派遣の抵触日と3年ルールを外国人エンジニアで管理するには──期間制限・在留期間・直接雇用切替【2026年版】
制度・法律
派遣で受け入れたインド人エンジニアが3年目に入り、現場は「このまま続けてほしい」と言う。人事部長が派遣元に相談すると「来年の春が抵触日です」と返ってくる。同じ週、本人からは在留期間の更新が近いという連絡が来る。派遣の期限と在留の期限が別々に走っていて、どちらを先に手当てすべきか、社内の誰も整理できていない。
問題は、派遣の期間制限を「3年たったら終わり」という1本の線で理解していることにある。実際には、事業所単位と個人単位という2つの期間制限が別々に動き、派遣元の雇用形態によってはそもそも適用されない。外国人の場合はここに在留期間の更新と、2026年から加わった派遣先の誓約書が重なる。延長の手続きを怠れば、派遣先が労働契約を申し込んだものとみなされる制度もある。
この記事では、外国人エンジニアを派遣で長く受け入れるために、派遣先が押さえるべき期間制限の実務を整理します。2つの期間制限と例外、意見聴取とクーリング期間、契約書類、在留期間との二重管理、そして派遣から直接雇用に切り替える際の手順と注意点までを扱います。
この記事の要点
派遣の期間制限は2本ある。派遣先の事業所単位の3年と、同じ派遣労働者が同じ課で働ける個人単位の3年だ。前者は意見聴取で延長できるが、後者は延長できない。
派遣元に無期雇用される派遣労働者と60歳以上の人などは、期間制限の対象外になる。長く受け入れたいなら、派遣元の雇用形態を最初に確認する。
派遣の空白が3か月以下なら派遣は継続しているとみなされる。クーリング期間を延長手続きの回避に使えば指導の対象になる。
期間制限違反は労働契約申込みみなし制度の対象になる。外国人の場合は在留期間の更新と誓約書の手続きを同じ台帳で管理する。
派遣から直接雇用への切替を禁じる契約は労働者派遣法で原則禁止される。在留面では本人の届出に加え、高度専門職は変更許可が要る。
期間制限は2本あり、延長できるのは事業所単位だけだ
派遣の期間制限は、事業所単位と個人単位の2本で、別々に管理する。厚生労働省の平成27年労働者派遣法改正法の概要によると、2015年9月30日以降に結ばれた派遣契約には、業務の種類を問わず両方の制限がかかる。
事業所単位の制限は、派遣先の同一の事業所が派遣を受け入れられる期間を原則3年とするものだ。起算日は最初に派遣を受け入れた日で、途中で派遣労働者が交代しても起算日は変わらない。3年を超えて受け入れたい場合は、過半数労働組合等への意見聴取で延長できる。
個人単位の制限は、同じ派遣労働者を同じ組織単位に派遣できる期間を3年とするものだ。組織単位とは、いわゆる課やグループで、業務の類似性があり、組織の長が業務配分と労務管理の指揮監督権限を持つ単位として実態で判断される。こちらは延長できない。
区分 | 対象 | 期間 | 延長 | 単位の判断 |
|---|---|---|---|---|
事業所単位 | 派遣先の事業所が受け入れる派遣全体 | 原則3年 | 意見聴取で3年ずつ延長可 | 工場・事務所など場所的・経営的に独立した単位 |
個人単位 | 同じ派遣労働者×同じ組織単位 | 3年 | 不可 | 課・グループなど業務と指揮監督の単位 |
実務上の含意は、同じ人に同じ課で4年目以降も働いてもらう方法は、派遣である限り原則として存在しないということだ。課を変えれば同じ人を受け入れられるが、事業所単位の延長が前提になり、特定目的行為にも注意が要る。業務が変わっても同じ組織単位の中なら期間は通算される。
無期雇用派遣なら期間制限はかからない
派遣元に無期雇用される派遣労働者は、期間制限の対象外になる。長く受け入れたい外国人エンジニアがいるなら、まず派遣元での雇用形態が無期か有期かを確認するのが最短の解決策になる。
厚生労働省の資料では、期間制限の例外として次の5つが挙げられている。
例外 | 内容 | 外国人エンジニアでの当てはまり |
|---|---|---|
無期雇用派遣 | 派遣元に期間の定めなく雇用される派遣労働者 | 最も現実的な選択肢 |
60歳以上 | 60歳以上の派遣労働者 | 該当は少ない |
有期プロジェクト業務 | 事業の開始・転換・拡大・縮小・廃止のための業務で、一定期間内に完了が見込まれるもの | 工場立ち上げ等で検討の余地 |
日数限定業務 | 月の勤務日数が通常の労働者の半分以下かつ10日以下 | フルタイムの技術者には通常当てはまらない |
休業代替 | 産前産後休業・育児休業・介護休業等の代替 | 個別に判断 |
同じ厚生労働省の集計では、令和6年度の派遣労働者約220万人のうち、無期雇用派遣労働者は908,956人で前年度比7.9%増だった。無期雇用派遣は珍しい形態ではない。
ただし、無期雇用であっても在留期間の更新は別に必要だ。期間制限が外れても、在留資格の期限は外れない。また、有期プロジェクト業務の例外は、業務の終期が明確であることが前提になる。量産立ち上げのように完了時期を客観的に示しにくい業務では、この例外に依拠するより、無期雇用派遣で受け入れるほうが確実である。
事業所単位の延長は、抵触日の1か月前までの意見聴取で決まる
事業所単位の期間を延ばすには、抵触日の1か月前までに、事業所の過半数労働組合等から意見を聴く必要がある。抵触日とは、期間制限に抵触する最初の日、つまり3年を超える最初の日を指す。手続きを落とすと、延長はできない。
時期 | 派遣先が行うこと | 根拠・留意点 |
|---|---|---|
派遣契約の締結前 | 派遣元へ抵触日を書面・FAX・電子メールで通知 | 通知がなければ派遣元は契約できない |
受け入れ開始 | 派遣先管理台帳の作成、派遣先責任者の選任 | 台帳は3年間保存 |
抵触日の1か月前まで | 過半数労働組合等に延長する事業所と期間を書面で通知し、意見を聴く | 十分な考慮期間を設け、参考資料を提供する |
異議があった場合 | 抵触日の前日までに延長の理由と期間、異議への対応方針を説明 | 意見を十分尊重するよう努める |
延長後 | 意見聴取の記録を保存し労働者に周知、派遣元へ新しい抵触日を通知 | 記録は延長後の期間終了後3年間保存 |
注意したいのは、過半数代表者の選び方だ。厚生労働省の資料では、過半数代表者は管理監督者でなく、投票や挙手など民主的な方法で選ばれた者でなければならず、使用者が指名した場合は事実上意見聴取が行われていないものと同視され、労働契約申込みみなし制度の対象になるとされる。形だけの手続きは最も危ない。
延長できるのは1回につき3年までで、再延長にはあらためて意見聴取が要る。意見聴取は事業所で受け入れているすべての派遣が対象になり、原則として一律に延長される。
クーリング期間は3か月超。延長手続きの回避には使えない
派遣の終了から次の派遣開始までの空白が3か月以下なら、派遣は継続しているものとみなされる。これがいわゆるクーリング期間で、事業所単位と個人単位の両方に適用される。
言い換えれば、3か月を超える空白を置けば期間は一度リセットされる。だが厚生労働省は、事業所で3年受け入れた後に延長手続きを回避する目的でクーリング期間を空け、実質的に受け入れを継続する行為は法の趣旨に反し指導等の対象になると明示している。個人単位でも、本人が望まないのに3か月空けて同じ課に戻す運用は望ましくないとされる。
外国人エンジニアの場合、3か月の空白はさらに現実的でない。空白期間に派遣元で別の仕事がなければ、本人の在留資格上の活動が途切れる。在留資格に対応する活動を正当な理由なく3か月以上行わない場合は、在留資格の取消しの対象になり得る。クーリング期間は、外国人の長期受け入れの手段として設計に組み込まないほうがよい。
違反すると派遣先が労働契約を申し込んだとみなされる
期間制限に違反して派遣を受け入れると、派遣先がその派遣労働者に労働契約を申し込んだものとみなされる。労働契約申込みみなし制度と呼ばれ、2015年10月1日から施行されている。
厚生労働省の資料では、対象となる違法派遣として、派遣禁止業務への従事、無許可の事業主からの受け入れ、期間制限違反、いわゆる偽装請負が挙げられている。事業所単位と個人単位のどちらの違反も対象になる。みなされる労働条件は、派遣元での労働条件と同一のものである。派遣先が違法派遣に該当することを知らず、かつ過失がなかった場合は除かれる。
外国人の場合、みなし制度で成立した雇用契約は、在留資格上の所属機関の変更を伴う。本人の届出や、在留資格によっては変更許可の手続きが追いつかないまま雇用関係が生じる事態は、派遣先にとっても本人にとっても避けたい。期間の管理を派遣元任せにせず、派遣先自身が抵触日を台帳で持つことが防御になる。
在留期間と派遣期間は、同じ台帳で二重に管理する
外国人エンジニアの派遣では、派遣の期間制限と在留期間の更新を同じ台帳で管理する。2つの期限は独立して動き、どちらか一方だけを見ていると、もう一方が先に切れる。
管理項目 | 期限の決まり方 | 主な手続き | 担当 |
|---|---|---|---|
事業所単位の抵触日 | 最初の派遣受け入れ日から3年 | 1か月前までの意見聴取、派遣元への通知 | 派遣先 |
個人単位の期限 | 同じ組織単位での就業開始から3年 | 延長不可。組織単位の変更か直接雇用を検討 | 派遣先・派遣元 |
派遣契約の更新 | 個別契約ごとの期間 | 個別契約書・就業条件明示の更新 | 派遣元・派遣先 |
在留期間 | 在留カードの満了日 | 満了のおおむね3か月前から更新申請 | 本人・派遣元 |
誓約書 | 在留資格認定・変更・取得の申請時 | 派遣先用の誓約書に署名 | 派遣先 |
出入国在留管理庁によると、在留期間が6か月以上ある人の更新申請は、在留期間の満了するおおむね3か月前から受け付けられる。2026年3月9日以降は、技術・人文知識・国際業務で派遣就労する人の在留資格認定、変更、取得の申請に派遣先用の誓約書が求められ、労働者派遣個別契約書の写しで派遣先での活動内容と期間を示すことになった。個別契約書の業務内容と派遣期間は、在留審査の材料でもある。制度の全体像は技人国の2026年改正にまとめた。
個別契約書には、業務内容、就業する組織単位、就業場所、指揮命令者、派遣期間、就業日と就業時間、安全衛生、苦情処理、派遣契約の解除に関する措置、無期雇用派遣労働者や60歳以上に限るか否かなどを記載する。派遣元は派遣労働者に対し、就業条件とあわせて抵触日と、抵触日を超えた受け入れがみなし制度の対象になることを明示しなければならない。外国人には、この明示を本人が理解できる言語で補足するのが実務的だ。
派遣から直接雇用への切替は、契約で妨げられない
派遣先が派遣労働者を直接雇用することを禁じる契約は、労働者派遣法で原則として禁止されている。厚生労働省の業務取扱要領では、派遣元は正当な理由なく、派遣終了後に派遣先が派遣労働者を雇用することを禁ずる契約を結んではならないとされ、「派遣終了後1年間は雇用しない」といった契約は原則として締結できないとされる。
一方で、手数料の扱いは契約内容で変わる。厚生労働省の改正労働者派遣法Q&Aでは、雇用安定措置としての派遣先への直接雇用の依頼は職業安定法上の職業紹介ではないため、派遣先に紹介手数料の支払い義務はないとされる。紹介予定派遣として受け入れていた場合や、別途職業紹介契約を結んだ場合は、紹介手数料の定めに従う。契約書の条項を切替前に確認しておきたい。
派遣先には、直接雇用に関する義務もある。派遣元から雇用安定措置として直接雇用の依頼を受け、その業務に人を雇い入れようとする場合、同じ組織単位で1年以上従事した有期雇用の派遣労働者を遅滞なく雇い入れるよう努めなければならない。同じ事業所で1年以上働く派遣労働者には、正社員を募集する際にその情報を周知する義務がある。
手順 | 内容 | 注意点 |
|---|---|---|
1 | 派遣元と切替時期・手数料の有無を確認 | 派遣契約・紹介契約の条項を確認 |
2 | 本人の意向と在留資格を確認 | 在留カードの資格・期限を確認 |
3 | 労働条件の提示と雇用契約 | 在留資格の活動範囲に合う業務内容にする |
4 | 在留手続き | 技人国は本人が14日以内に契約機関の届出。高度専門職は入社前に変更許可 |
5 | 雇用関係の届出 | 外国人雇用状況の届出、社会保険・雇用保険の手続き |
在留面では、在留資格によって手続きが異なる。弊社が行政書士に確認した実務上の回答では、技術・人文知識・国際業務の人は在留資格を変えずに転職でき、就労資格証明書は入社後の任意の申請で1〜3か月かかる。高度専門職1号ロは所属機関と結びついているため、切替前に在留資格変更許可が必要で、東京入管で1.5か月以上かかる。国内での転職手続きは日本在住の外国人エンジニアを採用する方法で詳しく扱っている。
長期受け入れの設計は、最初の契約で決まる
外国人エンジニアを長く受け入れたいなら、期間制限への対処は受け入れ開始時に決める。3年目に気づいてからでは、選択肢が限られる。
最初に決めるのは3点だ。第1に、派遣元での雇用形態を無期にできるか。無期雇用派遣なら個人単位の3年は問題にならない。第2に、3年を超えて同じ人に同じ業務を任せる見込みがあるなら、直接雇用への切替を前提にするか。その場合は紹介予定派遣や、切替時の手数料条項を最初の契約に入れる。第3に、在留期間と抵触日を同じ台帳に載せ、更新時期がどちらも見える状態にする。
派遣と直接雇用のどちらを基本にするかの比較は外国人エンジニア採用の3つの方法で整理している。受け入れ後の定着策はインド人エンジニアの受け入れと定着で扱った。
よくある質問
Q. 外国人の派遣労働者にも3年ルールは適用されますか
適用されます。労働者派遣法の期間制限は国籍を問わず、事業所単位の原則3年と、同じ派遣労働者が同じ組織単位で働ける個人単位の3年の2本がかかります。例外も日本人と同じで、派遣元に無期雇用される人や60歳以上の人などは対象外です。外国人の場合は、これとは別に在留期間の更新が必要なため、2つの期限を同じ台帳で管理してください。
Q. 抵触日とは何ですか。誰が通知しますか
抵触日は、期間制限に抵触する最初の日、つまり3年を超える最初の日です。事業所単位の抵触日は、派遣先が労働者派遣契約を結ぶ前に、書面、FAX、電子メールのいずれかで派遣元に通知しなければならず、通知がなければ派遣元は契約を結べません。延長した場合も速やかに新しい抵触日を通知します。派遣元は派遣労働者に抵触日を明示する義務を負います。
Q. 同じ人に4年目以降も同じ部署で働いてもらう方法はありますか
有期雇用の派遣である限り、同じ組織単位で3年を超えて受け入れることはできず、延長の手続きもありません。方法は3つです。派遣元がその人を無期雇用に切り替える、自社で直接雇用に切り替える、組織単位を変えて受け入れるのいずれかです。3つ目は事業所単位の延長が前提で、特定目的行為にも注意が要ります。無期雇用派遣か直接雇用が現実的です。
Q. 3か月空ければ期間はリセットされますか
形式上は、派遣の空白が3か月を超えれば継続とはみなされません。ただし厚生労働省は、延長手続きを回避する目的で空白を置き、実質的に受け入れを続ける行為は法の趣旨に反し指導等の対象になると明示しています。外国人の場合、空白期間に就労しないと在留資格の活動が途切れる問題も生じるため、クーリング期間を長期受け入れの手段とすることは勧められません。
Q. 期間制限に違反するとどうなりますか
派遣先が、その派遣労働者に対して派遣元での労働条件と同じ条件で労働契約を申し込んだものとみなされます。労働契約申込みみなし制度といい、2015年10月1日から施行されています。事業所単位と個人単位のどちらの違反も対象で、過半数代表者を使用者が指名するなど意見聴取が実質的に行われていない場合も含まれます。違法と知らず過失もなかった場合は除かれます。
Q. 派遣元との契約で「派遣終了後の直接雇用禁止」と書かれていたら従う必要がありますか
労働者派遣法は、派遣元が正当な理由なく、派遣先が派遣終了後に派遣労働者を雇用することを禁じる契約を結ぶことを禁止しています。厚生労働省の業務取扱要領でも「派遣終了後1年間は雇用しない」といった契約は原則として締結できないとされます。ただし紹介予定派遣や職業紹介契約に基づく紹介手数料の定めは別の問題です。条項の性質を切替前に派遣元と確認してください。
Q. 派遣から直接雇用に切り替えると、在留資格の手続きは必要ですか
在留資格によって異なります。技術・人文知識・国際業務の人は在留資格を変えずに転職でき、本人が14日以内に契約機関に関する届出を行います。就労資格証明書の取得は任意ですが、次の更新を見据えて取得しておくと安心です。高度専門職1号ロの人は所属機関が指定されているため、切替前に在留資格変更許可が必要です。業務内容が在留資格の範囲に収まるかも確認します。
まとめ
期間制限は事業所単位の3年と個人単位の3年の2本で、延長できるのは事業所単位だけだ。
派遣元に無期雇用される派遣労働者は期間制限の対象外になる。長期受け入れの第一の選択肢として確認する。
事業所単位の延長は抵触日の1か月前までの意見聴取で決まる。過半数代表者の選出方法を誤るとみなし制度の対象になる。
クーリング期間を延長手続きの回避に使えば指導の対象になる。外国人では在留上の空白も生じる。
在留期間の更新、誓約書、抵触日を同じ台帳で管理する。個別契約書の業務内容は在留審査の材料でもある。
派遣から直接雇用への切替を禁じる契約は原則禁止だ。在留資格ごとの手続きと手数料条項を切替前に確認する。
淡路グローバルゲートウェイ(AGG)では、外国人エンジニアの派遣受け入れにあたり、抵触日と在留期間の一体管理、派遣先の誓約書を含む在留手続き、直接雇用への切替までをご支援しております。長期の受け入れを前提とした契約設計からご相談いただけます。無料相談フォームからお気軽にお問い合わせください。
監修者
Naoya Mitani /淡路グローバルゲートウェイ(AGG) 事業統括責任者
インドITエンジニアの可能性に着目し、AGGのIT人財部を設立しました。事業統括責任者として、エンジニア派遣事業の戦略立案と実行を担っています。


