条件であって選考基準ではない。
2026年4月から建築確認でBIM図面審査が始まり、入出力基準に沿った入力と、確認申請図書表現標準に沿った出力ができることが実務要件になった。
職務はモデラー・コーディネーター・マネージャーの3層に分ける。海外から確保しやすいのは前の2層で、マネージャーは社内で育てるほうが現実的である。
BIMの職種名に公的な標準定義はない。求人票には職種名ではなく成果物を書き、使用ソフトはバージョンとテンプレートの整備状況まで併記する。
在留資格は技人国。建設業務の派遣禁止には当たらないため、派遣で受け入れられる。案件量が変動するBIMとは相性がよい。
選考には必ず実データの技術課題を入れる。経歴書とソフト名からは、入力の癖も指示の読み方も分からない。
淡路グローバルゲートウェイ(AGG)では、BIM技術者の職務の切り分けから、求人票・業務内容説明書の設計、技人国での受け入れ、派遣によるオンサイト・リモートの組み合わせまでをご支援しています。すでに日本国内にいる技術者のご紹介もできますので、無料相談フォームからお気軽にお問い合わせください。
監修者
Naoya Mitani /淡路グローバルゲートウェイ(AGG) 事業統括責任者
インドITエンジニアの可能性に着目し、AGGのIT人財部を設立しました。事業統括責任者として、エンジニア派遣事業の戦略立案と実行を担っています。


