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2026.9.27

半導体装置エンジニアの採用はどう進めるか──装置メーカーFEとファブ保全の要件・供給源・派遣【2026年版】

採用戦略

新しいラインの装置搬入が来期に決まる。製造部長からは「装置保全を夜勤込みで6人」、装置メーカーの営業からは「据付後の立ち上げ要員はこちらでも足りていない」と聞かされる。人事部が「半導体装置エンジニア」で求人を出すと、自動車工場の設備保全、産業機械のサービスマン、研究所の装置担当と、経歴のまったく違う応募が並ぶ。誰が合うのかを、人事部だけでは判断できない。

問題は、「装置エンジニア」という言葉が少なくとも3つの仕事を指していることにある。装置メーカーの社員として顧客のファブで装置を立ち上げる仕事、ファブの社員として装置を毎日止めずに回す仕事、ファブの電力・ガス・純水などの設備を守る仕事だ。求められる経験も勤務形態も違う。ここを分けずに募集すると、選考の手間が増えるだけで充足しない。

この記事では、半導体装置エンジニアの採用を、装置メーカー側とファブ側の両方から、採用する企業が意思決定に使える形で整理します。職種の切り分け、装置別の経験とトラブル対応のレベル、シフトとクリーンルームの要件、国内他業種と外国人の供給源、そして派遣・請負・直接雇用の線引きまでを扱います。

この記事の要点

  • 装置エンジニアの需要は装置販売とともに伸びる。SEAJの予測では日本市場の装置販売高は2028年度に初めて2兆円を超える。

  • 「装置エンジニア」は装置メーカーのフィールドエンジニア、ファブの装置保全、ファブの設備エンジニアの3つに分けて募集する。

  • 経験の見極めは「どの種類の装置を、どのレベルまで触ったか」で行う。定期保全の経験と、原因を切り分けて直した経験は別に確認する。

  • 供給源は国内の他業種からの転身と外国人の2つである。どちらも半導体固有の部分は受け入れ後に補う前提で設計する。

  • 顧客のファブで指揮命令を受けて働くなら派遣、自社の管理で作業するなら請負である。契約形式ではなく実態で判断される。

装置エンジニアの需要は装置販売とともに伸びる

装置エンジニアの需要は、装置の販売台数と稼働台数に比例して増える。据付と立ち上げに人が要り、稼働後は定期保全と故障対応に人が要るためである。

日本半導体製造装置協会(SEAJ)が2026年7月に公表した需要予測は、その規模を示している。

区分

2025年度(実績)

2026年度(予測)

2028年度(予測)

日本製装置の販売高

5兆1,986億円

6兆5,502億円(26%増)

7兆7,718億円

日本市場の販売高

1兆4,395億円

1兆5,835億円(10%増)

2兆2,763億円

日本製装置の販売高は日系企業が国内外に販売した装置の合計、日本市場の販売高は国内向けに販売された装置の合計である。同協会は日本市場が2兆円を超えるのは初めてとし、2nmロジックの量産体制の整備やメモリー投資の拡大を要因に挙げる。国内に入る装置が増えれば、国内で装置を立ち上げ、保全する人も増やさなければならない。

労働市場の数字も同じ方向を示す。厚生労働省の一般職業紹介状況によると、2026年7月の常用(パート含む)の有効求人倍率は職業計1.05倍に対し、機械整備・修理従事者は3.88倍だった。ハローワーク経由の統計で半導体に限った数字ではないが、装置を保全する人材の取り合いが全産業で起きていることは読み取れる。

同じ「装置エンジニア」でも3つの仕事がある

採用の最初の判断は、どの装置エンジニアを採るのかを決めることである。雇用主、勤務場所、成果の測り方がそれぞれ違う。

職種

雇用主

主な業務

成果の測り方

勤務形態の特徴

フィールドエンジニア

装置メーカー

顧客ファブでの据付、立ち上げ、保守、故障対応

立ち上げ期間、顧客装置の稼働率

顧客先への常駐・出張。立ち上げ期は長時間になりやすい

アプリケーションエンジニア

装置メーカー

顧客のプロセス条件に合わせて装置性能を出す

顧客の条件達成、受注

顧客折衝の比重が高い

装置保全エンジニア

ファブ

定期保全、故障対応、部品管理、改善

装置稼働率、故障停止時間

24時間稼働に合わせたシフト勤務が多い

設備エンジニア

ファブ

電力、特殊ガス、純水、排気、空調の運用と保全

設備停止ゼロ、安全

設備の監視と緊急対応を含む

フィールドエンジニアとファブの装置保全は、同じ装置を触る点で似ている。違うのは、前者が1つの装置機種を深く知り、複数の顧客を渡り歩くのに対し、後者は1つのファブで複数メーカーの装置を横断的に扱う点だ。経験の幅と深さの方向が逆になる。職種全体の地図は半導体エンジニアの職種一覧を参照してほしい。

経験は「どの装置を、どのレベルまで触ったか」で見る

装置エンジニアの経歴で最初に確認するのは、装置の種類と、その装置に対して担った作業のレベルである。「半導体装置の保全経験5年」という一行では判断できない。

装置の種類は、エッチング、成膜、露光、洗浄、イオン注入、検査・計測、搬送系などで分かれる。真空、プラズマ、高周波電源、特殊ガス、薬液のどれを扱ったかで、身についている知識が違う。求人票には対象とする装置の種類を書き、応募者には装置の種類と台数、担当した年数を書いてもらう。

作業のレベルは次のように分けると、面接での確認がしやすくなる。

レベル

作業の内容

確認の仕方

1

手順書どおりの定期保全(部品交換、清掃、点検)

担当した装置と保全周期、手順書の有無

2

アラーム対応と一次切り分け

よく出たアラームと、その時の判断の流れ

3

故障原因の特定と修理、再発防止

自分で原因を特定した事例を1件、具体的に説明できるか

4

立ち上げ、改造、保全手順の作成

作成した手順書や改善の成果

定期保全の経験が長くても、レベル3の事例を語れない人は少なくない。逆に、他業種の設備保全でレベル3・4を経験した人は、装置の種類が違っても立ち上がりが早い。どのレベルの人を何人採るかを、求人ごとに決めておきたい。

シフト、クリーンルーム、安全教育は求人票の段階で書く

ファブの装置保全と設備の仕事は、24時間稼働に合わせた勤務になることが多い。勤務形態と作業環境の条件は、技術要件と同じく求人票に書く項目である。

深夜業を含む業務に常時従事させる場合、労働安全衛生規則第45条により、配置替えの際と6か月以内ごとに1回、健康診断を行う必要がある。夜勤込みのシフトであることを後から伝えると、内定辞退や早期離職につながる。勤務パターン、夜勤の頻度、休日の決まり方は、求人票の時点で明示する。

作業上の教育も確認しておく。装置の電源系の修理に就かせる場合、低圧の充電電路の修理等の業務には労働安全衛生規則第36条に基づく特別教育が必要になる。特殊ガスや薬液を扱う装置では、ファブごとの安全規程による教育も加わる。クリーンルームでの着衣手順や持ち込み制限も、入場前の教育項目になる。

外国人を受け入れる場合は、厚生労働省の外国人雇用管理指針が、安全衛生教育を母国語や視聴覚教材を用いるなど本人が内容を理解できる方法で行うことを求めている。装置の危険性や取扱方法が確実に理解されるよう留意すること、とも明記されている。英語の教材を持たない職場では、受け入れ前に準備が要る。

供給源は国内の他業種と外国人の2つである

半導体装置の経験者だけで必要人数を満たすのは難しい。現実的な供給源は、国内の他業種からの転身と外国人材の2つである。

供給源

強み

受け入れ後に補うもの

自動車・電機工場の設備保全

24時間ラインの保全経験、シフト勤務への慣れ

真空・プラズマ・特殊ガスの知識、クリーンルームの作法

産業機械・FA機器のフィールドエンジニア

顧客先での故障対応、機械・電気・制御の基礎

半導体装置固有の構造とプロセスへの影響

医療機器・分析機器のサービスエンジニア

精密機器の保守、高い清浄度への慣れ

装置の規模と稼働率への要求水準

外国人(海外の半導体・電子部品工場の保全経験者)

同種装置の経験、英語での技術文書の読解

日本のファブの安全規程、日本語での現場連絡

外国人(機械・電気系の学位を持つ技術者)

基礎学力、英語

実機の経験

国内在住の外国人で半導体の経験を持つ人材は、まだ多くない。淡路グローバルゲートウェイの調査では、日本在住のインド国籍で半導体分野の技術者を約180回の検索で探し、実在を確認できたのは11名だった。公開情報で確認できた人数であり、実際の在住者数ではない点に注意が要る。それでも、国内在住の経験者だけを待つ採用計画が成り立ちにくいことは分かる。

国内他業種からの転身者と外国人のどちらを採る場合も、半導体固有の知識は受け入れ後に補う前提で、教育の期間と担当者を先に決めておく。

業務の照合と稼働開始時期は、装置職でも効く

装置エンジニアの選考でも、職種名ではなく業務内容の一致が見られる。弊社が半導体メーカーの量産立ち上げ案件に行った派遣提案では、職種名が近くても業務がずれた候補者は見送られた。求人票の業務内容を1行ずつ経歴と照合し、過半が直接当たるかで判断するのが有効である。

量産立ち上げ期の求人では、着任時期も同じ重さで見られる。同じ案件群では、海外在住でビザの取得に約6か月かかる候補者の提案が「開始日が先付」で見送られ、「3か月以上は待てない」と明言された求人もあった。装置の搬入日が決まっている以上、立ち上げ要員の着任は後ろにずらせない。

日本在住で就労可能な在留資格を持つ人であれば、着任までの目安は1〜2か月である。技術・人文知識・国際業務であれば在留資格はそのままで転職できるが、高度専門職1号ロは転職前に在留資格変更許可が必要で、東京入管では1.5か月以上かかる。手続きの詳細はすでに日本にいる外国人エンジニアの中途採用で扱っている。

英語で回る装置の仕事と、回らない仕事がある

装置エンジニアのうち、英語で仕事が回りやすいのは装置メーカーのフィールドエンジニアである。装置の技術文書や海外の開発部門とのやり取りが英語で行われることが多く、海外の顧客を持つ企業ほど英語の比重が上がる。

ファブの装置保全と設備は事情が違う。夜間の異常連絡、他部署との停止調整、安全規程の運用は、その職場の言語で行われる。弊社の提案経験でも、英語で受け入れる部署は一部に限られ、英語可とされた部署でも「英語でのコミュニケーションが難しい」という理由で見送られた例がある。

外国人を装置保全に受け入れるなら、どの業務を英語で回し、どこに日本語が要るかを受け入れる現場と合意しておく。日本語要件の決め方は外国人エンジニアに必要な日本語レベルで整理している。

派遣・請負・直接雇用の線引き

装置エンジニアを外部から受け入れる場合、契約の形は派遣か請負のどちらかになる。どちらに当たるかは、契約の名前ではなく、誰が業務の指示を出しているかという実態で判断される。

形態

業務の指示を出す者

向く場面

注意点

直接雇用

自社

長期にわたり装置の知見を社内に蓄積したい

採用に時間がかかり、固定費になる

労働者派遣

派遣先(受け入れるファブ)

立ち上げ期など人数が変動する時期に、自社の指示で働く人が要る

有期雇用の派遣労働者は同一組織単位で原則3年まで。事前面接による特定は避ける

請負・保守契約

受託する会社(装置メーカー等)

装置メーカーが自社の管理で保守を行う

ファブの社員が直接指示を出すと偽装請負になりうる

厚生労働省の「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準」は、請負であるためには、受託した会社が自社の労働者に業務遂行の指示その他の管理を自ら行うことが必要だとしている。装置メーカーのフィールドエンジニアに、ファブの保全課長が日々の作業指示を出している状態は、この基準に照らして問題になりうる。

派遣には、契約の更新ごとに体制を見直せる変動費化と、自社の正社員採用の基準を満たさなくても受け入れられるという2つの価値がある。装置の搬入から量産安定までの期間だけ人数を厚くする使い方と相性がよい。なお、ファブ内の装置保全は建設業務とは別に整理されるが、装置の据付に伴う配管や電気の工事が業務に含まれる場合は、その部分が派遣禁止の建設業務に当たらないかを確認する。技人国の外国人を派遣で受け入れる場合の注意点とあわせて、建設分野の派遣禁止範囲と技人国派遣の注意点で整理している。

よくある質問

Q. 装置メーカーのフィールドエンジニアとファブの装置保全は、同じ人材を狙えますか。

重なる部分はありますが、同じ人材ではありません。フィールドエンジニアは1つの装置機種を深く知り、複数の顧客ファブを担当します。ファブの装置保全は1つのファブで複数メーカーの装置を横断的に扱い、シフト勤務で稼働率を守ります。どちらの経験者も相手側に転じることはできますが、経験の深さと幅の方向が逆になるため、受け入れ後に補う内容を先に決めておく必要があります。

Q. 半導体装置の経験がない人でも、装置エンジニアとして採用できますか。

職種と作業レベルによっては可能です。自動車や電機工場の設備保全、産業機械のフィールドエンジニアで、故障原因の特定と修理まで担った経験がある人は、装置の種類が違っても立ち上がりが早い傾向があります。一方、真空、プラズマ、特殊ガスといった半導体装置固有の知識と、クリーンルームでの作法は受け入れ後に補う必要があります。教育の期間と担当者を採用前に決めておくことが重要です。

Q. 装置保全の経験年数は、どう評価すればよいですか。

年数よりも、担った作業のレベルで評価するのが有効です。手順書どおりの定期保全、アラーム対応と一次切り分け、故障原因の特定と再発防止、立ち上げや手順書の作成と段階を分け、面接では自分で原因を特定した事例を1件具体的に説明してもらいます。定期保全の経験が長くても原因特定の事例を語れない人は少なくありません。求人ごとに、どのレベルの人を何人採るかを決めておきます。

Q. 夜勤のある装置保全に外国人を受け入れる際の注意点は何ですか。

労働条件と安全の両面で準備が要ります。深夜業を含む業務に常時従事させる場合は、労働安全衛生規則第45条により配置替えの際と6か月以内ごとに1回の健康診断が必要です。安全衛生教育は、厚生労働省の外国人雇用管理指針が母国語や視聴覚教材を用いるなど本人が理解できる方法で行うことを求めています。夜間の異常連絡を誰がどの言語で受けるかも、受け入れ前に決めておくべき事項です。

Q. 海外在住の装置エンジニアを、立ち上げ要員として呼べますか。

装置の搬入日が決まっている立ち上げ要員には、時間の面で合わないことが多いのが実情です。海外在住の場合、在留資格認定証明書の審査と渡航準備で着任まで約6か月かかることが多く、弊社の提案でも「開始日が先付」を理由に見送られた例があります。立ち上げ後の定期保全や、着任時期に余裕のある求人であれば、開始可能日を明記したうえで候補になります。

Q. 装置メーカーの保守要員に、ファブの社員が直接指示を出してもよいですか。

保守契約が請負の形であれば、日々の作業指示は受託した装置メーカーが自ら行う必要があります。厚生労働省の区分基準では、請負であるためには受託会社が業務遂行の指示その他の管理を自ら行うことが求められ、派遣か請負かは契約の名前ではなく実態で判断されます。ファブ側が直接指示を出して作業させたいのであれば、労働者派遣として契約を整えるのが適切です。

Q. 派遣で受け入れた装置エンジニアは、どのくらいの期間受け入れられますか。

有期雇用の派遣労働者は、同じ組織単位で原則3年までです。事業所単位でも受け入れ期間は原則3年で、延長するには過半数労働組合等からの意見聴取が必要です。装置の搬入から量産安定までの期間に人数を厚くする使い方であれば、この期間内に収まることが多いでしょう。長期にわたり装置の知見を社内に蓄積したい場合は、直接雇用への切り替えも選択肢になります。

まとめ

  • 装置エンジニアの需要は装置販売とともに伸びる。SEAJの予測では日本市場の装置販売高は2028年度に初めて2兆円を超える。

  • 「装置エンジニア」はフィールドエンジニア、ファブの装置保全、ファブの設備エンジニアに分けて募集する。経験の深さと幅の方向が違う。

  • 経歴は装置の種類と作業のレベルで見る。定期保全の経験と、原因を特定して直した経験は別に確認する。

  • シフト、深夜業の健康診断、特別教育、クリーンルームの作法は求人票の段階で明示する。外国人には理解できる方法で安全教育を行う。

  • 供給源は国内の他業種と外国人の2つである。半導体固有の部分を受け入れ後に補う教育計画を先に決める。

  • 外部から受け入れる場合は、誰が指示を出すかで派遣と請負が分かれる。契約形式ではなく実態で判断される。

淡路グローバルゲートウェイ(AGG)では、半導体分野の装置・設備領域の外国人エンジニアの派遣と紹介をご支援しております。求人の業務内容と候補者の経歴を1行ずつ照合し、着任可能時期を明記してご提案いたします。無料相談フォームからお気軽にお問い合わせください。

監修者

Naoya Mitani /淡路グローバルゲートウェイ(AGG) 事業統括責任者

インドITエンジニアの可能性に着目し、AGGのIT人財部を設立しました。事業統括責任者として、エンジニア派遣事業の戦略立案と実行を担っています。

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© 2026 福吉通商株式会社

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