外国人社員の住民税と年末調整──帰国時の一括徴収・納税管理人、国外扶養親族の書類と年齢要件【2026年版】
制度・法律
来日2年目の6月、外国人エンジニアから給与担当者に問い合わせが来る。「今月から手取りが急に減った。給与計算の誤りではないか」。調べると、住民税の特別徴収が始まっただけだった。住民税は前年の所得に対して翌年度に課税されるため、来日した年には天引きがなく、2年目から始まる。この仕組みを入社時に説明していなかったために、本人は会社に不信感を持ってしまった。
年末になると、別の相談が来る。母国に住む両親を扶養しているので、扶養控除を受けたいという。扶養控除等申告書に両親の名前を書いてもらったが、親族関係書類も送金関係書類も手元にない。しかも両親の年齢は50代で、2023年分以降は原則として扶養控除の対象外になっている。本人は「去年まで控除されていたのに」と納得しない。
外国人社員の税の実務は、日本人社員と同じ制度の上で動いている。ただ、国外に家族がいること、帰国や出国があり得ることによって、日本人社員ではまず起きない論点が出てくる。この記事では、外国人エンジニアを受け入れる企業の人事・給与担当者と経営層に向けて、住民税と年末調整で押さえておくべき実務を整理します。
この記事の要点
住民税は、1月1日に住所がある市区町村が前年の所得に対して課税する。来日1年目は天引きがなく、2年目の6月から特別徴収が始まる。
1月1日から4月30日までに退職する場合、残りの住民税は原則として最後の給与などから一括徴収する。6月1日から12月31日の退職では、本人の申出があれば一括徴収できる。
1月1日に日本に住所があれば、その年度の住民税は年の途中で帰国しても課税される。出国後に納める分は、納税管理人を定めるか出国前に納める段取りが要る。
国外に住む親族の扶養控除には、親族関係書類と送金関係書類が必要になる。2023年分以降は、30歳以上70歳未満の国外居住親族は、留学・障害者・一定額以上の送金を受けている場合を除き対象外である。
年の途中で出国して非居住者になる社員は、出国の際に年末調整を行う。派遣の場合、年末調整と住民税の特別徴収は雇用主である派遣元が行う。
外国人社員の税は、日本人と同じ制度で、論点が違う
外国人社員の住民税と所得税は、日本人社員と同じ法律・同じ手続きで扱う。国籍による特別な税制があるわけではなく、違いが出るのは、国外の家族と出国の可能性という2つの事情から生じる論点である。
所得税の扱いは、国籍ではなく「居住者」か「非居住者」かで決まる。国税庁の案内によると、居住者とは国内に住所を有する人、または現在まで引き続き1年以上居所を有する人をいう。日本の会社に雇用され、1年以上日本に住む予定で入国した人は、入国の時点から居住者として扱われるのが通常である。
区分 | 該当する人の例 | 年末調整 | 課税される所得の範囲 |
|---|---|---|---|
居住者 | 日本の会社に雇用され、日本で継続して働く人 | 対象 | 原則としてすべての所得 |
年の途中で非居住者になる人 | 退職して帰国する人、海外へ転勤する人 | 出国の際に行う | 出国までの給与などで精算 |
非居住者 | 海外に住み、日本の会社から給与を受ける人 | 対象外 | 国内源泉所得に限られる |
実務上は、外国人エンジニアの多くは居住者として日本人社員と同じ給与計算の流れに乗る。違いが表面化するのは、扶養控除の申告と、退職・帰国の場面である。この2つを入社時の説明と退職時の手続きに組み込んでおけば、トラブルの大半は防げる。
住民税は、1月1日の住所で決まる
住民税は、その年の1月1日に住所がある市区町村が、前年の所得に対して課税する。総務省の案内でも、個人住民税は1月1日現在の住所地で課税されるとされている。
この仕組みから、外国人社員に特有の2つの事情が生じる。1つは、来日1年目には住民税の天引きがないこと。もう1つは、1月1日に日本にいれば、その年の途中で帰国しても、その年度の住民税は課税されることである。
時期 | 住民税の動き | 本人への説明のポイント |
|---|---|---|
来日した年 | 前年に日本での所得がないため、天引きは発生しない | 翌年から天引きが始まることを入社時に伝える |
来日翌年の1月1日 | 住所地の市区町村が課税の対象として把握する | 会社は1月31日までに給与支払報告書を提出する |
来日翌年の6月 | 特別徴収(給与からの天引き)が始まる | 手取りが減るのは誤りではないと説明する |
以後毎年 | 6月から翌年5月までの12回で天引き | 年度の途中で退職・帰国する場合の扱いを伝える |
冒頭の「2年目の6月に手取りが減った」という相談は、この表の3行目にあたる。給与の提示額を手取りで説明している場合は、住民税が始まる時期を合わせて伝えておくと、2年目の不信感を防げる。給与水準の組み立て方は外国人エンジニアの給与相場で扱っている。
退職・帰国の時期で、住民税の徴収方法が変わる
外国人社員が退職して帰国する場合、残りの住民税をどう納めるかは、退職する時期によって変わる。地方税法の定めでは、1月1日から4月30日までに退職する場合は、残りの税額を原則として最後の給与や退職手当から一括して徴収する。6月1日から12月31日までに退職する場合は、本人の申出があれば一括徴収でき、申出がなければ普通徴収(本人が直接納める方法)に切り替わる。
退職の時期 | 残りの住民税の扱い | 帰国する社員で注意すること |
|---|---|---|
1月1日〜4月30日 | 原則として最後の給与などから一括徴収 | 翌年度(6月以降)の住民税も1月1日の住所で課税される |
5月 | 5月分の天引きで当年度が完了 | 翌年度の住民税は6月以降に本人が納める |
6月1日〜12月31日 | 本人の申出で一括徴収。申出がなければ普通徴収 | 帰国するなら一括徴収を案内する |
注意したいのは、1月から5月に帰国する社員である。1月1日に日本に住所があるため、その年の6月から始まる新しい年度の住民税が、前年の所得に対して課税される。この税額の通知は6月ごろに届くため、本人はすでに日本にいない。
このため、帰国する社員には、出国前に納税管理人を定めて市区町村に届け出るか、市区町村と相談して出国前に納める段取りを取ってもらう必要がある。納税管理人は、本人に代わって納税の通知を受け取り、納付を行う人で、日本に住む知人などがなることが多い。会社が引き受けるかどうかは任意であり、社内の方針として決めておくとよい。
会社側の手続きとしては、退職者が出たら、特別徴収をやめる旨を給与所得者異動届出書で市区町村に届け出る。提出期限は、退職した日の属する月の翌月10日までとされている。
住民税の納付状況は、在留期間の更新にも関わる
住民税を適切に納めているかは、税だけの問題ではない。所属機関の区分によっては、在留期間の更新申請の際に、住民税の課税証明書と納税証明書の提出が求められる。
出入国在留管理庁の案内では、技術・人文知識・国際業務の在留期間更新許可申請で、所属機関の区分に応じて、1年間の総所得と納税状況が記載された住民税の課税(または非課税)証明書と納税証明書を提出書類としている。未納があれば、更新の審査で不利に働く可能性がある。永住許可の審査でも、公的義務を適正に果たしていることが求められる。
給与から天引きする特別徴収であれば、未納は起きにくい。問題になりやすいのは、転職の空白期間や退職後に普通徴収へ切り替わった期間である。中途採用で入社した外国人社員には、前職を退職した後の住民税を納めているかを、入社時に確認しておくとよい。国内在住者の中途採用の手続きはすでに日本にいる外国人エンジニアを中途採用するで整理している。在留期間の管理全般は在留カードの確認は企業の責任で整理している。
国外に住む親族の扶養控除には、2種類の書類が要る
国外に住む親族について扶養控除などを受けるには、親族関係書類と送金関係書類の提出または提示が必要になる。国税庁の案内によると、この取扱いは2016年分から適用されている。
書類 | 何を示すか | 主な例 | いつ必要か |
|---|---|---|---|
親族関係書類 | その人が本人の親族であること | 外国政府などが発行した出生証明書や婚姻証明書などと、その親族のパスポートの写し | 扶養控除等申告書を提出するとき(源泉徴収の段階) |
送金関係書類 | その年に生活費や教育費を送金したこと | 金融機関の外国送金依頼書の控え、家族カードの利用明細など | 年末調整のとき |
翻訳文 | 外国語の書類の内容 | 上記の書類が外国語の場合に添付 | 書類と同じ時期 |
実務上の要点は3つある。第一に、送金関係書類は扶養親族ごとに必要になる。両親の片方にまとめて送金している場合、もう一方への送金とは扱われないことがある。第二に、書類はその年ごとに必要で、前年の書類は使えない。第三に、書類がそろわない場合は、その親族について控除を受けられない。
入社時と年末調整の前に、この書類の説明を英語でも案内しておくと、年末にあわてて書類を集める事態を防げる。とくに送金の記録は後から作れないため、年の初めから保管してもらう必要がある。入社時オリエンテーションの組み立てはインド人エンジニアの受け入れ準備も参考になる。
2023年分から、30歳以上70歳未満の国外親族は原則対象外
2023年分以降の所得税では、30歳以上70歳未満の国外居住親族は、原則として扶養控除の対象外になった。国税庁の案内によると、例外として扶養控除の対象になるのは、次の3つのいずれかに当たる場合に限られる。
国外居住親族の年齢 | 扶養控除の対象か | 必要な書類 |
|---|---|---|
16歳以上30歳未満 | 対象 | 親族関係書類、送金関係書類 |
30歳以上70歳未満で、留学により国内に住所・居所がなくなった人 | 対象 | 親族関係書類、留学の在留資格等を示す書類、送金関係書類 |
30歳以上70歳未満で、障害者である人 | 対象 | 親族関係書類、送金関係書類 |
30歳以上70歳未満で、その年に一定額以上の生活費・教育費の送金を受けている人 | 対象 | 親族関係書類、送金額が一定額以上であることを示す書類 |
30歳以上70歳未満で、上記のいずれにも当たらない人 | 対象外 | ― |
70歳以上 | 対象 | 親族関係書類、送金関係書類 |
国外に住む親を扶養している社員では、親の年齢が30歳以上70歳未満に当たることが多い。冒頭の例のように、前年まで控除を受けていた人が、改正後の扱いを知らずに申告するケースも起こり得る。一定額の具体的な水準は国税庁の最新の案内で確認し、社員に伝えておく。
なお、この年齢の要件は扶養控除に関するもので、配偶者控除には適用されない。国外に住む配偶者についても、親族関係書類と送金関係書類は必要になる。家族を日本に呼び寄せて同居すれば国外居住親族ではなくなり、これらの書類は不要になる。呼び寄せの手続きは外国人社員の家族の呼び寄せと家族滞在で扱っている。
扶養の申告内容は、会社が市区町村に提出する給与支払報告書にも反映され、住民税の計算にも関わる。年末調整の段階で正しく申告しておくことが、翌年度の住民税を正しくすることにもつながる。
年の途中で帰国する社員は、出国時に年末調整を行う
退職して帰国する社員は、出国の日までの給与について、出国の際に年末調整を行う。年の途中で非居住者になる人は、12月の年末調整を待たずに精算するのが所得税法上の扱いである。
この出国時の年末調整でも、国外居住親族の扶養控除を受けるには、送金関係書類が必要になる。出国直前はあわただしく、書類の回収が漏れやすい。退職の申出を受けた時点で、必要な書類の一覧を渡しておくとよい。
時期 | 会社が行うこと | 本人に依頼すること |
|---|---|---|
退職の申出を受けたとき | 最終給与日と出国予定日を確認する | 送金関係書類の準備、納税管理人の検討 |
最終給与の計算 | 住民税の一括徴収の要否を判断し、出国時の年末調整を行う | 扶養控除等申告書の内容の確認 |
退職後 | 給与所得者異動届出書を市区町村に提出、源泉徴収票を交付 | 出国前に納税管理人の届出(必要な場合) |
出国後 | 納税管理人経由の問い合わせに対応 | 翌年度の住民税の納付(1月1日に住所があった場合) |
出国後に所得税の確定申告が必要になる場合も、税務署に納税管理人の届出をしておく必要がある。脱退一時金の税の扱いなど、年金に関わる論点は日印社会保障協定で企業がすべきことで扱っている。
租税条約は、個別の条件で判断する
日本とインドの間には、所得に対する租税に関する二重課税の回避を目的とした租税条約がある。ただし、日本の会社に雇用されて日本で継続して働くエンジニアの給与は、原則として日本で課税されると考えてよい。
租税条約には、短期間だけ相手国で働く人の給与を免税とする規定などがあるが、適用には滞在期間や給与の支払者などの条件がある。日本の会社が雇用して日本で給与を支払う場合は、この条件に当てはまらないのが通常である。インドの会社から一時的に派遣される人など、個別の事情がある場合は、税務署や税理士に確認する。
条約の適用を受ける場合は、所定の届出書を提出する手続きが必要になることがある。会社が独自に判断せず、専門家の確認を経てから源泉徴収の扱いを決める。
派遣で受け入れる場合は、派遣元が給与の税務を担う
派遣で外国人エンジニアを受け入れる場合、年末調整や住民税の特別徴収は、雇用主である派遣元が行う。派遣先が給与を支払っているわけではないためである。
派遣先の人事担当者が社員と同じ感覚で税の相談を受けてしまうと、誤った案内になりかねない。相談を受けたら派遣元の担当者につなぐ、という役割分担を受け入れの初日に決めておくとよい。弊社がご支援している派遣では、住民税が始まる時期や国外親族の書類について、就業開始の前から本人にご案内しております。
よくある質問
Q. 来日1年目の社員に住民税がかからないのはなぜですか
住民税は、1月1日に住所がある市区町村が前年の所得に対して課税する仕組みだからです。来日した年は前年に日本での所得がないため、住民税の天引きは発生しません。翌年の1月1日に日本に住所があれば、その前年の所得に対する住民税が課税され、6月から給与からの天引きが始まります。手取りが減ったという誤解を防ぐため、入社時に説明しておくことをおすすめいたします。
Q. 3月に退職して帰国する社員の住民税はどうなりますか
1月1日から4月30日までの退職では、その年度の残りの住民税を原則として最後の給与などから一括徴収します。さらに、1月1日に日本に住所があるため、6月から始まる新しい年度の住民税も前年の所得に対して課税されます。この通知は帰国後に届くため、本人には出国前に納税管理人を定めて市区町村に届け出るか、市区町村と相談して出国前に納める段取りを取ってもらってください。
Q. 国外に住む50代の両親は扶養控除の対象になりますか
2023年分以降は、30歳以上70歳未満の国外居住親族は原則として扶養控除の対象外です。例外は、留学により国内に住所・居所がなくなった人、障害者、その年に一定額以上の生活費や教育費の送金を受けている人のいずれかに当たる場合です。一定額以上の送金を受けている場合は、その送金額を示す書類が必要になります。水準は国税庁の最新の案内で確認してください。
Q. 送金関係書類として何を用意してもらえばよいですか
金融機関が発行した外国送金依頼書の控えなど、その年に本人から親族へ送金したことが分かる書類が基本です。クレジットカードの家族カードを親族が使っている場合は、その利用明細も認められます。書類は扶養親族ごとに、その年のものが必要です。送金の記録は後から作れないため、年の初めから保管してもらうよう案内してください。
Q. 年の途中で帰国する社員の年末調整はいつ行いますか
出国の際に行います。年の途中で出国して非居住者になる社員は、12月を待たず、出国の日までの給与について年末調整で精算します。国外居住親族の扶養控除を受けるには、この時点でも送金関係書類などが必要です。退職の申出を受けた段階で最終給与日と出国日を確認し、書類の一覧を渡しておくと漏れを防げます。
Q. 派遣で受け入れている外国人エンジニアから税の相談を受けたらどうすればよいですか
派遣で受け入れている場合、年末調整や住民税の特別徴収を行うのは雇用主である派遣元です。派遣先の人事担当者が社員と同じ前提で回答すると、誤った案内になるおそれがあります。相談を受けたら派遣元の担当者につなぐ役割分担を、受け入れの初日に決めておいてください。
Q. 住民税を滞納すると在留資格に影響しますか
影響する可能性があります。所属機関の区分によっては、在留期間の更新申請の際に住民税の課税証明書と納税証明書の提出が求められ、未納があれば審査で不利に働くことがあります。永住許可の審査でも、公的義務を適正に果たしていることが求められます。転職の空白期間に普通徴収へ切り替わった分が未納になりやすいため、中途入社時に確認してください。
まとめ
外国人社員の税は日本人と同じ制度で扱う。所得税は国籍ではなく、居住者か非居住者かで決まる。
住民税は1月1日の住所で課税される。来日1年目は天引きがなく、2年目の6月から始まることを入社時に伝える。
1月から5月に帰国する社員は、翌年度の住民税の通知が帰国後に届く。納税管理人の届出か出国前の納付を段取りする。
国外居住親族の扶養控除には親族関係書類と送金関係書類が要る。2023年分以降、30歳以上70歳未満は3つの例外を除き対象外である。
年の途中で帰国する社員は出国時に年末調整を行う。住民税の納付状況は在留期間の更新にも関わる。
派遣では、年末調整と住民税の特別徴収は派遣元が担う。派遣先は相談を派遣元につなぐ。
淡路グローバルゲートウェイ(AGG)では、日本在住の外国人エンジニアのご紹介と派遣をお引き受けしております。派遣の場合は弊社が雇用主として年末調整や住民税の手続きを担い、受け入れ企業様のご負担を抑えた体制づくりをご支援しております。無料相談フォームからお気軽にお問い合わせください。
監修者
Naoya Mitani /淡路グローバルゲートウェイ(AGG) 事業統括責任者
インドITエンジニアの可能性に着目し、AGGのIT人財部を設立しました。事業統括責任者として、エンジニア派遣事業の戦略立案と実行を担っています。


