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2026.9.27

外国人エンジニアの給与、決め方と相場をどう判断するか──同等額要件・国内統計・手取り【2026年版】

採用戦略

インド在住のエンジニアに内定を出す段階で、給与の欄だけが決まらない。現地の給与水準を聞くと日本の新卒並みに見え、事業部長からは「その額に少し上乗せすれば十分ではないか」と言われる。一方で候補者からは年収ではなく「CTC」と呼ばれる総額で希望が届き、手取りに換算すると話が合わない。人事部長としては、どの数字を基準に決めればよいのか判断できないまま稟議を回すことになる。

問題は、外国人エンジニアの給与を「本人の前職」や「本国の相場」から決めようとする点にある。日本で就労する外国人の給与は、在留資格の審査で日本人との比較が求められる。基準は最初から日本国内にある。本国の給与は、候補者の期待値や受諾の可能性を読む材料にはなるが、金額の根拠にはならない。この順序を取り違えると、在留資格の不許可、入社後の不満、同じ部署の日本人との不公平という3つの問題が同時に起きる。

この記事では、外国人エンジニアの給与を決めるための判断手順を整理します。入管の「日本人と同等額以上」要件の中身、厚生労働省の賃金構造基本統計調査を使った国内相場の読み方、インド現地給与と比べるときの為替と購買力の注意点、額面と手取りの差、住居と渡航費の扱い、入社後の昇給設計までを扱います。

この記事の要点

  • 外国人エンジニアの給与の基準は日本国内の同種業務の日本人の報酬であり、本国の給与水準ではない。技術・人文知識・国際業務では「日本人と同等額以上」が審査要件になる。

  • 入管の審査でいう「報酬」には、通勤手当・扶養手当・住宅手当など実費弁償の性格を持つものは含まれない(課税対象となるものを除く)。手当で総額を膨らませても要件は満たせない。

  • 国内相場は、厚生労働省の賃金構造基本統計調査の職種別・年齢階級別データで確認できる。社内の等級表と突き合わせて位置づけを決める。

  • インドとの比較は、市場為替と購買力平価で約3倍の開きがある。候補者の手取り感覚と送金価値の両方を想定して説明する必要がある。

  • 住居・渡航費は給与と切り分けて設計し、入社後の昇給ルールは日本人と同じ制度に乗せる。例外扱いの給与は定着を損なう。

給与の基準は日本国内にある

外国人エンジニアの給与は、同じ業務に従事する日本人の報酬を基準に決める。これは慣行ではなく、在留資格の要件である。出入国在留管理庁は、技術・人文知識・国際業務の在留資格について「日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を受けること」を上陸許可の基準として示している。

同庁が公表している不許可事例は具体的だ。工学部を卒業した外国人が月額13万5千円でエンジニア業務に従事するとして申請したところ、同時に採用され同種の業務に就く日本人新卒の報酬が月額18万円であったため、同等額以上とは認められず不許可となった。比較の対象は、同じ会社の同じ職務の日本人である。

労働基準法第3条も、国籍を理由とする賃金の差別的取扱いを禁じている。つまり「本国の水準が低いから日本人より低く設定する」という判断は、在留資格と労働法の両面で成り立たない。逆に、本国の水準より大幅に高くなることを理由に日本人より高く設定する必要もない。基準はあくまで社内の等級と職務である。

入管がいう「報酬」に含まれるもの・含まれないもの

同等額以上かどうかを判断する前に、何を「報酬」に数えるかを確定させる。出入国在留管理庁のガイドラインは、報酬を「一定の役務の給付の対価として与えられる反対給付」と定義し、通勤手当、扶養手当、住宅手当等の実費弁償の性格を有するもの(課税対象となるものを除く)は含まないとしている。

項目

技人国の「報酬」

高度専門職の「年収」

設計上の注意

基本給

含む

含む

等級表どおりに設定する

賞与

含む

含む(ポイント計算表に明記)

業績連動部分の説明を用意する

通勤手当

含まない

含まない

総額の比較から外す

住宅手当(実費弁償型)

含まない(課税対象なら例外)

課税対象かどうかで扱いが変わる

支給形態を先に決める

残業代

月ごとに変動し、基準額の比較には使いにくい

申請時の見込み年収には含めにくいとされる

残業ありきの年収で説明しない

実務上の含意は2つある。1つ目は、基本給を低く抑えて住宅手当で補う設計は、入管の比較で不利になり得ることだ。2つ目は、高度専門職を視野に入れるなら、年収の計算方法を早めに確認しておくことだ。出入国在留管理庁のポイント計算表では、高度専門・技術分野は年収300万円以上であることが前提とされ、賞与も年収に含まれる。ポイントの詳細は高度専門職ポイントの考え方で扱っている。

国内相場は賃金構造基本統計調査で確認する

社内に同職種の日本人がいない場合、相場は厚生労働省の賃金構造基本統計調査で確認する。2026年3月に公表された令和7年調査では、一般労働者の賃金(6月分の所定内給与額)は男女計で34万600円、前年比3.1%増だった。学歴別では大学39万6,300円、大学院51万7,400円。新規学卒者は大学26万2,300円、大学院29万9,000円である。

エンジニアの給与を決めるには、職種別の数字を使う。同調査は職種(特掲)別に、所定内給与額、残業代を含む「きまって支給する現金給与額」、前年の年間賞与を公表している。次の表は、産業計・企業規模10人以上・男性の年齢計の数値から、きまって支給する現金給与額の12か月分と年間賞与を足して概算年収を出したものだ。

職種(厚生労働省の区分)

平均年齢

所定内給与額(月)

年間賞与等

概算年収

電気・電子・電気通信技術者

42.3歳

40.6万円

170.7万円

約721万円

機械技術者

42.6歳

38.4万円

158.5万円

約677万円

化学技術者

42.1歳

39.7万円

159.8万円

約685万円

システムコンサルタント・設計者

39.9歳

52.6万円

260.8万円

約933万円

ソフトウェア作成者

38.0歳

36.7万円

114.5万円

約598万円

注意点が3つある。第一に、年齢計は40歳前後の平均であり、採用対象の多くを占める20代後半〜30代前半とは大きくずれる。第二に、概算年収には残業代が含まれる。第三に、企業規模で差が大きい。同じ職種でも1,000人以上の企業と10〜99人の企業では賞与の水準がまったく異なる。

年齢階級で見ると採用時の相場は大きく下がる

採用時の給与は、年齢計ではなく年齢階級別の数字で見る。外国人の専門的・技術的分野の労働者は平均年齢が若い。同調査の在留資格区分別集計では、専門的・技術的分野(特定技能を除く)の平均賃金は31万3,200円、平均年齢32.4歳、勤続3.2年だった。外国人労働者全体では25万4,300円である。

年齢階級(男性)

電気・電子技術者 所定内給与

同 概算年収

ソフトウェア作成者 所定内給与

同 概算年収

25〜29歳

30.3万円

約545万円

30.0万円

約492万円

30〜34歳

36.9万円

約676万円

35.0万円

約569万円

35〜39歳

39.5万円

約731万円

40.5万円

約661万円

電気・電子技術者の場合、25〜29歳と30〜34歳の間で概算年収は130万円ほど開く。経験年数5年と8年の候補者を比べるとき、この差は無視できない。社内の等級表がある会社は、統計を「外部相場の確認」に使い、最終的には社内の同等級の日本人と並べて決める。統計は同等額以上の説明資料としても使える。

インド現地の給与と比べるときの落とし穴

インド在住の候補者の給与を日本円に換算して比べると、判断を誤りやすい。世界銀行のデータでは、2024年の市場為替は1ルピー約1.8円だが、民間消費の購買力平価で換算すると1ルピー約5.0円になる。同じルピーの給与でも、どちらで換算するかで約2.8倍の差が出る。2025年はこの差が約3倍に広がっている。

見方

何がわかるか

使い方

誤りやすい点

市場為替で換算

家族への送金の価値

送金が多い候補者の関心を読む

「日本円で見ると安い」と誤解する

購買力平価で換算

現地での生活水準

候補者の生活実感を推し量る

日本の給与と直接比べてしまう

日本の生活費で評価

日本での実際の暮らし

住居・通勤・食費を具体的に示す

地域差を無視する

社内の日本人と比較

在留資格・公平性の基準

給与額を決める根拠にする

ここを飛ばして交渉に入る

もう1つの落とし穴は表示形式だ。インドでは年収を、雇用主負担の積立金などを含む総額(CTC:Cost to Company)で示す慣行が一般的とされる。日本の「額面年収」とは範囲が違うため、希望額の比較は内訳をそろえてから行う。給与額そのものは表の最下段、社内の日本人との比較で決める。本国給与は、提示額が候補者にどう受け止められるかを予測するためだけに使う。

額面と手取りの差は必ず先に説明する

額面と手取りの差は、内定前に数字で示す。説明が入社後になると「聞いていた額と違う」という不満につながる。本人負担の社会保険料は、2026年度の料率で次のとおりである(40歳未満、協会けんぽの全国平均を用いた場合)。

控除項目

本人負担率(額面比)

根拠

補足

健康保険

約4.95%

協会けんぽ全国平均9.9%の折半

都道府県・健保組合で異なる

厚生年金

9.15%

保険料率18.3%の折半

帰国時は脱退一時金の制度あり

雇用保険

0.5%

一般の事業の労働者負担

2026年度料率

子ども・子育て支援金

約0.115%

協会けんぽ0.23%の折半

2026年4月から開始

所得税・住民税

所得と控除で変動

―

住民税は前年所得で課税

社会保険料だけで額面の約15%が差し引かれる。これに所得税がかかる。住民税は前年の所得に対して課されるため、海外から来日した1年目は原則かからず、2年目から手取りが下がる。この「2年目の手取り減」は、事前に伝えていないと不信を招きやすい。

家族の扱いも手取りに効く。健康保険の被扶養者には2020年4月から国内居住要件が加わり、本国に残した家族は原則として被扶養者になれない。所得税の扶養控除も、国税庁の整理では2023年から30歳以上70歳未満の国外居住親族は原則対象外となり、年38万円以上の送金などを証明した場合に限られる。家族を本国に残す候補者ほど、想定より手取りが少なくなる。

住居と渡航費は給与と切り分けて設計する

住居と渡航費は、給与に含めず別枠で設計したほうが判断しやすい。給与に上乗せすると、比較の基準が曖昧になり、入管の「報酬」の考え方とも整理しにくくなる。

支援の形

税・社会保険の扱い

入管の報酬との関係

向く場面

社宅(会社が借り上げ)

賃貸料相当額の50%以上を本人から徴収すれば給与課税されない(国税庁)

報酬に数えない前提で設計できる

来日直後の住居確保

住宅手当

原則課税

実費弁償型は報酬に含まれない

国内在住者の転職

入国・赴任の渡航費

就職に伴う転居の旅費で通常必要なものは非課税(所得税法)

報酬ではない

海外からの採用

帰国旅費(一時帰国)

支給形態による

報酬ではない

長期定着を狙う場合

来日直後は、賃貸契約の審査や初期費用が本人にとって大きな壁になる。社宅として会社が契約し、家賃の一部を本人負担とする形は、住居の確保と税務の両面で整理しやすい。国税庁は、賃貸料相当額の50%以上を本人から受け取っていれば給与として課税されないとしている。

国内在住の外国人を中途採用する場合は、渡航費は不要で、住居も本人が確保していることが多い。そのぶん給与そのものの比較が前面に出る。弊社が選考の現場で見ている範囲でも、国内在住者は入社までのリードタイムが1〜2か月と短い一方、転職市場で他社の提示額と直接比べられる。国内在住者の採用手続きは日本在住の外国人エンジニアを採用する方法にまとめた。

昇給は日本人と同じ制度に乗せる

入社後の昇給は、日本人と同じ等級・評価制度に乗せる。外国人だけの個別契約で給与を決めると、翌年以降の昇給根拠がなくなり、2〜3年目で他社の提示額に負ける。在留期間の更新でも、雇用条件は改めて審査の対象になる。

賃上げの水準も変わった。厚生労働省の令和7年賃金引上げ等の実態に関する調査では、1人平均賃金の改定率は4.4%、改定額は1万3,601円で、いずれも比較可能な1999年以降で最高だった。賃上げを実施した企業の割合は91.5%である。採用時に相場どおりの額で入れても、社内の昇給が止まれば数年で相場を下回る。

設計上のポイントは3つある。第一に、昇給の基準(評価項目と等級要件)を英語でも文書化する。第二に、日本語能力の向上を昇給や等級の要件に入れるかどうかを採用時に決め、明示する。第三に、在留資格の更新時期と評価のタイミングを把握しておく。定着を左右する要因はインド人エンジニアのオンボーディングと定着で整理している。

給与決定の手順

以上を手順にまとめる。重要なのは、候補者の希望額を聞く前に社内の基準額を決めておくことだ。

  1. 担当する職務を定義し、社内の等級に当てはめる。

  2. 同じ等級・職務の日本人の報酬(基本給+賞与)を確認する。いなければ賃金構造基本統計調査の職種別・年齢階級別の数字で外部相場を確認する。

  3. 基準額を「報酬」の範囲(基本給・賞与)で設定する。手当で補わない。

  4. 住居・渡航費を別枠で決める。

  5. 額面から手取りを試算し、1年目と2年目の差を含めて候補者に示す。

  6. 候補者の希望額(CTC等)と内訳をそろえて比較し、差があれば等級の見直しか見送りを判断する。

採用費用や紹介料の相場は別の論点である。費用の比較は半導体エンジニアの給与と採用コストで扱っている。2026年4月の技術・人文知識・国際業務の運用変更は技人国2026年改正のポイントを参照してほしい。

よくある質問

Q. 外国人エンジニアの給与は日本人より低くしてもよいですか

同じ業務に従事する日本人より低くすることはできません。技術・人文知識・国際業務の在留資格では、日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上であることが基準とされ、出入国在留管理庁は同時採用の日本人新卒より低い月額を理由とした不許可事例を公表しています。労働基準法第3条も国籍を理由とする賃金の差別的取扱いを禁じています。

Q. インドの給与水準を参考にしてよいですか

金額の根拠には使えません。基準は日本国内の同種業務の日本人の報酬です。インドの給与は、提示額が候補者にどう受け止められるかを予測する材料にとどめます。世界銀行のデータでは、2024年の市場為替と購買力平価の間に約2.8倍の開きがあり、どちらで換算するかで印象が大きく変わる点にも注意が必要です。

Q. 住宅手当を出せば基本給を下げられますか

入管の審査では不利になり得ます。出入国在留管理庁のガイドラインは、通勤手当・扶養手当・住宅手当など実費弁償の性格を有するもの(課税対象となるものを除く)を報酬に含めないとしています。基本給と賞与で日本人と同等額以上を確保し、住居支援は社宅などの別枠で設計するほうが整理しやすくなります。

Q. 国内相場はどのデータで確認すればよいですか

厚生労働省の賃金構造基本統計調査が基本です。職種別・年齢階級別・企業規模別に、所定内給与額、残業代を含む月の給与、前年の年間賞与が公表されています。年齢計は40歳前後の平均なので、採用対象の年齢階級の数字を使ってください。社内に同職種の日本人がいる場合は、その報酬との比較が優先です。

Q. 手取りは額面のどのくらいになりますか

社会保険料の本人負担だけで額面の約15%です(2026年度、40歳未満、協会けんぽ全国平均の場合)。これに所得税が加わります。住民税は前年所得に課されるため、海外から来日した1年目は原則かからず、2年目から手取りが下がります。本国に残した家族は健康保険の被扶養者や扶養控除の対象になりにくい点も、事前に伝えておきます。

Q. 渡航費を会社が負担すると給与として課税されますか

就職に伴う転居のための旅行で、通常必要と認められる範囲の旅費は、所得税法上非課税とされています。入管の報酬にも数えません。一方、一時帰国の旅費などは支給の形態によって扱いが変わるため、就業規則や旅費規程に位置づけてから支給するのが安全です。

Q. 昇給はどう設計すべきですか

日本人と同じ等級・評価制度に乗せるのが原則です。個別契約で給与を決めると翌年以降の昇給根拠がなくなります。厚生労働省の調査では令和7年の1人平均賃金の改定率は4.4%で、社内の昇給が止まれば数年で相場を下回ります。評価基準の英文化と、日本語能力を等級要件に入れるかどうかの明示を採用時に済ませておきます。

まとめ

  • 外国人エンジニアの給与の基準は、同じ業務に従事する日本人の報酬である。本国の給与水準は根拠にならない。

  • 入管の「報酬」は基本給と賞与が中心で、実費弁償型の手当は含まれない。手当で総額を合わせる設計は避ける。

  • 国内相場は賃金構造基本統計調査の職種別・年齢階級別で確認する。年齢計の平均値をそのまま採用時の相場にしない。

  • インドとの比較は、市場為替と購買力平価で約3倍の開きがある。換算は候補者の受け止め方を予測するためだけに使う。

  • 額面と手取りの差、2年目の住民税、家族の扶養の扱いは内定前に数字で示す。

  • 住居と渡航費は別枠で設計し、昇給は日本人と同じ制度に乗せる。

淡路グローバルゲートウェイ(AGG)では、外国人エンジニアの受け入れにあたり、職務定義と在留資格の確認、国内在住者を中心とした候補者のご紹介・派遣をご支援しております。給与設定の考え方や候補者への条件説明についてもご相談を承っております。無料相談フォームからお気軽にお問い合わせください。

監修者

Naoya Mitani /淡路グローバルゲートウェイ(AGG) 事業統括責任者

インドITエンジニアの可能性に着目し、AGGのIT人財部を設立しました。事業統括責任者として、エンジニア派遣事業の戦略立案と実行を担っています。

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