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2026.9.27

半導体の求人票はどう書くか──必須と尚可の切り分け・業務内容の行単位化・英文JDの注意【2026年版】

採用戦略

求人票を出して1か月。紹介会社から届いた書類は20件を超えたが、技術部門の書類選考を通ったのは2件だけだった。見送り理由を集めると「量産経験がない」「業務が合わない」「着任が遅い」が並ぶ。人事部長が求人票を読み返すと、そのどれも書かれていない。書いてあるのは「半導体プロセスの経験3年以上」「日本語ができれば尚可」の2行である。

問題は、見送りの基準が技術部門の頭の中にあり、求人票に出ていないことにある。基準が書かれていなければ、応募者も紹介会社も「近い人」を出すしかない。英語人材や海外在住者が相手なら、なおさら行間は伝わらない。選考の手間が増え、見送られた候補者には理由が伝わらず、同じ見送りが繰り返される。

この記事では、外国人・英語人材にも通じる半導体の求人票(JD)の書き方を整理します。職業安定法で明示が必要な事項と2024年4月の追加項目、必須と尚可の切り分け、「量産経験」「日本語」「開始時期」の書き方、業務内容を行単位で書く方法、英文JDの注意点、職種別のテンプレートまでを扱います。

この記事の要点

  • 求人票の役割は応募を増やすことではなく、応募段階で合わない人を減らすことである。見送りの基準はすべて求人票に出す。

  • 職業安定法では、2024年4月から業務と就業場所の「変更の範囲」、有期契約の更新基準が明示事項に加わった。

  • 必須要件は「満たさなければ必ず見送る項目」だけに絞る。それ以外は尚可に置き、中核業務を具体的に書く。

  • 「量産経験」「日本語」「開始時期」の3つは、曖昧に書くと最も多くの見送りを生む。言い換えの余地がない書き方にする。

  • 業務内容は1行1業務で書く。候補者の経歴と1対1で照合でき、見送り理由を具体的に返せるようになる。

求人票は、応募段階で合わない人を減らすための文書である

求人票の目的は、応募数を増やすことではない。選考で見送る人を、応募の前に減らすことである。

弊社が半導体メーカーの量産立ち上げ案件に行った派遣提案では、見送り理由は大きく3つに集約された。量産ファブでの実務経験がないこと、職種名が近くても業務がずれていること、着任が遅いことである。いずれも、求人票に書かれていれば提案の段階で避けられた。

弊社は見送り理由を受け取るたびに、候補者向けの求人ページへ反映している。たとえば「量産装置での経験がない」で見送られた求人は、必須要件を「量産ファブでの実務経験」に書き換え、研究機関・大学のクリーンルームのみの経験は対象外と明記した。「開始日が先付」で見送られた求人には「早期に就業開始できる方」「日本在住で就労可能な方を優先」と加えた。求人票は一度書いて終わりではなく、見送り理由で更新する文書として扱う。

法律上の明示事項を先に押さえる

求人票には、職業安定法に基づいて明示しなければならない労働条件がある。まず法定の項目を埋め、その上に職務の情報を載せる順番で作る。

厚生労働省の資料によると、2024年4月1日施行の改正職業安定法施行規則で、募集や職業紹介事業者への求人申込みの際に明示すべき事項として、従事すべき業務の変更の範囲、就業場所の変更の範囲、有期労働契約を更新する場合の基準(通算契約期間または更新回数の上限を含む)の3つが加わった。「変更の範囲」は雇入れ直後だけでなく、将来の配置転換などの見込みも含めた、労働契約の期間中の範囲を指す。

明示事項

半導体の求人での書き方の例

業務内容(雇入れ直後/変更の範囲)

雇入れ直後:ドライエッチング工程のプロセスエンジニア。変更の範囲:前工程のプロセス技術業務

就業場所(雇入れ直後/変更の範囲)

雇入れ直後:〇〇工場。変更の範囲:国内の自社工場

契約期間と更新の基準

期間の定めあり。更新は業務量と勤務成績により判断。通算契約期間の上限の有無

試用期間

有無と期間、期間中の条件

就業時間・休憩・休日

シフト勤務の有無、夜勤の頻度、休日の決まり方

時間外労働

有無と月平均の目安

賃金

月給・年俸の額、固定残業代を含む場合はその内訳

加入保険、受動喫煙防止措置

雇用保険・労災保険・厚生年金・健康保険、屋内禁煙など

募集者の氏名または名称

会社名。派遣労働者として雇用する場合はその旨

スペースが足りない求人広告では、一部を後から示すこともできる。ただし原則として、面接など求職者と最初に接触する時点までに全ての労働条件を明示する必要がある。また2022年10月の改正で、求人情報について虚偽の表示や誤解を生じさせる表示をしてはならず、正確かつ最新の内容に保つことが求められている。英文と和文の求人票で条件が食い違う状態は、この観点からも避けたい。

必須と尚可は「それだけで見送るか」で分ける

必須要件は、満たしていなければそれだけで見送る項目に限る。「あれば嬉しい」項目を必須に並べると、応募者は自分で判断できず、選考側は結局その項目で落とさない。

項目

必須に置く条件

尚可に置く条件

量産ファブでの実務経験

着任直後から量産装置を担当させる

解析・評価など、量産の運用を直接担わない業務が中核

担当工程・装置の経験

着任直後から特定の工程・装置を任せる

隣接工程から育成する前提がある

日本語能力

安全手順や現場連絡を日本語で担う

英語で回る業務が中核で、日本語は受け入れ後に育てる

学位・専攻

在留資格の要件や業務上の専門性に直結する

実務経験で代替できる

経験年数

独り立ちまでの期間が年数で決まる

経験の中身で判断できる

必須要件の数は3〜5項目が目安になる。10項目を並べた求人票は、実際には多くが尚可である。

年齢で応募を絞ることは、労働施策総合推進法により原則として禁止されている。厚生労働省の資料では、長期勤続によるキャリア形成を図る観点から若年者等を期間の定めのない労働契約で募集する場合などの例外があるが、その場合は「経験者」を条件にすることはできない。例外の要件は細かく定められており、年齢を書く前に該当するかを個別に確認する必要がある。また外国人雇用管理指針は、求人申込みに当たって国籍による条件を付けるなど差別的取扱いをしないよう留意することを求めている。

「量産経験」「日本語」「開始時期」を曖昧にしない

見送りを最も多く生むのは、この3つの書き方である。どれも社内では意味が通じているため、曖昧なまま求人票に載りやすい。

項目

曖昧な書き方

明確な書き方

量産経験

半導体プロセスの経験3年以上

量産ファブでのドライエッチング装置の実務経験3年以上(研究機関・大学のクリーンルームのみの経験は対象外)

日本語

日本語ができれば尚可

業務は英語で可。安全教育と現場の緊急連絡は日本語で行うため、日常会話レベルの日本語が必要

開始時期

入社時期は相談

内定から3か月以内に就業開始できる方。日本在住で就労可能な在留資格をお持ちの方を優先

量産経験について、弊社の提案では研究機関・大学のクリーンルーム中心の経歴が「量産装置での経験がない」「量産現場の経験が確認できない」で見送られた。分野は一致していた。求人票に「量産ファブでの」と一語あれば、この提案は出ていない。

日本語については、英語可とされた部署でも「英語でのコミュニケーションが難しい」で見送られた例や、選考途中で日本語必須に変わった求人があった。英語可と書くなら、どの業務を英語で行い、どこに日本語が要るかまで書く。日本語レベルの決め方は外国人エンジニアに必要な日本語レベルで整理している。

開始時期については、海外在住でビザ取得に約6か月かかる候補者の提案が「開始日が先付」で見送られ、「3か月以上は待てない」と明言された求人もあった。何か月以内の着任が必要かを数字で書けば、紹介会社は候補者の在留資格と居住地から着任時期を逆算できる。国内在住者の在留資格の引き継ぎはすでに日本にいる外国人エンジニアの中途採用で扱っている。

業務内容は1行1業務で書く

業務内容は、1行に1つの業務を書く。候補者の経歴と1対1で照合できる形にするためである。

選考の現場では、求人票の業務内容の各行に経歴書の該当箇所を当て、直接当たる行が過半かどうかで判断すると精度が上がる。弊社の提案でも、検査職に解析寄りの経歴を出して「解析部門寄り」と見送られた例、WETにCMP寄りの経歴を出してミスマッチとされた例がある。業務内容が「検査業務全般」と1行で書かれていると、この照合ができない。

書き方の原則は3つある。1行に1業務、装置名・工程名・管理指標まで書く、中核の業務を上から3行に置く。たとえば「ドライエッチング工程の条件出しと改善」ではなく、「量産エッチング装置のレシピ管理と変更管理」「エッチング形状・選択比のSPC監視と異常時の原因切り分け」「装置起因の欠陥の解析と再発防止策の立案」と分ける。

在留資格の審査でも業務内容の書き方は効く。技術・人文知識・国際業務では、装置のオペレーションや目視検査を主たる業務として書くと、専門的な業務として読まれにくい。解析・条件出し・改善提案という専門性の中身を行単位で書くことは、審査上も有利に働く。詳しくは技人国の2026年4月改正を参照してほしい。

職種別テンプレート例

以下は、半導体の主要職種について、業務内容の行と要件の置き方を示したテンプレート例である。自社の工程・装置に合わせて書き換えて使う。

職種

業務内容(中核3行の例)

必須の例

尚可の例

日本語・開始時期の例

プロセスエンジニア(エッチング)

量産装置のレシピ管理と変更管理/形状・選択比のSPC監視と原因切り分け/装置起因欠陥の再発防止

量産ファブでのエッチング実務3年以上

同種装置メーカーの機種経験、DOE

安全教育と現場連絡は日本語。内定から3か月以内に就業開始

検査・計測エンジニア

SEM・EDXによる欠陥解析/測定データの解析と報告/検査条件の最適化

SEM・EDXの操作と欠陥解析の実務

量産ファブでの経験、統計解析ツール

報告は英語可。社内の打合せは日本語が中心

装置保全エンジニア

定期保全と部品管理/アラーム対応と故障原因の特定/保全手順書の作成と改善

生産設備の故障原因特定と修理の実務

真空・プラズマ装置の経験、低圧電気の特別教育修了

夜勤を含むシフト勤務。異常時連絡は日本語

デバイス・TCADエンジニア

TCADによるデバイス特性のシミュレーション/実測データとの比較とモデル調整/設計部門への報告

TCADツールを用いた実務または研究3年以上

量産プロセスとの連携経験

業務は英語可。着任時期は相談可

回路設計エンジニア

RTL設計と論理合成/UVMによる検証環境の構築/タイミング解析と修正

SystemVerilogでの設計・検証の実務

特定プロセスノードの経験

業務は英語可。リモートでの立ち上げ期間の有無を明記

表のとおり、同じ半導体の求人でも、量産経験や日本語を必須に置くべき職種と、置く必要のない職種がある。職種の違いは半導体エンジニアの職種一覧で整理している。

英文JDで注意すること

英文JDは和文の直訳では機能しない。和文では行間で伝わっていた前提が、英語の読み手には伝わらないためである。

項目

書き方

避けたい書き方

必須と尚可

Required と Preferred に分け、Required は3〜5項目に絞る

全項目を Requirements に並べる

量産経験

hands-on experience in a high-volume manufacturing fab と書き、research-only は対象外と明記

semiconductor process experience だけで済ませる

日本語

業務の言語と、日本語が必要な場面をそれぞれ書く。JLPTの級が必要なら級を書く

Japanese is a plus だけで済ませる

開始時期

able to start within 3 months of offer のように期限を書く。日本在住者を優先するならその旨

flexible start date

在留資格・渡航

在留資格の支援の有無、渡航費・住居の負担の有無

記載しない

海外在住者を募集する場合、厚生労働省の外国人雇用管理指針は、渡航や帰国に要する旅費の負担の有無や負担割合、住居の確保などの募集条件の詳細をあらかじめ明確にするよう求めている。入国後に条件の理解がずれ、トラブルになることを防ぐためである。同指針は、労働条件を母国語や平易な日本語など本人が理解できる方法で明示するよう努めることも求めている。

契約の段階では、厚生労働省が英語などの外国人労働者向けモデル労働条件通知書を公開している。英文JDと労働条件通知書の条件を一致させておけば、選考から入社までの説明がぶれない。

公開後は、見送り理由で求人票を更新する

求人票の精度は、公開した後の運用で決まる。見送り理由を受け取ったら、その理由が求人票に書かれていたかを確認し、書かれていなければ追記する。

更新するときは3つの点を確認したい。1つ目は、追記した要件が、実際にその理由で見送られた求人に限られていることである。推測で他の求人にまで広げると、合う人まで応募を控える。2つ目は、同じページのFAQや募集要項に、新しい要件と矛盾する記述が残っていないことである。「研究経験のみでも応募可」というFAQが残っていれば、必須要件を書き換えた意味がない。3つ目は、掲載時点を示し、変更した内容が読み手に分かるようにしておくことである。

面接の設計も、求人票の業務内容と揃えておく。業務内容の中核3行に対応する質問を用意し、経歴の該当箇所を面接で確かめる。技術面接の組み立ては海外エンジニアの見極め方で扱っている。

よくある質問

Q. 求人票に必ず書かなければならない事項は何ですか。

職業安定法に基づき、業務内容、契約期間、試用期間、就業場所、就業時間、休憩、休日、時間外労働、賃金、加入保険、受動喫煙防止措置、募集者の名称などの明示が必要です。2024年4月からは、業務と就業場所の変更の範囲、有期契約を更新する場合の基準も加わりました。広告のスペースが足りない場合でも、原則として面接など最初に接触する時点までに全ての労働条件を明示する必要があります。

Q. 必須要件はいくつくらいに絞るべきですか。

3〜5項目が目安です。必須要件は、満たしていなければそれだけで見送る項目に限ります。10項目を並べた求人票では、実際には多くの項目で候補者を落としておらず、応募者も紹介会社も自分で判断できなくなります。迷う項目は尚可に置き、その代わりに業務内容の中核を具体的に書くと、応募の質を保ったまま母集団を確保できます。

Q. 「量産経験」はどう書けば誤解されませんか。

「量産ファブでの〇〇装置の実務経験」のように、環境・工程・装置をまとめて書きます。研究機関や大学のクリーンルームのみの経験を対象にしないのであれば、その旨も明記します。弊社の派遣提案では、分野が一致していても研究中心の経歴が「量産装置での経験がない」で見送られました。量産経験を尚可とする場合は、代わりに中核業務を具体的に書くことで、近いだけの応募を減らせます。

Q. 日本語要件は英文JDでどう書けばよいですか。

業務で使う言語と、日本語が必要になる場面を分けて書きます。たとえば、業務は英語で行えるが安全教育と現場の緊急連絡は日本語で行う、という書き方です。JLPTの級が必要なら級を明記します。「Japanese is a plus」だけでは、どの程度の日本語が選考で見られるのかが伝わりません。英語可と書く範囲は、受け入れる部署と合意したうえで決めてください。

Q. 業務内容を細かく書くと、応募が減りませんか。

合わない応募は減りますが、それが目的です。業務内容を1行1業務で書くと、候補者は自分の経歴と照合して応募を判断でき、紹介会社も的確に候補者を選べます。書類選考の通過率が上がり、選考全体の工数はむしろ下がります。見送る場合も、どの業務が経歴に当たらなかったかを具体的に返せるため、次の提案の精度も上がります。

Q. 年齢や国籍を求人票の条件にしてよいですか。

年齢については、労働施策総合推進法により募集・採用で年齢制限を設けることは原則として禁止されています。例外はありますが要件は細かく定められており、たとえば長期勤続を前提に若年者を募集する例外では「経験者」を条件にできません。年齢を書く前に該当性を個別に確認してください。国籍についても、厚生労働省の外国人雇用管理指針が、求人申込みに当たって国籍による条件を付すなど差別的取扱いをしないよう留意することを求めています。在留資格の確認は採用の段階で行います。

Q. 見送り理由は求人票にどう反映すればよいですか。

実際にその理由で見送られた求人に限って、必須要件や歓迎要件を書き換えます。推測で他の求人に広げると、合う人まで応募を控えることになります。書き換えたら、同じページのFAQや募集要項に矛盾する記述が残っていないかを確認します。職業安定法は求人情報を正確かつ最新の内容に保つことを求めており、掲載時点を示して更新内容が分かるようにしておくと確実です。

まとめ

  • 求人票は応募を増やす文書ではなく、合わない応募を減らす文書である。見送りの基準はすべて求人票に出す。

  • 法定の明示事項を先に埋める。2024年4月から業務と就業場所の変更の範囲、有期契約の更新基準が加わった。

  • 必須要件は、それだけで見送る3〜5項目に絞る。迷う項目は尚可に置き、中核業務を具体的に書く。

  • 「量産経験」「日本語」「開始時期」は、環境・場面・期限まで書いて言い換えの余地をなくす。

  • 業務内容は1行1業務で書き、候補者の経歴と1対1で照合できる形にする。在留資格の審査でも効く。

  • 英文JDは直訳しない。Required と Preferred を分け、渡航費・住居・在留資格の支援の有無まで明記する。

淡路グローバルゲートウェイ(AGG)では、半導体分野の外国人エンジニアの派遣と紹介にあわせて、求人票の業務内容の整理や英文JDの作成をご支援しております。見送り理由を求人票へ反映する運用のご相談も承っております。無料相談フォームからお気軽にお問い合わせください。

監修者

Naoya Mitani /淡路グローバルゲートウェイ(AGG) 事業統括責任者

インドITエンジニアの可能性に着目し、AGGのIT人財部を設立しました。事業統括責任者として、エンジニア派遣事業の戦略立案と実行を担っています。

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© 2026 福吉通商株式会社

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