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2026.9.29

半導体工場立ち上げの人材計画──新工場の段階別に必要な職種・時期と外国人エンジニアの組み込み方【2026年版】

半導体業界

新工場の建屋が形になり、装置の搬入日程が固まってくると、人事部には「装置立ち上げに間に合うように、プロセスと装置のエンジニアを揃えてほしい」という依頼が届く。ところが、その時点から求人を出しても、国内の経験者はすでに他社の立ち上げに取られている。海外から呼び寄せれば、内定から就業開始まで半年前後かかる。装置は予定どおり届くのに、それを動かす人がいない、という状態が生まれる。

新ファブの人員計画でつまずく原因の多くは、採用の開始が遅いことではなく、「どの段階で、どの職種が、何人、どの雇用形態で必要か」を工程表と結びつけていないことにある。建屋の段階で必要な人と、量産移行の段階で必要な人はまったく違う。全員を正社員で揃えようとすれば、立ち上げのピークに合わせた人数を、ピークが過ぎた後も抱え続けることになる。

この記事では、半導体工場の立ち上げを段階に分け、段階ごとに必要な職種と採用を始める時期、正社員・派遣・装置メーカー支援の組み合わせ方、外国人エンジニアを組み込むときの在留資格とリードタイムの考え方を整理する。特定の企業や計画を前提にせず、国内でファブを立ち上げる企業に共通する論点として扱う。

この記事の要点

  • 新ファブの人員計画は、建屋・設備→装置搬入と立ち上げ→プロセス立ち上げと試作→歩留まり改善と量産移行の4段階に分けて、職種と時期を工程表に結びつける。

  • 人数のピークは装置立ち上げから試作にかけて来る。ここを正社員だけで埋めると、ピーク後に人員が過剰になる。

  • 中核の技術者は正社員、立ち上げ期の厚みは派遣、装置固有の据付・調整は装置メーカー支援、と役割で分けると計画が組みやすい。

  • 海外からの呼び寄せは就業開始まで約6か月を見込む。装置搬入に間に合わせるなら、日本在住で就労可能な在留資格を持つ人を優先する。

  • 外国人エンジニアは、英語で受け入れる部署を先に決めてから採る。部署を決めずに採ると、配属先で言語を理由に立ち往生する。

新ファブの人員計画は「段階×職種×時期」の表で作る

新ファブの人員計画は、人数の総量ではなく、工程表の段階ごとに必要な職種と着任時期を並べた表で作るのが基本である。総量だけで計画すると、装置立ち上げのピークに人が間に合わず、量産移行後に人が余る。

立ち上げの段階は、おおむね次の4つに分けて考えられる。

段階

主な作業

中心になる職種

人数の傾向

1. 建屋・設備

クリーンルーム施工、ユーティリティ(純水・ガス・排気・電力)整備

設備・ユーティリティ技術者、施工管理

少数の中核+施工会社

2. 装置搬入・立ち上げ

装置の据付、配管接続、立ち上げ調整、受け入れ検査

装置エンジニア、設備技術者

急増する

3. プロセス立ち上げ・試作

レシピ構築、条件出し、試作ロットの流動、評価

プロセスエンジニア、解析・検査、インテグレーション

ピーク

4. 歩留まり改善・量産移行

歩留まり改善、SPCによる工程管理、量産体制への移行

歩留まり・データ、プロセス、装置保全

高止まり後に安定

段階ごとの職種を具体的に落とすときは、職種の定義と求人票の書き方をそろえておく必要がある。職種ごとの業務の切り分けは半導体エンジニアの求人票テンプレートを下敷きにするとよい。

段階1(建屋・設備)で先に押さえるべきは中核の少人数である

建屋・設備の段階で採るべきは、立ち上げ全体を設計できる中核の少人数であり、現場の人数ではない。この段階の作業の多くは施工会社と設備メーカーが担うため、自社に必要なのは、ユーティリティの仕様を決め、装置側の要求と突き合わせられる人である。

この段階で見落とされやすいのが、後の段階の採用計画そのものを誰が作るかという点だ。装置の搬入日程が確定するのはこの段階であり、そこから逆算して段階2・3の採用開始日を決める必要がある。建屋が完成してから採用計画を考え始めると、次の段階の採用はほぼ確実に間に合わない。

外国人エンジニアをこの段階で採る意味があるのは、海外のファブで立ち上げを経験した人を中核に据える場合である。ただし、設備・ユーティリティの職種は国内の規制や施工慣行との調整が多く、日本語での業務量が多くなりやすい。英語で担える範囲かどうかは、採用前に業務の中身で確認しておく。

段階2(装置搬入・立ち上げ)は人数が急増し、採用が最も詰まる

装置搬入から立ち上げの段階は、必要人数が急増する一方で、採用のリードタイムが最も問題になる段階である。装置は発注時点で納期が決まっているため、人の着任をそれに合わせなければならない。

この段階の作業は、自社の装置エンジニアと装置メーカーのフィールドエンジニアが分担する。据付と初期調整は装置メーカーが主導し、自社側は受け入れ検査、立ち上げ後の保全体制づくり、プロセス側との条件のすり合わせを担う。装置エンジニアの採用で何を見るかは半導体装置エンジニアの採用で詳しく扱っている。

採用開始の時期は、装置の搬入日から逆算する。海外から呼び寄せる場合、在留資格認定証明書の交付申請の標準処理期間だけで1〜3か月あり(出入国在留管理庁の案内)、候補者の現職の退職、査証申請、渡航、住居の手配を加えると、弊社の実績では内定から就業開始まで約6か月を見込む必要がある。日本在住で就労可能な在留資格を持つ人であれば、弊社の実績では1〜2か月程度で就業開始に至ることが多い。

採用ルート

内定から就業開始までの目安

装置搬入に合わせる場合の採用開始

日本在住・技人国で同種業務へ転職

1〜2か月程度(弊社実績)

搬入の3か月前には選考を始める

日本在住・高度専門職1号から転職

変更許可に1.5か月〜(東京出入国在留管理局の目安)+退職手続き

搬入の4か月前には選考を始める

日本在住・研究や文化活動から技術職へ

在留資格変更許可の審査期間+退職手続き

変更許可の見通しを内定前に確認する

海外からの呼び寄せ

約6か月(弊社実績)

搬入の8か月前には選考を始める

リードタイムの詳しい比較は半導体エンジニア採用のリードタイムで扱っている。

段階3(プロセス立ち上げ・試作)で求められるのは量産現場の経験である

プロセス立ち上げと試作の段階では、プロセスエンジニアに「量産ファブでの実務経験」が強く求められる。条件出しとレシピ構築を、量産を前提とした装置・管理体制の中で進めた経験があるかどうかが、立ち上げの速度を左右するためである。

弊社がご支援する中でも、エッチング・成膜・めっきやWETといったプロセス系の求人では、大学や研究機関のクリーンルームを中心とした経歴の候補者が「量産装置での経験がない」「アカデミック中心で量産現場の経験が確認できない」という理由で見送られる例が見られた。研究の実績が豊富でも、量産ラインの管理手法や装置の運用に触れていないと、立ち上げ期の即戦力とは評価されにくい。

一方、この段階は解析・検査・デバイス評価の業務も一気に増える。これらの職種では、研究機関出身者の経験が業務の中核と直接一致することがある。立ち上げ期の人員計画では、プロセスは量産経験者、解析・検査・評価は業務の一致で選ぶ、というように職種ごとに要件の重みを変えるほうが、母集団を無理なく広げられる。プロセスエンジニアの要件の立て方は半導体プロセスエンジニアの採用で整理している。

段階4(歩留まり改善・量産移行)では職種の比重が変わる

量産移行の段階では、人数の伸びは落ち着くが、職種の比重が「立ち上げる人」から「安定させる人」へ移る。歩留まり改善、SPCによる工程管理、欠陥データの解析、装置の予防保全が中心になる。

この段階で必要になる歩留まり・データ系の人材は、データ解析の技能が工程知識と組み合わさって初めて機能する。データサイエンスの経験だけで採ると、工程の意味が分からず改善につながらない。立ち上げ期に工程を経験した人を、この段階でデータ側に移す配置も検討に値する。

また、段階2・3で厚くした人員をどう着地させるかも、この段階で決まる。立ち上げのピークに合わせて正社員を増やしすぎていると、量産移行後に役割のない人員が生まれる。この問題を避けるには、計画の最初から雇用形態を分けておく必要がある。

正社員・派遣・装置メーカー支援は役割で分ける

立ち上げ期の人員は、中核の技術者を正社員、ピークの厚みを派遣、装置固有の据付・調整を装置メーカー支援、と役割で分けて組むのが現実的である。すべてを一つの手段で賄おうとすると、採用が間に合わないか、ピーク後に人が余るかのどちらかになる。

手段

向いている役割

立ち上がり

留意点

正社員(直接雇用)

量産後も残る中核の技術者、ノウハウの蓄積が必要な職種

採用に時間がかかる

ピーク後の配置まで見通して人数を決める

労働者派遣

立ち上げ期の厚み、職種が明確な技術業務

比較的早い

同一組織単位で3年の期間制限、事前面接などの特定行為はしない(努力義務)

装置メーカーの支援

装置の据付、初期調整、保証期間中の対応

装置納入に連動

契約範囲外の業務は依頼できない

製造業務への労働者派遣は2004年から可能になっており、ファブの技術業務も派遣で受け入れられる。ただし、派遣先が同一の組織単位で同じ派遣労働者を受け入れられる期間は3年が上限であり、これを超えて同じ部署で働いてもらうには直接雇用への切り替えなどを検討する必要がある。立ち上げ期に派遣で受け入れ、量産移行後に一部を直接雇用に切り替える、という設計も取りうる。期間制限の考え方は派遣の期間制限と外国人エンジニアで扱っている。

派遣で受け入れる場合、紹介予定派遣を除き、派遣先は事前面接など派遣労働者を特定する行為をしないよう努めることが労働者派遣法で定められている。職場見学は可能であるため、業務内容の説明と職場の確認は見学の場で行う。弊社では、派遣は3〜6か月ごとの更新で稼働を継続している例が多く、立ち上げの進み具合に応じて人数を調整しやすい。

英語で受け入れる部署を先に作ってから採る

外国人エンジニアを立ち上げ要員に組み込むなら、採用より先に「英語で受け入れる部署」を決めておくべきである。人を採ってから配属先を探すと、配属先の業務が日本語前提で回っていて、能力があっても働けない状態が生まれる。

立ち上げ期は、新しい組織を作る段階であるため、部署単位で使う言語を設計しやすい。既存の組織に外国人を一人ずつ入れるより、立ち上げの時点で英語で回る単位を作るほうが、受け入れの負担は小さい。

観点

英語で受け入れやすい

日本語が求められやすい

業務の相手

海外の装置メーカー、設計・デバイス部門、データ解析

国内の協力会社、現場のオペレーター、行政手続き

文書

装置マニュアル、英語の技術資料

社内の作業標準書、日本語の手順書

職種の例

装置、TCAD・デバイス、歩留まり・データ

解析の一部、CMP、設備・ユーティリティ

弊社のご支援の中でも、英語で受け入れる前提の部署であっても「英語でのコミュニケーションが難しい」という理由で見送られる例や、選考の途中で日本語必須に変わる求人が見られた。部署の方針を決めるだけでなく、どの会議・どの文書が英語になるのかを具体的に決めておく必要がある。部署の作り方は英語で回るエンジニアリングチームの作り方で詳しく扱っている。

外国人エンジニアの在留資格は職種で決まる

立ち上げ要員として外国人を採る場合、在留資格は「技術・人文知識・国際業務」(技人国)が中心になり、対象になるのは設計・プロセス・装置・解析などの技術業務である。製造ラインのオペレーターのような単純作業は技人国の対象にならないため、立ち上げ期の人員計画で職種を切り分けるときに、技術業務と現場作業を混ぜないことが重要になる。

技人国の要件は、業務に関連する科目を専攻して大学等を卒業していること、または相当年数(原則10年)の実務経験があることである。2026年4月15日から、所属機関がカテゴリー3・4に該当し、主に言語能力を用いる対人業務等に従事する場合は、CEFR B2相当の言語能力を証する資料が必要になった。ただし、技人国の全員にJLPT N2が必須になったわけではない。

大学・研究機関で「研究」や「文化活動」の在留資格で在籍している人を技術職として採る場合は、技人国等への在留資格変更許可が必要になる。高度専門職1号の人は所属機関が指定されているため、転職前に在留資格変更許可を受ける必要があり、東京出入国在留管理局では1.5か月以上が目安である。在留資格の全体像は外国人半導体エンジニアの採用ガイドで職種別に整理している。

国の支援策は人員計画の前提として確認しておく

経済産業省は、半導体の国内製造基盤の強化を政策課題に掲げ、生産施設の整備や人材育成に関する支援を公表している。支援の対象や条件は事業ごとに定められているため、自社の計画が該当するかどうかは、経済産業省の公表資料で個別に確認する必要がある。

人員計画の観点で押さえておきたいのは、設備や建屋の計画が支援の枠組みの中で進んでも、人の確保は自社の採用計画に委ねられるという点である。装置が予定どおり揃っても、それを動かす人の着任が遅れれば、生産の開始は遅れる。支援策を前提に計画を立てる場合ほど、採用のリードタイムを保守的に見積もり、段階ごとの採用開始日を工程表に書き込んでおくべきである。

よくある質問

Q. 新工場の採用はいつから始めるべきですか

装置の搬入日から逆算して決めてください。日本在住で就労可能な在留資格を持つ方であれば、弊社の実績では内定から就業開始まで1〜2か月程度ですが、海外から呼び寄せる場合は約6か月を見込む必要があります。選考そのものにも時間がかかるため、呼び寄せを前提にするなら搬入の8か月前には選考を始めておくと安全です。

Q. 立ち上げ要員を全員正社員で採るべきですか

おすすめしません。立ち上げ期は装置立ち上げから試作にかけて人数のピークが来ますが、量産移行後は必要な職種と人数が変わります。量産後も残る中核の技術者は正社員、ピークの厚みは派遣、装置の据付・調整は装置メーカーの支援、というように役割で分けると、ピーク後の人員過剰を避けやすくなります。

Q. 研究機関出身の外国人は立ち上げ要員になりますか

職種によります。プロセス系(エッチング・成膜・めっきやWET)では量産ファブでの実務経験が重視され、研究中心の経歴は見送られやすい傾向があります。一方、解析・検査・デバイス評価・TCADなどは、研究での経験が業務の中核と直接一致することがあります。求人票の業務内容と経歴を1行ずつ照合して判断してください。

Q. 派遣で受け入れる場合、事前に面接できますか

紹介予定派遣を除き、派遣先は事前面接など派遣労働者を特定する行為をしないよう努めることが、労働者派遣法で定められています。職場見学は可能ですので、業務内容の説明や職場の確認は見学の場で行ってください。スキルの確認は、派遣会社が提示するスキルシートと、派遣会社側の面談結果で行う形になります。

Q. 製造ラインのオペレーターを外国人で確保できますか

技術・人文知識・国際業務の在留資格は、設計・プロセス・装置・解析などの技術業務が対象であり、製造ラインのオペレーターのような単純作業は対象になりません。立ち上げ期の人員計画では、技術業務と現場作業を切り分け、外国人エンジニアは技術業務に配置する前提で計画してください。

Q. 英語で受け入れる部署はどう選べばよいですか

業務の相手と扱う文書で選ぶのが基本です。海外の装置メーカーとのやりとりや英語の技術資料が中心の業務は英語で回しやすく、国内の協力会社や日本語の作業標準書が中心の業務は日本語が求められやすくなります。部署の方針を決めた後も、どの会議と文書を英語にするかを具体的に決めておくことが大切です。

Q. 立ち上げが終わった後、派遣の方はどうなりますか

派遣契約の更新をしない、別の工程へ業務を変える、直接雇用に切り替える、などの選択肢があります。同一の組織単位で同じ派遣労働者を受け入れられる期間は3年が上限ですので、長く残ってほしい方については、早めに直接雇用への切り替えを検討してください。

まとめ

  • 新ファブの人員計画は、建屋・設備、装置搬入・立ち上げ、プロセス立ち上げ・試作、歩留まり改善・量産移行の4段階で、職種と着任時期を工程表に結びつけて作る。

  • 人数のピークは装置立ち上げから試作にかけて来る。採用開始は装置の搬入日から逆算し、海外からの呼び寄せは約6か月を見込む。

  • プロセス系は量産ファブでの実務経験が重視される。解析・検査・評価は業務の一致で選ぶなど、職種ごとに要件の重みを変える。

  • 中核は正社員、ピークの厚みは派遣、装置の据付・調整は装置メーカー支援と、役割で手段を分ける。派遣は3年の期間制限と、事前面接などの特定行為をしない努力義務を踏まえる。

  • 外国人エンジニアは、英語で受け入れる部署と、英語にする会議・文書を先に決めてから採る。

  • 技人国の対象は技術業務であり、製造ラインの単純作業は対象外。研究・文化活動や高度専門職からの転職は変更許可の期間を織り込む。

淡路グローバルゲートウェイ(AGG)では、半導体の新工場立ち上げに向けて、日本在住で就労可能な在留資格を持つ外国人エンジニアのご紹介と派遣をお引き受けしております。弊社の派遣はすべて客先拠点に常駐する形でご支援しております。立ち上げの段階ごとの職種の整理や、英語で受け入れる部署の設計からご相談いただけますので、無料相談フォームからお気軽にお問い合わせください。

監修者

Naoya Mitani /淡路グローバルゲートウェイ(AGG) 事業統括責任者

インドITエンジニアの可能性に着目し、AGGのIT人財部を設立しました。事業統括責任者として、エンジニア派遣事業の戦略立案と実行を担っています。

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© 2026 福吉通商株式会社

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