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「日本語ができる外国人技術者」は何人いるのか|アジア6カ国 技術者1,435人 実態調査

2026.09.01

メディア

アジア技術人材研究所 第1回レポート

外国人エンジニアの人材紹介・派遣を行う淡路グローバルゲートウェイ(福吉通商株式会社)は、アジア6カ国の技術者1,435名の公開プロフィールを人手で確認し、「日本語能力が、採用する側からどこまで見えるか」を実測しました。

日本語能力試験(JLPT)の級が公開情報で確認できたのは、1,435名中196名(13.7%)。職種別では、洋上風力・海洋土木の20.2%に対し、電気・空調の施工管理では391名中6名(1.5%)にとどまり、同じ「日本語ができる技術者」でも職種によって13.5倍の開きがありました。

日本企業の求人は「日本語N2以上」「N3以上」を要件に掲げます。しかし採用する側が公開情報からその条件で探したとき、たどり着ける人はほとんどいません。

調査の背景:答えのない問いから始まった

本調査は、ひとつの素朴な問いから始まりました。「日本語ができる外国人技術者は、世界に何人いるのか」

調べた結果、この問いに答えられる公的統計は存在しないことがわかりました。日本語能力試験の公式統計は、国・地域別のデータを「応募者数」と「受験者数」でしか公表しておらず、認定者数(合格者数)の国別内訳も、累計保有者数も公表されていません。2010年からの長期時系列表にも認定者数の欄はありません。

つまり「N3以上の日本語力を持つ人が、どの国に何人いるか」は、公式には誰も把握していません。ましてや、そのうち何人が技術者なのかは、なおさらです。

一方で、需要側の数字ははっきりしています。経済産業省が2026年2月19日に公表した電気工事業の実態調査によれば、人手が「大いに不足」26.1%、「やや不足」44.4%と、約7割の企業が人手不足を訴えています。にもかかわらず、外国人技術者を雇用している企業は3.2%(125社・289名)にとどまり、96.8%にあたる3,724社は1人も雇用していません。

日本電設工業協会(JECA)の調査でも同様です。5年連続で回答した会員190社が2025年度に採用した4,090人のうち、外国人は61人(技術職52人・技能職9人)でした。

「人手が足りない」と「外国人はほぼゼロ」が、同じ業界の中に同居しています。

この差はしばしば「受け入れ体制の問題」として語られます。しかし私たちが紹介・派遣の現場で直面しているのは、もっと手前の問題です。そもそも、条件に合う人を見つけられない。

日本企業が求人票に書く日本語要件を、そのまま検索条件にして候補者を探すと何が起きるのか。それを実測したのが本調査です。

1. 日本語能力は、そもそも「見えていない」

対象とした1,435名のうち、JLPTの級が公開プロフィール上で確認できたのは196名、全体の13.7%でした。

公開プロフィール上の日本語の記載

人数

割合

記述はあるが級の表記なし

754名

52.5%

空欄・記述なし

485名

33.8%

JLPTの級が確認できた

196名

13.7%

重要なのは、残る86.3%は「日本語ができない」のではなく「わからない」ということです。

その傍証があります。今回集計した全2,816件のうち、N4・N5と記載した人は1人もいませんでした。級を書いている人は、全員がN3以上です。つまり日本語能力は「ある程度以上できる人だけが書く」項目であり、公開プロフィールは日本語能力の分布を映していません。

採用する側から見れば、これは厄介な性質です。「N3以上」で絞り込んだつもりが、実際には「N3以上を持っていて、かつそれを書いている人」だけを見ていることになります。

2. 職種によって、13.5倍の差がつく

職種領域

対象人数

N3以上を確認できた人数

割合

ROV・海洋

184名

40名

21.7%

洋上風力・海洋土木

946名

191名

20.2%

施工管理(電気・空調)

391名

6名

1.5%

職種別に見ると差は鮮明です。その差は13.5倍でした。

これは日本語能力そのものの差というより、その職種が日本市場をどれだけ意識しているかの差だと考えられます。洋上風力やROVは日系企業が関わる海外プロジェクトが多く、日本での就労が現実的な選択肢として意識されています。対して電気・空調の施工管理は現地市場で完結しており、日本語を書く動機がありません。

同じ「アジアの技術者」でも、日本に向いている職種と、そうでない職種があります。そして偶然ですが、需要側のJECA調査で外国人が新卒採用に占める割合も1.5%でした。別々の調査による偶然の一致ではあるものの、電気設備という同じ領域で、需要側と供給側の両方に同じ薄さが表れています。

3. 国籍による差は、職種ほど大きくない

国籍

対象人数

N3以上を確認できた人数

割合

フィリピン

267名

57名

21.3%

ベトナム

130名

26名

20.0%

マレーシア

131名

25名

19.1%

インド

152名

18名

11.8%

インドネシア

469名

51名

10.9%

ミャンマー

280名

26名

9.3%

最も高いフィリピンでも21.3%であり、どの国でも8割前後は日本語能力が確認できません。注目すべきは、国籍による差(最大2.3倍)が、職種による差(13.5倍)よりはるかに小さいことです。

「どの国から採るか」よりも、「どの職種を、どういう条件で探すか」のほうが、到達できる人数を大きく左右します。

4. 日本語を学ぶ人は、確かにいる

ここで供給側の公的統計を見ると、様相が変わります。

国・地域

JLPT N3 受験者数(2025年12月実施回)

ミャンマー

26,998人

ベトナム

8,848人

インドネシア

6,139人

インド

2,823人

フィリピン

873人

マレーシア

538人

国際交流基金の調査では、海外の日本語学習者数は4,000,750人と、調査開始以来はじめて400万人を超えました。日本語を学ぶ人は、増えています。

それでも私たちの調査では、技術者の86.3%について日本語能力が確認できませんでした。ミャンマーは日本語学習者数で世界9位、N3受験者数では今回の6カ国中で突出しているにもかかわらず、技術者プロフィールでN3以上を確認できた割合は9.3%と6カ国中最下位です。

日本語人材はいる。技術者もいる。その2つが結びついた情報が、採用市場に出てきていないのです。

5. 探しても見つからない:180クエリで11名

供給の薄さが最も極端に出たのは、半導体分野でした。

「日本在住・インド国籍・半導体/MLCCのバリューチェーンに従事」という条件で候補者を探した調査では、約180回の検索を実行して、実在を確認できたのは11名。目標としていた200名に対し、到達率は5.5%です。207名は「実在するプロフィールだが、日本在住または半導体関連職であることの裏付けが取れない」まま残りました。

海洋分野でも同様です。ROV(遠隔操作無人潜水機)の実務経験者184名を精査したところ、ROVの実務経験とJLPTの級を両方確認できた人は0名でした。ROVパイロットはJLPTを取得・記載する職種ではないためです。

これらは「そういう人材が存在しない」という意味ではありません。公開情報という手段では到達できない、という意味です。

考察

今回の調査で最も明確だったのは、「日本語ができる外国人技術者が少ない」のではなく、「日本語ができるかどうかが見えない」ということです。

級を書いている人は全員N3以上でした。書いていない86.3%の中には、N3相当の力を持ちながら記載していない人が相当数含まれているはずです。にもかかわらず、公開情報で「N3以上」を条件に検索すると、その人たちには一度も出会えません。

そして職種による13.5倍の差は、日本語能力の差ではなく、日本市場への露出の差です。日本を意識していない職種ほど、日本語を書きません。皮肉なことに、日本の人手不足が最も深刻な職種ほど、その傾向が強く出ています。

実務上の結論は3つです。

第一に、日本語要件で絞る前に、絞った後に何人残るかを確認すること。 電気・空調の施工管理で「N3以上」を条件にすると、母集団は391名から6名になります。要件が正しくても、そこに人がいなければ採用は成立しません。要件を変えるか、探し方を変えるか、育てるかの三択になります。

第二に、日本語能力を「探す条件」ではなく「育てる対象」として設計すること。 ROV分野で実務経験と日本語を両方持つ人は0名でした。両方を満たす人を探し続けるより、実務経験のある人に日本語を教えるほうが、到達可能性は高くなります。日本語学習者は世界で400万人を超えており、母集団そのものは細っていません。

第三に、公開情報で見つからないことと、いないことは違うと知ること。 半導体分野で180クエリを回して11名しか確認できなかったのは、供給がないからではなく、この層が公開の場に姿を現さないからです。到達するには、大学や現地の技術者コミュニティといった別の経路が要ります。

外国人労働者数は2025年10月末時点で2,571,037人と過去最高を更新し、専門的・技術的分野の在留資格は前年比20.4%増、「技術・人文知識・国際業務」は468,068人まで増えました。量は増えています。

足りていないのは人ではなく、その人たちに到達するための経路です。

この数字の読み方について

本調査が測定したのは「公開情報から日本語能力を確認できるか」であり、対象者の実際の日本語能力ではありません。級を記載していない86.3%の日本語能力は、本調査では不明です。

したがって本レポートの数字は、「アジアの技術者の◯%しか日本語ができない」という意味には使えません。読み取れるのは、採用する側が公開情報だけを頼りに探した場合の到達可能性です。

また対象者は、当社が特定の職種・プロジェクト要件で収集した候補者プールであり、各国の技術者全体を代表する無作為抽出標本ではありません。この点をご了解のうえ引用ください。

引用した公的統計の出典

数値

出典

公表日

電気工事業の人手不足(大いに不足26.1%・やや不足44.4%)、外国人技術者の雇用3.2%(125社・289名/回答3,849社)

経済産業省 電力安全課「電気保安人材を巡る現状及び今後の課題について」(第16回 産業構造審議会 電気保安制度ワーキンググループ 資料1-2)

2026年2月19日

JECA会員190社の採用4,090人中 外国人61人

日本電設工業協会「会員企業の『採用状況』並びに『雇用実態等』に関するアンケート調査結果【令和3年度〜令和7年度の5年統計】」(正会員291社に依頼・232社回答、うち5年連続回答の190社で集計)

2025年12月11日

外国人労働者2,571,037人(前年比+11.7%)、専門的・技術的分野865,588人(+20.4%)、技術・人文知識・国際業務468,068人

厚生労働省「外国人雇用状況の届出状況」(令和7年10月末現在)

2026年1月30日

JLPT N3受験者数(国・地域別、2025年第2回)

日本語能力試験公式サイト「2025年第2回 実施国・地域別応募者数・受験者数」

─

海外の日本語学習者4,000,750人

国際交流基金「2024年度 海外日本語教育機関調査」(依頼29,148機関・有効回答24,717機関)

2025年9月3日(2026年3月13日に一部数値訂正)

経済産業省資料について、「約7割が人手不足」は同資料の見出し文の表現であり、26.1%と44.4%の合計です。資料に「70.5%」という数値の印字はありません。JECAの外国人61人は技術職・技能職の内訳注記の合計であり、事務・営業他602人には外国人の内訳がありません。分母を技術職・技能職の3,488人とした場合は1.75%となります。JLPTの国・地域別数値は受験地ベースであり受験者の国籍ではなく、また12月実施回のみの数値で年間合計ではありません。

調査概要

項目

内容

調査名

アジア技術者の日本語能力可視性に関する実態調査(第1回)

調査主体

福吉通商株式会社 淡路グローバルゲートウェイ事業部(アジア技術人材研究所)

調査方法

LinkedIn等の公開プロフィールおよび公開情報を人手で確認・記録。ブラウザによる自動収集は行っていない

調査対象

インドネシア・フィリピン・ミャンマー・ベトナム・マレーシア・インドほかの技術者。職種領域は「洋上風力・海洋土木」「電気・空調の施工管理」「ROV・海洋」の3領域

有効件数

延べ2,816件、名寄せ後1,435名(日本語能力の記録欄を持つ3職種領域の和集合)

集計時点

2026年8月時点で保有するデータを集計

集計方法

氏名を正規化してハッシュ照合し重複を排除。日本語能力は「N1〜N5」「◯級」の表記を正規表現で判定。複数領域に登場する人物は最上位のレベルを採用

注記

構成比は小数第二位を四捨五入しているため、合計が100.0%にならない場合があります。個人が特定される恐れがあるため、該当数5未満のセルは「n<5」と表記しています

引用・転載について

本調査結果を引用・転載される際は、出典として「淡路グローバルゲートウェイ調べ」と明記のうえ、本ページへのリンク設置をお願いいたします。

図版は本ページからの転載に限り、改変しない形でご利用いただけます。数値の詳細な内訳や、追加の切り口での集計をご希望の報道関係者の方は、お問い合わせフォームよりご連絡ください。可能な範囲でお出しします。

私たちは日々、日本企業から「日本語ができる外国人技術者を紹介してほしい」という依頼を受けています。その要件で探し始めて、母集団が数十分の一に縮むのを何度も見てきました。今回それを数字にしてみて、思っていたより事態は単純ではないとわかりました。いないのではなく、見えていないのです。

日本語を学ぶ人は世界で400万人を超え、過去最多を更新しています。技術者も増えています。それでも両方を備えた人に公開情報でたどり着けないのは、その2つが結びついた情報が、まだ採用市場に出てきていないからです。

私たちはこの調査を毎年続けます。要件を緩めるべきだと主張したいのではありません。要件を決める前に、その要件で何人残るかを知ったうえで決められるようにしたい。そのための数字を出し続けます。

── 福吉通商株式会社 淡路グローバルゲートウェイ事業部 三谷 直矢

外国人エンジニアの採用・受け入れについてのご相談は、無料相談フォームよりお気軽にお問い合わせください。

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