外国人エンジニアを英語で受け入れる部署はどう作るか──英語で回る業務・回らない業務と最小限の英語化【2026年版】
マネジメント
経営会議で「設計部門は英語で外国人エンジニアを受け入れる」と決まる。人事部は求人票の日本語要件を外し、英語可として募集を始める。3か月後、内定者が着任すると、部署の定例会議は日本語のまま、安全教育の資料も日本語、評価シートも日本語だった。現場の課長は「英語で説明する時間がない」と言い、内定者は2週間で孤立する。決めたのは「英語で受け入れる」という方針だけで、何を英語にするかは誰も決めていなかった。
問題は、英語での受け入れを求人票の要件変更だと捉えていることにある。実際には、業務の切り分け、文書の整備、安全教育の方法、評価の運用、在留資格上の職務内容の書き方まで、部署の設計を変える判断である。ここを飛ばすと、英語可の求人で採った人が英語で働けない職場に着任することになる。
この記事では、外国人エンジニアを英語で受け入れる部署を作るための経営・人事の判断を整理します。英語で回る業務と回らない業務の線引き、英語可でも見送りが起きた事例、労働条件・安全教育・評価の英語化の最小セット、2026年4月の技人国改正との関係、立ち上げの順序までを扱います。
この記事の要点
英語での受け入れは全社方針ではなく、部署単位で決める。英語で回る業務が部署の業務の中核を占めるかが判断基準になる。
設計・検証・シミュレーション・データ解析は英語で回りやすい。現場の保全・安全・日本語での顧客対応は回りにくい。
英語可の部署でも「英語でのコミュニケーションが難しい」で見送られた例や、選考途中で日本語必須に変わった求人がある。英語可の判断は受け入れる現場が持つ。
英語化の最小セットは、労働条件、安全衛生教育、評価基準、業務手順の4つである。厚生労働省の外国人雇用管理指針も文書の多言語化や理解できる方法での教育を求めている。
2026年4月の技人国改正で日本語能力の立証が必要になるのは、カテゴリー3・4の企業が対人業務の人を採る場合に限られる。技術職の多くは対象外である。
英語で受け入れるかは、部署単位で決める経営判断である
英語での受け入れは、全社で一律に決めるものではない。部署ごとに、業務の中核が英語で回るかどうかで決める。
日本語要件を外す効果は大きい。淡路グローバルゲートウェイが技術者1,435名を対象に行った調査では、日本語能力試験の級を公開情報で確認できたのは196名、13.7%だった。これは実際の日本語能力ではなく、公開情報での可視性を測った数字である。それでも、日本語の級を必須にすると、選考の入口で候補者の多くを見えなくすることは読み取れる。調査の詳細はアジア技術人材の日本語可視性調査で公開している。
外国人材の母集団自体も伸びている。厚生労働省の「外国人雇用状況」の届出状況によると、2025年10月末時点の外国人労働者数は2,571,037人で過去最高となり、専門的・技術的分野の在留資格は865,588人で前年比20.4%増だった。
一方で、日本語要件を外した部署が英語で回らなければ、採った人は働けない。だから判断の単位は部署になる。全社で英語化するのでも、求人票だけ英語可にするのでもなく、英語で回る業務が中核を占める部署を選び、その部署の運用を変える。
英語で回る業務と、回らない業務を分ける
英語で回りやすいのは、成果物で評価でき、やり取りの相手が限られる業務である。回りにくいのは、現場で即時に判断し、日本語を使う多数の相手と連携する業務である。
業務 | 英語で回るか | 理由 | 英語で回すための条件 |
|---|---|---|---|
回路設計・検証 | 回りやすい | ツールと仕様書が英語中心。成果物で評価できる | 仕様書・レビュー記録を英語で残す |
TCAD・シミュレーション | 回りやすい | 入出力がデータで、報告の相手が限られる | 報告の相手が英語で読める |
データ解析・歩留まり解析 | 回りやすい | 成果物がデータと報告書 | 現場からのデータ受け渡しの手順を決める |
装置メーカーのフィールドエンジニア | 条件次第 | 技術文書は英語が多いが、国内顧客とのやり取りは日本語 | 顧客窓口を別の担当者が持つ |
ファブの装置保全・プロセス | 回りにくい | 夜間の異常連絡や他部署との調整が日本語で即時に行われる | 英語で完結する業務範囲を切り出せるか |
安全管理・現場監督 | 回りにくい | 緊急時の指示を多数の作業者に伝える | 日本語が前提 |
国内顧客への技術営業・サポート | 回りにくい | 顧客側の言語が日本語 | 日本語が前提 |
表の「条件次第」と「回りにくい」の業務を、英語で受け入れる部署に混ぜないことが最初の設計になる。業務を切り出せないなら、その部署は日本語での受け入れを前提に、日本語レベルを決めて採用する。日本語レベルの決め方は外国人エンジニアに必要な日本語レベルで整理している。
英語可でも見送りは起きる
求人票に英語可と書いても、それだけで英語人材が通るわけではない。弊社が半導体メーカーに行った派遣提案では、英語で受け入れる部署は一部に限られていた。英語可とされた部署でも「英語でのコミュニケーションが難しい」という理由で見送られた例がある。選考の途中で、求人の条件が日本語必須に変わったこともあった。
原因は、英語可の判断が人事部の方針として出され、受け入れる現場の運用と一致していないことにある。
起きること | 原因 | 事前に決めること |
|---|---|---|
英語可の求人で、英語を理由に見送られる | 面接官の英語の期待水準と、候補者の英語力が合わない | 業務で必要な英語の場面と水準を、面接官と人事で合意する |
選考途中で日本語必須に変わる | 現場の運用が日本語前提のまま変わっていない | 受け入れ部署の会議・文書・連絡の言語を先に決める |
着任後に孤立する | 英語で相談できる相手がいない | 英語で業務を教えられる担当者を着任前に決める |
在留資格の審査で職務内容を問われる | 職務内容書と実際の業務が一致していない | 英語で行う業務を行単位で書き、実態と一致させる |
英語力の確認も、面接で実際に行う必要がある。英語可の求人でも、書類上の英語力と面接での英語の運用力は一致しないことがある。業務で実際に使う場面、たとえば仕様の説明や不具合の報告を面接で再現してもらうと、判断がぶれにくい。面接の設計は海外エンジニアの見極め方で扱っている。
英語化の最小セットは4つの文書である
英語で受け入れる部署に必要な英語化は、全社文書の翻訳ではない。最小限、次の4つを揃える。
文書 | なぜ必要か | 最小の形 |
|---|---|---|
労働条件の明示 | 外国人雇用管理指針が、母国語など本人が理解できる方法での明示に努めることを求めている | 厚生労働省の英語版モデル労働条件通知書を使い、和文と内容を一致させる |
安全衛生教育 | 同指針が、本人が内容を理解できる方法で行うことを求めている | 部署で扱う設備・化学物質の危険と緊急時対応を英語と図解で |
評価基準 | 同指針が、求められる社員像の明確化と評価の透明性・公正性の確保に努めることを求めている | 評価項目と期待水準の英語版と、面談の実施方法 |
業務手順と引き継ぎ | 口頭の日本語で伝わっていた内容が伝わらない | 担当業務の手順書と、レビュー・報告の書式 |
厚生労働省の外国人雇用管理指針は、外国人労働者が職場に円滑に適応できるよう、社内規程その他の文書の多言語化など、円滑なコミュニケーションの前提となる環境の整備に努めることを求めている。母国語での導入研修の実施など、働きやすい職場環境の整備も挙げられている。全文書を翻訳する必要はないが、上の4つが日本語のみの状態で英語人材を受け入れることは避けたい。
就業規則の全文翻訳は負担が大きい。最初は、労働時間、休暇、服務規律、懲戒など、本人が知らないと不利益を受ける項目の要点を英語でまとめ、原文は日本語であることを明記する形から始める方法がある。
安全教育は、英語だけで完結させない
安全教育は英語の資料を作れば終わりではない。職場で実際に使われる日本語の合図と指示を理解できるようにするところまでが必要である。
外国人雇用管理指針は、安全衛生教育を母国語や視聴覚教材を用いるなど本人が理解できる方法で行うこと、使用させる機械や原材料の危険性と取扱方法が確実に理解されるよう留意することを求めている。あわせて、労働災害防止のための指示等を理解できるよう、必要な日本語と基本的な合図等を習得させるよう努めること、事業場内の標識や掲示を図解などで理解できるようにするよう努めることも挙げている。
英語で受け入れる部署でも、同じ建物で働く他部署の人は日本語で話す。避難の指示、ガス漏れの警報、立入禁止の表示は日本語で出される。部署内の業務を英語で回すことと、職場の安全を英語だけで守ることは別の話である。緊急時に使われる日本語の語句と合図を一覧にし、着任時の教育に含めておく。
会議と評価の運用を決める
英語で受け入れる部署が機能するかは、会議と評価の運用でほぼ決まる。文書を英語化しても、会議と評価が日本語のままなら、英語人材は業務の判断と自分の処遇から外される。
会議については、言語のルールを決める。英語人材が出席する会議は英語で行うのか、日本語で行い要点を英語で共有するのか。どちらでもよいが、決めておかないと、日本語で議論が進み、決定だけが後から伝わる状態になる。議事録を英語で残す、決定事項を英語で書き出す、といった最低限の運用から始めるとよい。
評価については、評価項目と期待水準を英語で示し、評価面談を英語で行える評価者を置く。外国人雇用管理指針も、職場で求められる資質や能力などの社員像の明確化と、評価・賃金決定・配置などの人事管理の運用の透明性・公正性の確保に努めることを求めている。評価の根拠が本人に伝わらないことは、早期離職の大きな原因になる。受け入れ後の定着は外国人エンジニアの定着と離職防止で詳しく扱っている。
2026年の技人国改正と英語での受け入れの関係
2026年4月15日の技術・人文知識・国際業務の運用改正は、英語での受け入れ方針を妨げるものではない。日本語能力の立証資料が必要になるのは、所属機関がカテゴリー3または4に該当し、かつ本人が主に言語能力を用いて対人業務に従事する場合に限られる。
設計・解析・シミュレーションといった技術職は、通常この対人業務には当たらない。英語で受け入れる部署の業務を技術職の中核で構成していれば、日本語要件は発動しない。
注意が要るのは、部署設計の段階で英語人材に顧客対応や社内外の調整を主たる業務として持たせる場合である。職務内容書に「顧客対応」「顧客説明」を中心に書くと、対人業務寄りに読まれる余地が生じる。英語で行う業務を行単位で書き、技術的な業務が主であることを実態と一致させておく。カテゴリー判定や追加書類を含む改正の全体像は技人国の2026年4月改正で整理している。
立ち上げの順序
英語で受け入れる部署は、求人を出す前に準備を始める。採用が決まってから文書を整えるのでは、着任に間に合わない。
時期 | やること | 担当 |
|---|---|---|
求人の3か月前 | 英語で回る業務を行単位で切り出し、受け入れ部署を決める | 経営・技術部門長 |
求人の2か月前 | 会議・文書・報告の言語ルールを決める。英語で教えられる担当者を決める | 受け入れ部署 |
求人の1か月前 | 労働条件、安全教育、評価基準、業務手順の英語版を用意する | 人事・安全衛生 |
求人公開時 | 英語で行う業務と日本語が必要な場面を求人票に書き分ける | 人事 |
面接 | 業務で使う英語の場面を再現して確認する | 面接官 |
着任後3か月 | 会議と評価の運用を点検し、日本語に戻っている部分を直す | 受け入れ部署・人事 |
最初から直接雇用で部署を立ち上げるのが重い場合は、派遣で少人数から始める方法もある。派遣には、契約の更新ごとに体制を見直せる変動費化と、自社の正社員採用の基準を満たさなくても受け入れられるという2つの価値がある。英語で回る部署の運用を小さく試し、機能した段階で人数を増やす使い方ができる。
よくある質問
Q. 日本語ができない外国人エンジニアを受け入れられる部署はどこですか。
業務の中核が成果物で評価でき、やり取りの相手が限られる部署です。回路設計・検証、TCADなどのシミュレーション、データ解析や歩留まり解析は英語で回りやすい業務です。一方、ファブの装置保全やプロセスの現場、安全管理、国内顧客への技術営業は日本語での即時の連携が多く、英語だけでは回りにくくなります。部署単位で業務を切り出して判断してください。
Q. 求人票を英語可にすれば、英語人材を受け入れられますか。
求人票の変更だけでは足りません。弊社の派遣提案でも、英語可とされた部署で「英語でのコミュニケーションが難しい」と見送られた例や、選考途中で日本語必須に変わった求人がありました。受け入れる部署の会議・文書・連絡の言語を先に決め、面接官と人事で必要な英語の場面と水準を合意しておく必要があります。英語可の判断は、実際に受け入れる現場が持つべきものです。
Q. 英語化はどこまで必要ですか。
全社文書の翻訳は不要です。最小限、労働条件の明示、安全衛生教育、評価基準、業務手順の4つを英語で用意します。厚生労働省の外国人雇用管理指針は、本人が理解できる方法での労働条件の明示や安全衛生教育、社内規程などの文書の多言語化、評価の透明性の確保に努めることを求めています。労働条件通知書には厚生労働省の英語版モデルが使えます。
Q. 安全教育は英語の資料だけで足りますか。
英語の資料だけでは足りません。外国人雇用管理指針は、本人が理解できる方法での安全衛生教育に加え、労働災害防止のための指示を理解できるよう必要な日本語と基本的な合図を習得させるよう努めることを求めています。英語で業務を回す部署でも、避難指示や警報は日本語で出されます。緊急時の日本語の語句と合図を一覧にし、着任時の教育に含めてください。
Q. 2026年の技人国改正で、英語人材の受け入れは難しくなりましたか。
技術職の受け入れについては、大きくは変わっていません。日本語能力の立証資料が必要になるのは、カテゴリー3または4の企業が、主に言語能力を用いる対人業務の人を採る場合に限られます。設計や解析などの技術職は通常これに当たりません。ただし職務内容書で顧客対応を中心に書くと対人業務寄りに読まれる余地があるため、技術的な業務が主であることを実態どおりに書くことが重要です。
Q. 英語で受け入れた人に、日本語を学ばせる必要はありますか。
業務上は必須でなくても、段階的に学ぶ機会を設けるのが望ましいといえます。安全上必要な日本語と合図は着任時に教える必要があり、職場の雑談や他部署との連携でも日本語は役に立ちます。ただし日本語の習得を業務遂行の前提にすると、英語で受け入れた意味が薄れます。業務は英語で回し、日本語は定着のための支援として位置づけるのが現実的です。
Q. 英語で受け入れる部署は、何人から始めるのがよいですか。
一人だけの受け入れは孤立しやすいため、可能であれば複数名か、英語で業務を教えられる担当者と組み合わせて始めるのが望ましいです。直接雇用で一度に人数を揃えるのが重い場合は、派遣で少人数から始め、会議や評価の運用が機能するかを確かめてから人数を増やす方法もあります。着任後3か月で運用を点検し、日本語に戻っている部分を直してください。
まとめ
英語での受け入れは部署単位で決める。英語で回る業務が部署の中核を占めるかが判断基準である。
設計・検証・シミュレーション・データ解析は英語で回りやすい。現場の保全・安全・日本語での顧客対応は回りにくい。
英語可でも見送りは起きる。受け入れる現場と、必要な英語の場面と水準を合意してから募集する。
英語化の最小セットは労働条件、安全衛生教育、評価基準、業務手順の4つである。安全教育では日本語の合図まで教える。
会議と評価の言語ルールを決めなければ、英語人材は判断と処遇から外される。
2026年の技人国改正で日本語の立証が必要なのは、カテゴリー3・4の企業が対人業務の人を採る場合に限られる。職務内容書は技術業務を中心に実態どおり書く。
淡路グローバルゲートウェイ(AGG)では、英語で受け入れる部署の業務の切り出しから、外国人エンジニアの派遣・紹介、受け入れ後の定着までをご支援しております。部署単位で小さく始めるご相談も承っております。無料相談フォームからお気軽にお問い合わせください。
監修者
Naoya Mitani /淡路グローバルゲートウェイ(AGG) 事業統括責任者
インドITエンジニアの可能性に着目し、AGGのIT人財部を設立しました。事業統括責任者として、エンジニア派遣事業の戦略立案と実行を担っています。


